ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第18回) トランプ氏の選挙戦に学ぶビジネスとゴルフの成功法

スポーツ

公開日:2017.01.13

 2017年1月20日、いよいよドナルド・トランプ氏の第45代米国大統領就任式が行われます。これまで政治経験がなく今後が未知数のトランプ氏ですが、ビジネスで成功を収めている人物であることは多くの人が認めていることでしょう。同時に、彼はゴルフ好きであることでも有名です。ゴルフ場をいくつも所有し、ゴルフに関するウェブサイト「Trump Golf」も開設しています。数ある著書の中にもゴルフに関する記述が見られ、彼自身がゴルフをビジネスツールとして活用、商談の数々をゴルフで成功させてきたといいます。

 今回は、ヒラリー・クリントン氏との激戦を制したトランプ氏の選挙戦から、ビジネスとゴルフにおける成功のポイントを考えてみたいと思います。

 大統領選を制して次期米国大統領に決まるや否や、日本の総理大臣が外国首脳として初めてトランプ氏と会談しました。その際、日本製の高級ドライバーをトランプ氏にプレゼントしたことからも、両者のゴルフ好きがうかがい知れます。

 このように、相手にもよりますが接待にゴルフを活用する機会は多いです。その理由の1つは、接待先と行動を共にする時間の長さです。飲食による接待はせいぜい2~3時間ですが、ゴルフはほぼ1日相手とご一緒することができ、その分会話量も増え、両者の関係を密にできるからです。しかもゴルフは人となりが出やすく、お互いのことをよく知ることができます。

 ビジネスとゴルフの関係は、接待ばかりではありません。ゴルフ上達のノウハウは、そのままビジネスに生かせますし、逆に、鍛えたビジネススキルは、ゴルフプレーに生かすことができます。

気持ちを揺さぶる「言葉の力」で成功に導く

 トランプ氏の選挙戦で印象に残ったのは、数々の過激な発言でしょう。あまりの過激ぶりが物議を醸し、選挙後あちこちで反トランプデモも起こりました。混乱は国内にとどまらず、世界中にトランプ・ショックなる影響を与えたことも記憶に新しいことと思います。トランプ陣営が選挙戦に勝利した理由の1つは「言葉の力」にあるといえます。

 これをビジネスの視点に置き換えると、マーケティングにおけるキャッチコピーや商品名がこれに当たります。より注目を集める誘い文句で宣伝したり、印象に残る商品名を付けたりすることで、ターゲットの耳目を集めるわけです。言葉は最も心に訴えかける販促ツールなのです。

 では、ゴルフにおいて言葉の力が必要とされるのはどんなときでしょうか。

 接待ゴルフではなく、ギャラリーもいません。グリーン上の味方は自分とキャディーさんのみ。

 人の感情は言葉によって大きく揺さぶられます。「大丈夫かなぁ」「ミスしたらどうしよう……」「バンカーはイヤだなぁ……」などと悪いイメージを思い浮かべてしまうと、心はノンフロー※に傾き、スムーズなスイングはままならず、ミスにつながります。また、キャディーさんからの大事な助言を聞き逃してしまうことも。

 ショットの前に「よし!行ける!」「さぁ乗せるぞ!」「ワクワクするな!」などと心の中でつぶやいてみましょう。心はフロー※化し、ナイスショットの確率はグンと上がります。心の中でつぶやくだけでなく、実際に言葉を口から発するとなお効果的です。

 ゴルフにおいて、メンタルの重要性は多くの方が認識されているでしょう。そのメンタルに多大な影響を与えているのが言葉、とりわけ自分の言葉なのです。それ故、自身にとってプラスになる言葉を発するようにしましょう。

 少し話はそれますが、昨年末のフィギュアグランプリファイナルにおいて、スケートの羽生選手が競技に入る前に「できる、できる、できる」と口にするのを見た方もおられるでしょう。言葉を口にすると、気持ちが強く持てると教えてくれる映像でした。

※ノンフロー・フロー:当コラム第10回「逆転を好転させるメンタリティー」参照

ターゲットを絞り「強い味方」をつくる

 トランプ氏の選挙戦では、熱狂的なファンがいたことも勝因の1つです。彼らは、白人の低所得者層をターゲットに「強いアメリカ」を掲げてアピール、多くの支持を得ました。その上「隠れトランプ」と呼ばれる富裕層の支持もあり、多くの強烈なファンを獲得したことも選挙戦を制した要因の1つといわれています。

 これはビジネスでも全く同じです。ターゲットを絞り、そのターゲットにピンポイントで訴求し、より多くのファン、つまりどんなときでも自社や自社の商品やサービスを応援してくれる強い味方をつくることが、マーケティング上重要なわけです。

 ではゴルフにおける味方とは。グリーンの上ならキャディーさんしかいません。しかし忘れてはいませんか、ゴルフにおいて最大14人までラウンドに帯同できる味方がいることを。そう、ゴルフにおける自分とキャディーさん以外の味方はゴルフクラブです。

 ゴルフ上達のポイントの1つが、信頼できる味方(=クラブ)を1人(本)つくるということです。味方は多ければ多いほどよいのですが、トランプ氏がターゲットを絞ってアピールしたように、まずは好きなクラブ1本を得意クラブにするべく、徹底的に練習してください。

 「このクラブは自分の思い通りの仕事をしてくれる強い味方!」という1本をつくることこそ、成功への第1歩になるのです。

 例えばそれが7番アイアンだとしたら、得手が自信となり、次は6番や8番も強い味方になってくれるでしょう。ドライバーが得意の人は、いずれフェアウェイウッドやユーティリティーも得意になっていくはずです。

 苦手なクラブをなくすよう練習するべきだ、という考え方もありますが、それよりも得意なクラブに磨きをかけ、自信を付けていく方が上達は早いと私は考えます。もし、トランプ氏が反トランプといわれる層をなくしていこうと選挙活動をしていたのなら、トランプ氏の勝利はなかったでしょう。

 このように、ビジネスとゴルフの関係は、単に接待に役立つというのみならず、お互いに多くの相乗効果をもたらしてくれるものです。ゴルフにたけた第45代米国大統領ドナルド・トランプ氏の誕生により、どんな手腕を振るって政権運営をしていくのか。ビジネスにおけるゴルフの効能という観点からも期待して見守りたいと思います。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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