ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
大事なところで勝てない、勝負所で大ポカをやらかす、プレーヤーなら誰しもそうした経験があります。その原因は、プレーヤーの心理状態に求められる場合が少なくありません。心の揺らぎを抑え、今そのときに集中するためにはどうすればよいのでしょうか。
例えば皆さんには、次のような経験がありませんか?
<ケース1>
谷越えや池越えのショット。「ザックリだけはしないように!」と考えていたら、案の定、地面をたたいてしまった。
<ケース2>
残り2ホール。「すべてボギーで上がると90が切れる!」と考えたとたん、大たたきした。
<ケース3>
第1打でナイスショット。グリーンに向かう絶好のポジションから「よしツーオンだ!」と勢い込んだら、チョロをした。
これら3つのケースには、どれも結果を考えてしまったという共通点があります。ザックリする、90が切れる、ツーオンする……これらはどれも、これから未来に起こり得る結果であり、結果を意識してしまったからミスショットにつながったといえます。
どうして結果を考えたことが、ミスショットにつながったのでしょうか?
人の心には、2つの状態があります。1つは、ゴルフに限らず、物事のパフォーマンスを高める心の状態。もう1つは、物事のパフォーマンスを低下させる心の状態です。応用スポーツ心理学では前者を「フロー」、後者を「ノンフロー」と呼んでいます。
※応用スポーツ心理学:メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会(本部:東海大学)
人は、悪い結果を考えると、心がノンフローになります。というのも、悪い結果に対する恐怖や不安を感じると、心拍数が上がり体が硬直するため、結果、物事のパフォーマンスが低下してしまいます。<ケース1>は、この状態に当たります。
実は、良い結果を考えても、心がノンフローに陥る場合があります。国際大会などの大舞台でメダル確実といわれた選手が、「勝たなければ」「メダルを取らねば」と考え、それが重圧となって持っている能力を十分に発揮できずに終わるケースです。<ケース2>と<ケース3>が、この状態に当たるでしょう。
良い結果を考えることはポジティブで良い思考のようですが、このような思考も心がノンフローになり、パフォーマンスは低下することがあります。良い結果を出さなければ、または出したいと考えることは、裏を返せば、悪い結果になるかもしれないと恐怖や不安にかられていることの証しだからです。
良い結果も悪い結果も、それを考えることで思いがけないミスを生む。では、どう考えれば心がフロー化し、ナイスショットが打てるのでしょうか?
前回、ナイスショットをイメージするのがとても重要だとお伝えしました。これから打ちたいショットの弾道や打球音、手元で得られた感触など、五感を駆使してイメージします。脳の中で一度リハーサルをして、「大丈夫だ」と脳をだましてやるわけです。それで、成功の確率は格段に上がります。
しかし、イメージするのは未来のこと。ナイスショットという結果をイメージしているのだから、心理的にはノンフローの状態になるのでは……と思われるでしょう。確かに、これから打ちたいショットをイメージすることは、未来をイメージしています。そのとき、心は「今」ではなく「未来」に飛んでいます。
そこで、知っておいていただきたいのが、ナイスショットを生み出す4つのステップです。ゴルフの上達を図りたい方は必見です。
それは、「(1)判断」「(2)イメージ」「(3)決断」、そして「(4)実行」です。
まず、左脳(論理脳)を働かせて状況を分析し、どのクラブでどこに打つかを判断(1)します。次に、右脳(イメージ脳)を働かせ、打ちたいショットをイメージ(2)します。そして、最終的にこれで行こうと決断(3)します。ここまできたら、あとは無心で実行(4)する(打つ)だけです。前回のゴルフエッセーでは、(2)のステップについての方法を解説しましたが、この4つのステップで結果のことが頭をよぎってしまうと、大きなミスにつながるというわけです。
(1)の判断すべきときに結果に捉われ、心が揺らいでいたら、集中を欠き、正しい判断が難しくなります。より良い(2)イメージをすることもままならないでしょう。(3)の決断は「決めて断つ」と書きますが、結果に不安や恐怖を抱いている状況では、決めて断つことはできません。決断せずに(4)の実行への移行は、迷いや不安が残ったノンフローのまま実行することになり、これでは良い結果が望めないのは明白です。
この4つのステップのうちどれか1つでも心が揺らいだ状態で挑むと、ナイスショットはままならないのです。ショットを生み出すおのおののステップに全力を尽くす。今すべきことは何かを理解し、それに集中することが、成功の秘訣といえます。
多くの人は、ゴルフにおいてはアマチュアです。多少ゴルフで失敗してもどうということはないでしょう。しかし、ビジネスにおいて失敗は許されません。商談でもプレゼンテーションでも、研究開発でも、成功が求められます。経営者であればなおのことです。
そのとき、失敗してはいけないと結果を気にすると、心がノンフローになり、仕事の質は低下し、想いとは裏腹に、失敗する確率が高まってしまいます。
商談やプレゼンの際は結果を考えず、自社の商品がクライアントにとってどう役に立てるのかを全力で伝えることに集中しましょう。研究開発では、成果を出さなければと右往左往するのではなく、今抱えている課題のクリアに全力を尽くし、それに集中しましょう。
「目標を見定めたら、今やるべきことに集中し、全力を尽くす」
これが、仕事の質を高め、結果として成功を手にする秘訣なのではないでしょうか?
執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)
有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。
【T】
ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」