ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第38回) 「感じる力」がゴルフの飛距離アップを実現させる

スポーツ

公開日:2018.09.14

 ゴルフの上達で欠かせないことの1つは、スイングによって生じるクラブヘッドの円軌道を安定させることです。クラブヘッドの軌道を安定させれば、ボールのミート率も方向性も良くなり、また飛距離もアップします。それには、クラブヘッドに生じる「遠心力」と、それに対する「向心力」を正しく理解し、うまく利用することが大切になります。今回は、この「遠心力と向心力」に注目してみましょう。

「遠心力」と「向心力」のバランスが飛距離を生む

 遠心力を利用した動作で分かりやすい例に、ハンマー投げの動作があります。ご存じのように、ハンマー投げは、決められたサークルの中をクルクルと回転しながら移動し、その回転によって生じる遠心力(正確には慣性力)を利用してハンマーを放り投げ、その飛距離を競う競技です。より遠くに投げるためには、ハンマーを手から離すリリース時の回転速度を速める必要があります。この回転速度を速めるために必要な身体的要素が、軸を支える強固な下半身と、遠心力で引っ張られるハンマーを体に引きつけておく腕力です。

 回転運動における身体的要素はゴルフスイングにおいても同じです。まず、軸を支える下半身が不安定ではいけません。エッセーの第32回第33回でお伝えしていますが、軸がブレないように体幹や大腿部(太もも)の安定性が求められます。

 では、ハンマーを体に引きつけておく腕力は、ゴルフでは何に相当すると思いますか?クラブヘッドの遠心力に対して体に引きつける力、つまり「向心力」は、肩甲骨や肩関節の可動性(モビリティー)によって生まれるといっていいでしょう。

 上級者や飛ばし屋といわれるゴルファーは共通して、ダウンスイングからインパクトにかけて次のような動きをします。(右打ちの場合です)

「左肩甲骨を背骨に寄せて引き上げる」
「左肘を若干曲げる」
「頭をターゲットから遠ざける」

 ゴルフスイングは、クラブの振り出しから蓄えた運動エネルギーをインパクトの瞬間まで高めていく回転運動です。遠心力で引っ張られるクラブを体に引きつけておくためには、肩、腕の力を抜いてリラックスし、クラブヘッドの重さや動きに集中し、感覚を研ぎ澄まして遠心力を感じることが大切です。遠心力を感じることで、先ほど挙げたような動きが自然に生み出されて向心力が発生し、クラブヘッドの軌道が安定して、かつヘッドスピードをも向上します。つまり、「集中」と「リラックス」とを共存させることがゴルフスイングでは求められるのです。

子どもの運動会に学ぶ「向心力」そして「感じる力」

 町内会や小学校の運動会で「台風の目」という種目を覚えていますか?競技名は地域で異なるかもしれませんが、ひと組当たり4~5人前後のチーム全員が同じ棒を握って走る競技のこと。目印(ポールやコーン)に向かって走り、Uターンして戻ってくる様子を形容して「台風の目」といい、恐らく誰もが見知っている競技ではないでしょうか。

 この競技は、他のチームよりも素早く目印をターンできるかが勝負の分かれ目になります。ターンする際、一番外側の子が大回りしてしまうとタイムをロスしてしまいます。下手をすると転んでしまうケースもあるでしょう。肝心なのが目印に一番近い子、つまり円運動の一番内側の子です。チーム全員が遠心力で引っ張られないよう、目印側に力を出して踏ん張ります。そのことでチームはポールのすぐ近くを小回りすることができ、素早くターンできるのです。

 このとき、目印側に引っ張る力が向心力です。素早く、安定した回転を得るのに欠かせない力です。とはいえ力任せに引っ張ればよいというものではありません。遠心力に対し、バランスよく目印側に引っ張り返すことが必要です。このとき求められる能力が、遠心力を“感じる”ということ。この「感じる力」が肝要なのです。

実践と経験で「感じる力」を養おう

 ゴルフスイングにおいてバランスが悪くなるのは、クラブヘッドに生じる遠心力を感知していないからです。飛ばそうと躍起になり肩や腕に力が入っている。あれこれ考えてスイングがギコちなくなっている。こうなると遠心力を感知することができずに向心力が分散されるため、スイング軌道が狂ったり、ヘッドスピードがロスしたりするわけです。

 インパクトで肘が引けて腕が縮こまったり、フォローで腕を体から必要以上に遠ざけてしまったり……などと自覚がある人は、余計なことは考えず、感性を研ぎ澄ましてクラブに生じる遠心力を感じ取れるように努めてください。遠心力を感じることができれば、バランスよく向心力を生じさせることができ、きっとビックリするような飛距離が得られるでしょう。

 遠心力を感じる力を養うには、とにかくクラブを振ることです。どんなに質の良いレッスンでも、ただレッスンを受けるだけでは遠心力を感じる力は身に付きません。クラブよりも振りやすく、かつ遠心力を感じ取りやすくした運動補助器具として、本連載の第32回第33回で「パワーバランス」を取り上げました。こうした器具を活用するのも1つの手段です。パワーバランスは先を重くしたゴムホースのような器具ですが、太めのロープや長めのスポーツタオルの端を結んだモノなどで代用することもできます。

 ビジネスにおいても、この「感じる力」はとても大切です。例えば、商談の席でお客さまが求めているものは何かを感じる、上司が言わんとしていることを感じる、日常の当たり前の事象について「なぜ?」と疑問を感じる……などです。感じる力を養うのは、やはり実践と体験あるのみ。上司や先輩の教えをただ聞くだけではなく、実際にトライし、やってみることです。ゴルフ同様、やってみることで「感じる力」が養われ、この「感じる力」が基になり「考える力」が育まれ、「仕事力」が身に付いていきます。

 ただ、ずっと集中し過ぎると見えるものも見えなくなることがあります。一呼吸を置く、リラックスする、という間の取り方も「感じる力」のためには必要です。まさに集中とリラックスとの共存が大事ということですね。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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