ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第21回) 悲観的に準備し、楽観的に行動すればゴルフは易しい

スポーツ

公開日:2017.04.14

 先日、私が主管するゴルフスクールが主催するゴルフツアーがあり、ご参加いただいた方のラウンドに同行しました。ツアーですから、ある程度コースに慣れている方が多く参加されているのですが、同行した私は「コース戦略が立てられていないな。戦略を立てれば、もっと良いスコアで回れるのに……」と感じました。多くの人が、非常にもったいないゴルフをしていると感じたわけです。

 そこで、今回はコース戦略の考え方についてお伝えしたいと思います。ゴルフに限らず、あらゆる物事の成功の秘訣として、次の考え方を覚えておきましょう。

 「悲観的に準備し、楽観的に行動する」

 これは、もともと「孫子の兵法」にある教えです。ビジネスシーンでも大切な考え方ですので、すでにご存じの方も多いことでしょう。そしてこの教えは、ゴルフにおいても全く同じなのです。

スコアはコース戦略と戦術で8割が決まる

 ゴルフのプレーにおいて、スイング技術だけを追求しても上達はかないません。フィジカル(体)やメンタル(心)を強化することも大切です。つまり、心技体を「三位一体」で向上させることが必要になります。

 そして、スイング技術に限らず、コースプレーにおける「戦略」と「戦術」もゴルフにおいて必要な「技」として求められます。

・ゴルフの「戦略」
 自分の飛距離やショットのクセ、得手不得手を考慮し、ホールごとに攻略ルートを講じること。このホールはティーショットをどこに打ち、その後どのようなルートでグリーンに乗せ、最終的にどうカップインさせるかというコースの攻め方を具体的に描くのが戦略です。

・ゴルフの「戦術」
 ショットの局面において、残りの距離や高低差、風の状態やボールのライ、そしてバンカーや池といったの障害物がどこにあるかなど、あらゆる情報を収集し、狙い所や使うクラブ、どう打つかを考える。これが戦術です。

 ゴルフのスコアは、このコース戦略と戦術で約8割が決まるといっても過言ではありません。

「慎重さ」と「楽観主義」を共存させよう

 コース戦略と戦術を考えるときに大切なのは、起こり得るあらゆることを悲観的に想定し、リスクヘッジしておくことです。

 例えば、あるホールは左サイドが広くて安全で、右サイドがOBだとしましょう。このようなホールでは、打球が右に大きく曲がってしまうのは避けたいところ。ここでは絶対に右には飛ばない打ち方をしなければなりません。

 ある程度ボールコントロールができる人であれば意図的に、リスク(OBエリアに飛んでしまうこと)を回避します。それがまだできない初心者であれば、フェアウェイの左側ラフを狙うなど、多少右に曲がってもOBにはならないルートで攻めていきます。

 真っすぐ飛ばせば当然フェアウェイなのですが、「真っすぐ飛ぶだろう」と楽観的に考えるのではなく、「曲がるかも……」と悲観的に考え、打球が曲がってもリスクは回避できるように攻めるルートを決めていくわけです。そして、いざショットを打つときには「必ずできる」と楽観的に考え、スタンスを決めクラブを構えることが肝要です。これが冒頭で述べた孫子の兵法――「悲観的に準備し、楽観的に行動する」という考え方に通じるわけです。

 コースプレーの際、この真逆を実践している人が多いのではないでしょうか?打球が曲がることを想定せず、楽観的にフェアウェイの真ん中を狙っているプレーヤー。深いバンカーがあるにもかかわらず、闇雲にグリーンやピンの方に向かって打とうとしている方など。そしていざ打つときになって「ダフったらどうしよう」「バンカーに入れたらどうしよう」と悲観的に考えてしまいます。このような思考は心をノンフロー状態(第10回「逆転を好転させるメンタリティー」を参照)にし、打てるものも打てなくしてしまいます。

 つまり、慎重に考えるべき瞬間と楽観的に考えるべきタイミングをうまく使い分けることが大切なのです。ご自身のプレーを振り返り、孫子の兵法を思い出して改善していただけたらと思います。

コース戦略のセオリー「逆算法」

 コース戦略の立て方は人それぞれ。プレーヤーの経験値や力量によって大きく変わってきます。ところが、誰にとっても不変のセオリーというのがあります。「逆算法」です。

 どのホールでも、最初にすることがピンポジションの確認です。ピンポジションは日によって変わります。多くのゴルフ場では、カートにピンポジションを示したガイドが置いてあるので確認しましょう。そして、そのピンポジションに対して、グリーン周りの状況から、グリーン上のどの位置をどこから狙うのが易しいかを考えます。

 例えば、ピンポジションがグリーンの右サイドに切ってあり、しかもグリーンの右手前に大きなバンカーが口を開けているとしましょう。このような状況ではグリーンは左から攻める方が有利です。なぜなら右攻めでは、バンカー越えでグリーンを狙うことになり、リスクが高まるからです。うまくバンカーを越えても、ピンが近いために次のアプローチは転がらずに止める打ち方をしなければならず、アプローチの難易度も高まってしまいます。

 フェアウェイのどこからグリーンオンを狙うかが決まれば、その位置にボールを運ぶにはどこから打てば易しいか、リスクが少ないか……を逆算して考えていきます。そして最終的に、第1打のティーショットをどこに打つべきかを判断するのです。

 この逆算法は、ビジネスでも有効です。プレゼン資料を作成する際、プレゼンの日程から逆算して上司の承認をもらう日を設定、上司のスケジュールを加味して提出日を決め、それに合わせて準備していきます。

 ダメなケースでは、プレゼンが迫ってから上司の承認を得ようとするも、あいにくその日は上司が出張で不在……。上司の承認が得られない中で、翌日のプレゼンを迎えている……となっては目も当てられません。

 資料を作成するに当たっては、クライアントからどんな質問が来てもよいように、あらゆる事態を想定して悲観的に準備しておきましょう。そしてプレゼン当日は「よし!大丈夫だ!」と楽観的に挑んでください。

 このように考えると、ゴルフ上達のポイントは、ビジネス成功のコツと同じであるといえます。いよいよゴルフシーズン。ラウンドの機会も多くなることでしょう。皆さまのゴルフレベルを向上させつつ、そのノウハウをビジネスにも生かしていただければと思います。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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