ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第74回) ゴルフでできる健康維持・増進の4要素(前編)

コミュニケーション スポーツヘルスケア

公開日:2021.09.24

 東京2020大会では日本人選手が大活躍し、史上最多、58個ものメダルを獲得しました。ゴルフ競技においても女子の稲見萌寧選手が銀メダルを獲得し、日本のゴルフ界に初めてメダルをもたらしました。これによって日本中が大いに沸き、スポーツのチカラを改めて示しました。

 ただ一方で、全国に広がる新型コロナウイルスの猛威はやまず、緊急事態宣言期間も各地で軒並み延長となってしまいました(8月末の執筆時点)。五輪のような世界最高峰のスポーツの祭典で戦うトップアスリートのみならず、スポーツを趣味として楽しむ一般のスポーツ愛好者の方々も、「健康」であることの大切さを改めて感じられていることと思います。

 少し遡りますが東京2020大会を控えた7月18日、「健康ゴルフ体験教室」が横浜武道館で開催され、著者が講師を務めてきました。公益財団法人 横浜市スポーツ協会が横浜武道館1周年記念事業として企画したもので、体験教室はゴルフの他に、小学生を対象にしたバスケットボールやフットサル教室も開催されました。

 「健康ゴルフ体験教室」では、ゴルフを健康維持・増進に役立てるポイントや、この連載の過去記事でも何度か紹介した「ゴルフフィットネス」の体験とその効果の解説、健康的なゴルフスタイルを参加者に提案しました。東京2020大会によって「スポーツ」のチカラを、新型コロナウイルスの感染拡大で「健康」のありがたみを再認識する今、ゴルフで健康を維持・増進するポイントを改めてお伝えしたいと思います。

ゴルフで健康!感染対策をしたうえで体を思いきり動かそう

 

健康の3要素、プラスαとは?

 健康を維持するには「栄養」「運動」、そして「休養」の3つがバランスよく保たれていることが大切です。この3つは「健康の3要素」といわれています。しかし、昔からいわれているこの3要素に関してはフィジカル的な側面が強く、メンタルヘルスの要素が欠けていると私は思っています。現代はストレス社会なので、健康のためにはメンタル的な「ストレス発散」「ストレス解消」といった要素が必要でしょう。近年、この必要性がさらに高まっていると感じています。

 人は生命を維持するうえで不要なモノ、つまり老廃物を尿や便、汗と一緒に体外に排出します。これら物質としての老廃物と共に排出しなければならないモノが、精神面のストレスです。ストレスは目に見えないため軽視されがちですが、たまると体に不調をきたし、ひどいときには死に至ることもあります。よって健康の維持増進には、ストレスをしっかり排出することが必要です。私はこのように、不要なモノを体外に排出することを「排気」と呼んでいます。

 「排気」の反対語は「吸気」です。私は、人間の生命維持に必要なモノを摂取することを「吸気」と呼んでいます。健康の3要素の1つ「栄養」は、まさに私の言う「吸気」に当てはまります。しかし、人間にとって必要な栄養は、口から取る「食事」だけではありません。芸術性の高い絵画を見たり、風光明媚(めいび)な景色を楽しんだりするのも、目から取り込む栄養といえます。好きな音楽を聴くのは耳から入ってくる栄養といえるでしょう。

 つまり、五感を通じて取り込む広い意味での栄養も、人間にとっては必要不可欠だと考えています。また人とのつながりや社会参加も健康の維持・増進には必要不可欠です。これは、人とのつながりを通じて得られる栄養といえるでしょう。健康の維持増進のため、「運動」「休養」「栄養」に、吸気と排気の発想を加えた4つのバランスを整えることを私は推奨しています。

ゴルフを不健康にするNG行為

 上述した私流の「健康の4要素」をゴルフで説明してみます。ゴルフは体を動かすスポーツですから、当然「運動」です。しかし、運動は何でも間違ったやり方をすると、かえって健康を害することになり、注意が必要です。せっかくなら健康的に行いましょう。

 まず、「準備運動をしない」のはNGです。ゴルフスイングは瞬間的に素早く筋肉を動かすので、準備運動をしないでプレーをすると、筋骨格系、特に腰、首、肘、そして膝などに問題が起きやすくなります。スムーズに体が動かせない状態での激しい運動はどこかに無理が生じると自覚しておきましょう。しかしながら、準備運動を軽視しているゴルファーがとても多いと感じています。

 小学校の体育の授業では、水泳や徒競走の前には必ず準備運動をするように教えます。ゴルフでも同じなのですが、それを教えない(教えられない)指導者が多いのではないでしょうか。あるゴルフ初心者向け冊子で「ラウンド当日の流れ」を読んだことがあります。そこには、ロッカールームで身支度をした後、次に練習場でボールを打ちましょうと書かれていました。そうではなく、初心者向けであるからこそ、準備運動の必要性をきちんと伝えるべきだと私は思います。

 ここで口を酸っぱく言っておきますが、ゴルフの練習前やラウンド前の20~30分は、念入りに準備運動をしてください。運動の目安は、冬場でもうっすら汗ばむ程度が理想です。効果的な準備運動の方法は、過去記事の第15回、30~33回、42回が参考になるでしょう。

*第15回「スコアも翌日の仕事も絶好調にするゴルフ〜身体編〜
*第30回「ゴルフと健康「上級者ほど腰痛持ちはウソ!」
*第42回「ゴルフとバランス「姿勢を良くして飛距離アップを」

 準備運動不足の他、朝早く出掛けるからと睡眠不足でのプレー、時間がないからと朝食抜き、ハーフターンの昼食時にビールを飲む、といったことも健康的な「運動」としては本来NG行為です。しかも、こうした行為は栄養面でも休養面でも健康を損なうので要注意です。

ゴルフでリモートワークのストレスを解消

 健康の維持・増進に、人とのつながりや社会参加が大切だと述べました。新型コロナウイルスによりリモートワークで仕事をする人が増え、人とのつながりが希薄になり、ストレスを抱える社会人や学生が多いと聞きます。ゴルフは年齢や性別、ゴルフの腕前に関係なく、誰もが一緒に楽しめ、交友を深めることができるスポーツですから、この面をカバーするのに最適です。

 もちろん、得意先との接待ゴルフや上司との付き合いゴルフといった、心から楽しめないゴルフも時にはあります。こうした、かえってストレスをため込んでしまう“イヤイヤゴルフ”への対処法は次の機会に譲るとして、リモートワークでストレスを感じている人には、ゴルフの社交性やコミュニティー形成の効果を理解し、ストレス解消に役立ててほしいと思います。

 ゴルフは、正しいやり方さえすれば健康の維持・増進に役立つ素晴らしいスポーツです。上述のように、社交性に富み、人とのつながりを深め、コミュニティー形成に役立つスポーツともいえるでしょう。社会人力を向上させる人材育成ツールとして、ゴルフを活用している皆さんもおられるのではないでしょうか。

 とはいえ、「正しいやり方さえすれば」と条件を付けた通り、ゴルフの価値を損なう“もったいないゴルフ”も存在します。“イヤイヤゴルフ”もその1つかもしれません。これらの対処法は次回の後編でお伝えしたいと思います。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

【T】

あわせて読みたい記事

連載バックナンバー

ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」