ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第8回) 脇を締めても締まらない?目的と手段を整理しよう

スポーツ

公開日:2016.03.17

 ゴルフレッスンで「脇を締める」というアドバイスがあります。しかし取り入れた結果、かえってフォームが崩れてボールをうまく飛ばせなくなったという方も少なからずいます。

 これは、渡航先でのコミュニケーションスキル上達を目的に英会話スクールへ通っているのに、いつしか通うことが義務になって一向に上達しなかったり、ダイエット目的でフィットネスクラブに通い始めたのに、筋力アップに夢中になったりというケースに似ています。共通するのは、手段が目的化してしまっているところです。

脇を締める、その本来の目的は?

 前回、問題の解決にはその根本の原因を見極めることが大切であり、見つかるまで問い直すことが解決の糸口になると説明しました。問題の本質を見つけたら、解決に向けて取るべき策を具体的に実行していくことが大切です。ところが実際に行動を重ねるうちに手段と目的が曖昧になってしまい、なかなか問題解決へたどり着けないという事態が往々にして発生します。

 冒頭に紹介したゴルフレッスンでスイングを注意される際の「脇を締める」という言葉は、直接インストラクターから言われたことがなくても、雑誌のレッスン記事などで一度は目にしたことがあるでしょう。

 そもそも脇を締めることは、それ自体が目的でしょうか? もちろん、そうではありません。目的は、クラブヘッドを効率よく走らせ、ボールをより遠くに、かつ正確に飛ばすことです。

 クラブヘッドを効率よく走らせるには、手元(グリップ側)の動きを極力抑える必要があります。手元の動きを抑え、クラブヘッドの勢いが増せば、その慣性力で腕が引っ張られます。右打ちの場合、ボールのインパクト以降、左腕は外側に回旋する外旋運動をしながら左肘関節が屈曲し、左脇は自然に締まってきます(運動を正しく表現するため、ここではあえて外旋や屈曲など、生体力学で使う専門用語で表現しています)。

 ですから、脇は意識的に“締める”のではなく、理にかなったスイングを行えば、“自然に締まる”ものなのです。しかし、脇を締めなさいとだけ指導されたゴルファーは、そこに意識を向け過ぎてしまいます。無理に脇を締めようとするあまり、肩や腕に力が入り、ロボットのようなぎこちないスイングになってしまいます。こうなると、ヘッドスピードが落ち、クラブの軌道も不安定になり、理想とするナイスショットは到底期待できません。

 これは、クラブヘッドを効率よく走らせるという本来の目的を見失い、「脇を締める」という動作自体が目的になってしまったことによる弊害です。

ムリのないフォームの練習をすると、脇は締まっていく

 今回のポイントをまとめると次のようになります。

【目的】 クラブヘッドを効率よく走らせ、ナイスショットを打つ
【手段】 手元の動きを抑え、クラブヘッドの慣性力を利用したスイングを行う
【結果】 インパクト以降、脇が締まる

 「脇が締まる」は、目的達成のためにある手段を講じ、それを行った結果、得られた現象にすぎません。もちろん、手段として掲げたスイングを習得するには相応の練習が必要です。脇を締めても、スムーズにクラブが振れないという方は、本来の目的に沿った練習をしているか、改めて確認してみてください。具体的にどんな練習が必要かは、また別の機会に譲ります。ともあれ目的と手段が食い違って、本末転倒な結果を招かないよう気をつけたいものですね。

会議(カイギ)が懐疑(カイギ)にならないために

 目的と手段の食い違いは、ビジネスにおいても起こります。

 例えば、接待について考えてみましょう。接待の目的は、言うまでもなく「お客様との良好な人間関係を構築すること」にあります。その手段として、お客様を食事やお酒の席、あるいはゴルフなどで接待をします。結果、お客様との楽しい時間が過ごせるわけです。

 自分が楽しい時間を過ごしたいからとか、会社の経費を使わないと損だからという方は、手段が目的化している可能性があります。

 会議も目的と手段をきちんと意識して行う必要があります。メンバーが会議室に集まって顔を合わせることが目的となり、内容の薄い会議をやっていませんか? 目的が明確でなければ、拘束される時間が無駄になります。会議の目的は、取り上げられた案件についての「決定」であったり、メンバーへの「伝達」であったり、情報の「収集」「共有」であったりします。

 場合によっては、ブレーンストーミングなどでアイデアを出し合うことや、メンバーが一堂に会することで帰属意識を高めたり、連帯感を高めたりすることが目的であったりもします。会議の主催者は、その会議の目的をあらかじめメンバーへ明確に伝えておくだけでなく、会議中にも目的に沿った進行になっているかを常に注意する必要があります。

 ゴルフでもビジネスでも、目的と手段を整理して、繰り返し検証しながらまい進しましょう。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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