ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第75回) ゴルフでできる健康維持・増進の4要素(後編)

スポーツ

公開日:2021.10.26

 長引く新型コロナウイルスの感染拡大問題で、健康であることの大切さを再認識する方も多いと思います。そんな今だからこそ理解していただきたい、ゴルフにおける健康維持・増進のポイントを前回に続きお伝えします。今回の後編では、ゴルフの健康効果を台無しにする“もったいないゴルフ”や、ストレス解消のはずがかえってストレスをため込んでしまう“イヤイヤゴルフ”の対処法をお伝えします。

 おさらいすると、前編では「健康の4要素」についてお伝えしました。健康は、一般的に「運動」「休養」「栄養」の3要素が必要といわれていますが、ストレス社会の現代、特に昨今のコロナ禍では、メンタル的に良いものを取り入れる「吸気」と不要なものを体外に排出する「排気」、この「吸気と排気」を加えた4つの要素のバランスを整えることが大切だと、私のゴルフ教室では説明しています。そして、ゴルフにはこの4つの要素がすべて網羅されていますから、ゴルフは健康維持に非常に効果的なスポーツだといえると思います。ただし、このバランスを崩す要因になる“もったいないゴルフ”や“イヤイヤゴルフ”になっているケースも見られます。以下を参考に、そうしたゴルフはぜひ避けるよう心掛けてください。

文明の利器に頼る“もったいないゴルフ”とは?

 最近のゴルフには、健康の維持・増進上“もったいない”シーンが見られます。その一つが「カートに乗る」ことです。ウオーキングは、有酸素運動として健康の維持・増進にとても効果的。カートに乗らなければアベレージゴルファーの場合、1ラウンドで約10km、約1万3000歩は歩くといわれています。

 厚生労働省が健康維持・増進のために推奨している1日の歩数は、男性で9200歩、女性で8300歩ですから、できるだけカートに頼らず歩いてラウンドしましょう。テレビで見るプロゴルファーのように、胸を張り、少し大股で元気よく歩けば背中やお尻、もも裏の筋肉強化ができます。歩くことの健康効果やスコアメークにつながる効能は、過去記事の第16回、第62回にあります。気になる方は読み返してみてください。ただし、無理は禁物。疲れを感じたり、日差しが強かったりする日は、できるだけカートを頼ってください。また、歩いてラウンドする場合、小まめに給水するなどして体力を温存しましょう。

*第16回「スコアも翌日の仕事も絶好調にするゴルフ〜歩行編〜
*第62回「健康づくりに役立つゴルフの5大要素

 「距離測定器に頼り過ぎる」ことも、健康の維持・増進上“もったいない”シーンといえます。最近はレーザーやGPSを活用した高性能な距離測定器が販売されていますから、いくつかお持ちの方もおられるでしょう。ピンまでの正確な距離を把握することは、スコアメーク上とても重要ですから、距離測定器を使いたい気持ちも分かります。一方で健康面から考えると、認知症予防に効果的といわれることもあるゴルフですので、健康志向のゴルファーは「脳の活性化」のためにも、自分の目と脳を使ってピンまでの距離を考えるクセを身に付けてほしいと私は思っています。

 ゴルフは状況を把握し、戦略を練り、リスクヘッジしながら頭を使うスポーツです。このエッセーが「耳と耳のあいだ」というネーミングでもあるゆえんです。距離を算出したり、スコアを数えたりといった計算も行いながらの運動を「デュアルタスク運動(二重課題運動)」といい、これが認知症予防に効果的なのです。距離測定器は補助的に使い、できるだけ自身の脳をフル活用し、脳を活性化しましょう。前述の過去記事、第62回でもゴルフの認知症予防効果について述べています。興味のある方はぜひお読みください。

ゴルフは積極的休養の一つ

 ゴルフは「運動」でありながら、同時に「休養」としての一面もあります。一般社団法人日本リカバリー協会では、「休養」を(1)生理的休養(2)心理的休養(3)社会的休養の3つに分類しています。「生理的休養」を、さらに「休息タイプ」「運動タイプ」「栄養タイプ」の3タイプに分けています。そして運動タイプを、「活動により老廃物の除去や新陳代謝の向上を促すことで心身の活力を養う」と説明し、これを「積極的休養」としています。つまり、ゴルフのような適度な運動は、広い意味で「休養」の一つといえるわけです。

 ゴルフを「積極的休養」とするなら、ゴルフでストレスをためてはいけません。ストレスは精神的な緊張状態で、休養とは真逆、「吸気と排気」がうまくいっていない状態だといえます。しかしながら、ゴルファーを観察しているとゴルフをプレーすることでストレスを抱えてしまっている人がとても多いように感じます。

例えば以下のようなゴルファーが目につきます。
・あれこれフォームのチェックばかりしていて、プレーを楽しんでいない人
・ミスするたびに落ち込んだり悩んだりしている人
・他人の目や体裁ばかりを気にしている人、などです。

 こうした状態を解消するには、ゴルフを心から楽しむことが大切です。気分転換のために練習場に行ったのに、うまくいかないと悩むのは本末転倒。うまくいかないのは準備運動不足や、仕事による疲労が原因かもしれません。そういう気付きが得られたら、ショットの良しあしは気にせず、伸び伸びスイングしてボールを打つことを楽しみましょう。その結果、「積極的休養」が成立すると考えてください。

イヤイヤゴルフの対処法

 得意先との接待ゴルフや上司との付き合いゴルフといった、心から楽しめないゴルフをしなければならないことも時にはあるかもしれません。こうした、かえってストレスをため込んでしまう可能性がある“イヤイヤゴルフ”にはどう対処すればよいでしょうか。

 “イヤイヤ”が募るとき、「なぜ“イヤイヤ”なのか?」と自問自答してみましょう。「オイ、お前はなぜ今週末のゴルフが“イヤイヤ”なのか?」と。「上司とのゴルフは気を遣うし、楽しくないから……」と自分の声。さらに問い続けます。「上司とのゴルフはなぜ気を遣うのか?なぜ楽しくないのか?一緒にプレーする上司はお前に何か危害でも加えるのか?イジメか?それともパワハラでも受けているのか?」……ここまで自問自答するとほとんどの人が気付きます。気を遣い、楽しめないのは自分自身の心の持ちようだということに。“イヤイヤ”や“イライラ”、“カリカリ”といったマイナス感情の主な要因は「思い込み」ではないでしょうか。この「思い込み」は次のように分解できます。

思い込み=事実+意味づけ+感情

 得意先や上司とのゴルフという“事実”に対して、「気を遣う」「楽しくない」といった“意味づけ”をし、その結果「イヤだな」といった“感情”が起こってしまいます。ここで注目してほしいのが“意味づけ”です。人は物事に対して不要な意味づけをし、マイナス感情を引き起こしています。しかし、自問自答することで、その不要な意味づけに気付くことができます。それに気付けば、立ち込めていた霧が晴れるかのごとく、“イヤイヤ”は解消されるでしょう。そうやって“イヤイヤ”を抜け出して、得意先や上司とのゴルフのひとときを楽しむことを心掛けてください。勝手な思い込みという色眼鏡を外してみれば、職場では見られない意外な人となりがコースでは見られるかもしれません。それによって上司や得意先に親近感が湧けば、職場での仕事にもいい効果が生じるでしょう。

 コースに出れば、都会を離れ、おいしい空気を味わうことができます。そして広大な芝生の景色を楽しむこともできます。肌で感じる空気感や芝生や草木の匂いなどは、「吸気」にプラスに働きます。またゴルフでよい汗をかき、適度な運動でストレスを発散することで「排気」ができます。「運動」「休養」「栄養」と「吸気と排気」のバランスを適度に整えていくと、ゴルフはもっと健康的で楽しい趣味になります。

 ゴルフは何歳になっても楽しめて、正しいやり方さえすれば健康の維持・増進にとても役立ちます。より多くの方々にゴルフを通じて健康で豊かな人生を送っていただきたいと思います。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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