ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第67回) 調子が良いのに結果がついて来ない理由

スポーツ

公開日:2021.02.22

 コースプレーにおいて、一般的には平たんな場所からのショットより、傾斜地からのショットのほうが苦手という人が多いでしょう。私が主管するゴルフスクールにお越しいただいているお客さまにも傾斜地が苦手という方は少なくありません。しかしながら、「意外と傾斜地からのほうがナイスショットを打てているかも。易しいはずの平たんなフェアウエーからのほうがミスの確率が多い」と感じているお客さまもいらっしゃいます。レッスンで見ている限り、そうした人は初心者ではないけれど、決して傾斜地が得意な上級者ではありません。読者にも同じような思いの人がいるのではないでしょうか。

 このように、ゴルフでは難しい状況からはナイスショットが打てるのに、易しい状況からミスを連発してしまうケースが多々あります。まったくゴルフとは難しいスポーツですね。実を言えば、心の動きがプレーに大きく影響しているのです。どんな状況でミスをするのか、成功するためには何をするとよいのか、具体的な例を挙げながら解き明かしてみましょう。

ゴルフでよく、こんな失敗をしていませんか?

 まずは、調子が良いのにスコアが悪いというシーンをいくつか挙げてみます。自身のプレーを思い出してみてください。

シーン1
 ティーショットがナイスショットになり、フェアウエーのセンターをキープ。2オンが狙える絶好のポジションなのに、グリーンを意識すればするほど、なぜか大ダフリ。ドライバーは絶好調なのだと思い、ドラコンホールで巻き返そうと勢い込んで挑んだら、今度はチョロ。大恥をかく結果に……。

シーン2
 ラウンド前日の練習では、ショットの調子が絶好調。明日のラウンドはさぞかし良いスコアで回れるだろう!と期待したものの、当日はミス連発で、思うようにスコアを伸ばせなかった。ラウンドスタート直前の練習でもナイスショットを連発していたのに、本番がスタートするとまったくよいところがなかった。

シーン3
 ドッグレッグのホールで「あの山裾を狙おう」と打ったボールは思い通りの所に飛んだ。難しい局面ではうまく切り抜け、次打は、ストレートで広く易しいフェアウエー。多少曲げても大丈夫と思いながら打ったボールはフェアウエーの幅以上に大きくスライス、このホールは散々なスコアだった。

 心身共に万全のコンディションでラウンドに挑めたにもかかわらず、上がってみたらスコアが悪い。簡単なことほどミスが増える。こうしたことは、ゴルファーならみな経験していることではないでしょうか。逆に、思わずうまくいく例として、肩や膝が痛いなど体のコンディションが万全ではない状態のほうが良いスコアで回れる。大たたきした後、開き直ってクラブを振ったらうまくいった……といったケースがあるでしょう。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。

チャンスはピンチを誘発する

 易しい状況や絶好のポジションからのショットでは、プレーヤーは恐らく、最高の結果をイメージします。よし2オンだ!よしピンそばだ!と。この“良い結果への期待”が「ノンフロー」を生み出します。ノンフローとは物事のパフォーマンスが低下する心の状態です。このような心の状態になるとミスする確率はグンと高まります。よし2オンだ、よしピンそばだと目標を高く持ち、前向きに挑むことは一見プラスのように思えます。が、良い結果への期待は心に揺らぎをもたらします。心の揺らぎは“今やるべきこと”への集中を妨げ、ノンフローを引き起こします。

 難しい状況の場合、多くのプレーヤーは高望みをせず、まずこの難しい状況からの脱出を図ります。傾斜地の場合は無理にグリーンを狙おうとせず、とにかく次に打ちやすい所へボールを運ぼうと考えるでしょう。目の前に集中できているからこそ雑念が消え、かえって体がスムーズに動けるようになり、うまくいく確率が高くなります。このとき、物事のパフォーマンスが高まる心の状態が「フロー」です。良い結果を意識すればするほど、フローは妨げられ、ノンフローを生み出すのです。前日や当日朝の練習でショットが絶好調だったり、体の調子が万全だったりしても同じです。良い結果を期待するあまり、気付かぬうちに自身の心がノンフローに陥り、その結果、ミスを誘発しているわけです。

 また、易しい状況やチャンスと思える絶好の状態からは、“油断”や“慢心”が生まれやすくなります。これらもノンフローの原因になります。油断や慢心は、やはり集中を妨げるからです。プロや上級者のような卓越した技術の持ち主でも、油断や慢心あれば勝てるゲームも勝てなくなるでしょう。一般のゴルファーこそ、チャンスの機会には気を引き締めるように心掛けるべきです。ビジネスで「ピンチはチャンス」といいますが「チャンスはピンチを誘発する」ともいえるのです。

勝負の時こそ、目の前のことに集中しよう

 哲学者で思想家の安岡正篤さん(1898~1983年)の言葉に次のものがあります。

「成功は常に苦心の日に在り。敗事は多く得意の時に因ることを覚るべし」
(傳家寳の一文より)

 成功は常に苦く厳しい状況から生まれる。失敗の多くは良い状況からの油断や慢心から生じる、という意味です。これをゴルフに当てはめると、“ナイスショットや良いスコアは、常に厳しい状況から生まれる。ミスショットや良くないスコアは良い状況からの油断や放漫、そして高望みから生じる”ということになると思います。

 ゴルフでもビジネスでも、ミスを減らして成功したいのなら、状況の難易度を把握することや、体のコンディションを整えること、自分に合った道具で技術を磨くことなど、事に当たる前のさまざまな準備や練習は当然のこととして行いましょう。とても苦しいことですが、プロはなおさら、その課題1つ1つにしっかり向き合って継続しています。そして、事に当たる際には、雑念を振り払う思い切りが必要なのです。準備や練習の成果は、目の前のことに集中することから生まれます。本番に高望みをしないことで心に余裕が生まれて体のこわばりが取れ、力相応のスイングを心掛けるようになって、結果的にナイスプレーを生じやすくなります。心の動きをコントロールして、良い結果を導きましょう。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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