ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第57回) 「想定外」をチャンスに変えよう!

スポーツ

公開日:2020.04.21

 先日開催したラウンドレッスンで、突然の雨に見舞われました。スクールのお客さまと一緒にコースに出てさまざまなアドバイスをするためのラウンドレッスンは、必ず前日夜に天気予報を確認します。雨予報なら、ぬれることを想定してウエアやシューズの替え、レインウエアの用意をするのですが、その日の予報は晴れ。雨の心配はないという予報をうのみにし、雨天の準備を一切しなかったのです。幸い風邪は引かずに済んだものの、靴下まで雨が染み込み、足は冷たく、不快な思いで帰路に就く結果となりました。

 このように「想定外」の事態が起こると、人間誰しも慌てたり、落ち込んだり、後ろ向きになったりしやすくなります。今まさに執筆の時点では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界にまん延し、東京2020大会も延期をせざるを得ない事態になっています。昨年の今ごろは、こんなことになると誰もが想像していなかったでしょう。果たして「想定外」に直面したとき、どう対処したらよいのでしょうか。

ゴルフは想定外だらけ……

 ゴルフプレーを例にとり、「想定外」を考えてみましょう。

(1) 打った瞬間、突風が吹いてボールが流された。
(2) フェアウエーのセンターに打ったボールが、何かに当たったのか跳ねてラフに入った。
(3) グリーン手前にボールを落とし、転がしてグリーンオンを狙ったところ、ぬかるみで止まってしまった。
(4) 着地点が見えない所に池があり、打ったボールが見つからない。
(5) 打ったボールがあらぬ方向へ曲がり、OBになった。

 読者の皆さまも1度や2度はこのような経験があるのではないでしょうか。コースに出れば自然が相手、ゴルフは想定外だらけのように思います。

 「想定外」は大別して3つに分類できます。1つ目は「不可抗力」。上記の例では、(1)~(2)がそれに当たります。突風やフェアウエーの障害物などは自分の力ではどうすることもできず、不可抗力といえます。

 2つ目は「情報不足」。(3)~(4)は、ボールの落とし所がぬかるんでいる、見えない所に池があるという情報が不足していたから起きたトラブルといえます。

 3つ目が「分不相応」です。すべてのショットが曲がらず、常に真っすぐ打てる人はいません。プロでもプレッシャーのかかるシーンで思わず力が入り、ボールを曲げてしまうことは多々あります。ですからビギナーではなおのこと。(5)の例では、“ボールは曲がる”ということをまったく想定せずにプレーしていることが問題です。

 コースを攻略する際は、ボールは曲がるという前提で自分の力量を考慮した戦略を立てることが大切です。例えば、ボールを右に曲げやすいゴルファーは、あらかじめ右に曲がることを想定してフェアウエーの左サイドを狙いましょう。

想定外のことは起こるものと考え、気持ちをコントロールしよう

 想定外への対処法の第一歩は、可能な限り想像力を働かせ、想定外を「想定内」にしておくことです。情報不足や分不相応のケースでは、自身の注意力や経験があれば「想定内」にとどめておくことも可能だったはずです。一方、想定外が不可抗力の場合の対処法は難易度が高いものです。前述の例、(1)~(2)のように突風が吹いた、何かに当たってイレギュラーバウンドしたなどは、前もって想定できるものではありません。

 このような不可抗力が起きた場合は、「想定外のことは起こるものだ」と気持ちを切り替えること。これが対処行動として有効です。慌てたり、落ち込んだりすると、リズムを乱してしまい、その後のプレーでミスを連発し、スコアは崩れてしまうケースが多いからです。想定外のことは起こると腹をくくってしまえば、気持ちに余裕ができ、その後も平常心で対処できるでしょう。

 突風が吹いてボールが思いもよらない所に流されても、それはもう過去の出来事です。過去を変えることはできませんので、トラブルに心を奪われることなく、これから打つべきショットを楽しみ、最善を尽くせるよう気持ちが前向きにコントロールしましょう。

ピンチやリスクを乗り越えたとき、人も企業も成長する

 今、世界中がCOVID-19という想定外の疾患に立ち向かっています。これに打ち勝ったとき、人類はさらに成長し、文明はより発展するのではないでしょうか。想定外を克服する、その繰り返しが人類の歴史をつくっているのは疑いようもありません。大切なことは、前もってあらゆる可能性を想定内にしておくこと、想定外が起きたときには開き直って適切な対処をすることです。まとめると次の通りです。

・ 己の実力を知り、ミスする可能性を考慮し、力相応の攻め方をする。
・ 可能な限り情報収集し、想定外を想定内にしておく。
・ 情報が不足しているときは、悲観的に仮説を立て、リスクを回避する。
・ 想定外が起きても、慌てず冷静に対処する。
・ 想定外を楽しみ、最善を尽くす。

 逆にいえば、ゴルフに想定外がなかったら、ゴルフをこれ程までに楽しむことができるでしょうか?ボールは思い通りに飛ばないもの。だからこそ、思い通りに飛ばすために練習をし、人は向上していきます。そして、そのような努力の過程があるからこそ、思い通りに飛んだときに喜びを感じるのです。いつもボールをフェアウエーの真ん中に運べるとは限りません。深いラフからのショットや、時には林の中からのショットを余儀なくされます。だからこそゴルフは楽しい、ビジネスもまたしかりだと私は思うのです。

 想定外の出来事そのものが「学び」であり、それに前向きに対処していくからこそ、人は成長します。私も次のラウンドレッスンでは、たとえ晴れの予報であっても、想定外の雨に備えて最低限の用意はしておこうと思います。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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