ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
今回訪問した「ゴルフミラーレンジ聖蹟桜ヶ丘店」
近年、さまざまな業界で無人の店舗形態が流行しています。ゴルフ業界においてはインドア形式の練習場(以下:インドアゴルフ練習場)で、その波がやってきているようです。今回は、最新の弾道測定器や臨場感あふれるレッスン動画を備えた無人インドアゴルフ練習場の紹介をしながら、この業態の今後と可能性を考えてみたいと思います。
今回訪れたインドアゴルフ練習場は、ゴルフライフが運営する「ゴルフミラーレンジ聖蹟桜ヶ丘店」(以下:ゴルフミラーレンジ)です。ブース(打席)は全8打席。ブースにはVIPブースと一般ブースがあり、一般ブースでも幅3.5m×奥行き6m(一部、幅4.1m×奥行き7m)と、かなり広め。通常、練習場の打席は、屋外、インドアとも横幅は最低2.5mとされています。もちろん、それよりは広めになっている練習場もあるのですが、それを考慮してもゴルフミラーレンジは余裕のある設計だといえます。
すべてのブースに、ボールスピード、打ち出し角、スピン量から導き出される弾道データをグラフィックで確認できる測定器「SKYTRAK(スカイトラック)」が設置されています。またVIPブースにはツアープロやクラブメーカーなども開発で使用する高性能の弾道測定器「TrackMan(トラックマン)」が設置され、さらに細かな分析が可能です。
ゴルフミラーレンジのセールスポイントの一つが、“ミラーレンジ”という名前にあるように、三方の壁が一面鏡張りになっていること。三方とは、アドレスした際の正面と背中側、そして打球方向とは逆の後方延長線方向です。これによってスイングチェックがしやすくなります。この鏡は万一ボールが当たっても割れない特殊な鏡になっているとか。テストでわざとボールをぶつけた箇所を見せてもらいましたが、鏡は少しヘコミがある程度でした。
ブースは入り口以外すべて壁に囲まれた個室のため、ゆっくり練習に打ち込める
そしてもう一つのセールスポイントが、アドレス正面の鏡に映し出されるレッスン動画です。鏡のサイズは高さ175cm×幅60cm、成人男性をほぼ等身大で映し出せるため、ティーチングプロと対面でレッスンを受けているような臨場感が味わえます。しかも、レッスンコンテンツは、飛距離を伸ばしたい、スライスを直したい、アプローチの苦手を克服したい……など、課題別にメニューを選択でき、目的に合ったレッスンを視聴できます。
ブースとは別に共有スペースが設けてあり、そこには各種練習アイテムがそろっています。練習アイテムはブースで自由に使用できます。ゴルフではさまざまな練習アイテムが販売されていますが、使ってみないとその効果は分かりません。買ってはみたものの自分には合わなかったという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。ここでは、まずは使ってみて、自分に合う、効果的だと判断したら購入するといったトライアル的な使い方ができます。
練習アイテムがそろう共有スペース
ゴルフミラーレンジは、弾道測定器や等身大のレッスン動画といった最新のデジタル技術を活用しつつ、3方向の鏡で自分のフォームをチェックして、さまざまな練習アイテムを試せるといった多様な使い方ができますから、上達志向の強いゴルファーの心をくすぐる「秘密の練習基地」といえるでしょう。
ゴルフミラーレンジは基本的に24時間無人営業です。ただし、公式サイトによると、スタッフが滞在している「スタッフアワー」を設けているようです。私が訪れたのは、関係者向けのお披露目から1週間たった、通常営業オープンの2日目だったこともあり、見学や説明対応のためのスタッフが何人かいましたが、通常は無人営業だそうです。
見学の申し込みや入会などの手続きはすべてインターネットの公式サイトで行います。運営会社であるゴルフライフのプロモーション事業部マーケティングプランナー 三上麻衣氏は、「11月上旬時点の会員数は約40人。50歳以上の方が多いのですが、手続きの方法が分からないといった問い合わせはありません。中高年の方でもインターネットを通じた手続きに慣れていらっしゃいます」と説明してくれました。
無人営業は非接触、非対面で済むため、利用者側・運営側双方、新型コロナウイルスなどの感染リスクを軽減できるメリットがあります。また、運営側は人件費が抑えられる、人手不足を解消できるなどのメリットがあるでしょう。それにより、利用料金が少しでも安く設定されれば利用者側にもメリットとなります。
ただ、接客応対での「心のこもったおもてなし」がないのは、少し寂しいなと感じてしまうのも私の本音です。また、トラブル時の対応では無人営業の課題を感じました。私が訪れた時には、インターネット回線の不具合でティーチングプロの映像が映し出されるレッスンコンテンツを視聴できませんでした。災害や強盗などの非常時には契約しているセキュリティ会社が駆けつけるそうですが、今後、トラブル対応については営業開始後、ノウハウが蓄積され改善されていくよう期待します。
最近、「隠れゴルファー」という言葉を聞くときがあります。ゴルフを始めたが会社の上司や先輩には内緒にし、隠れてゴルフを楽しんでいる若者のことです。ゴルフはやりたい……。だけど休みの日に上司や先輩のゴルフに付き合わされるのはイヤ、といった理由で、「隠れゴルファー」が増えているといいます。ゴルフミラーレンジをはじめとするインドアゴルフ練習場は、そんな隠れゴルファーの秘密の練習場所にうってつけです。コラムの第81回では、“お1人さま”ゴルフを取り上げましたが、インドアゴルフ練習場はまさにお1人さまゴルフの練習場版といえます。
スマートフォンの普及により、インターネットを介して諸手続きが簡単にできるようになったり、防犯カメラやセンサーの進化で店舗の無人化が容易になったり、ウィズコロナを常態化していくなどといった社会背景も追い風となり、インドアゴルフ練習場は増加し、利用者も拡大しています。さらに、誰からも介入されず、気ままにゴルフを楽しみたいという“お1人さま”ニーズが、これを後押ししていると考えられます。
「最近忙しくて全然練習できなくてさぁ」と、スコアが悪かったときの言い訳を用意しておくゴルファーが、実はインドアゴルフ練習場で夜中ひそかに練習している。都会に住む、毎日練習したい上級ゴルファーが、自宅の近所のインドアゴルフ練習場に通い詰める。こうした多様なニーズにマッチしたゴルフ業界の新たな成長分野といえるでしょう。今後、もっと数が増えて、トラブル対応が充実するなど使いやすくなっていけば、私を含め、これまで屋外のゴルフ練習場しか使っていなかったゴルファーも目を向けるでしょう。屋外とインドアを使い分けしながらゴルフに親しむ利用者がもっと増えるのではないかと感じられました。
執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)
有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。
【T】
ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」