ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第11回) ゴルフレッスンに学ぶ部下の指導法

スポーツ

公開日:2016.06.28

 ゴルフのレッスンを受けたことがありますか?その指導に満足しましたか?

 ゴルフを始める際、欧米ではプロのインストラクターから指導を受けるのが一般的と聞きます。しかし日本では、プロからレッスンを受ける人の割合が非常に低く、家族や友人、あるいは職場の上司からゴルフを習う人が圧倒的に多いようです。そうしたスタートを切ったことによって伸び悩み、ゴルフをやめてしまう人も多いのではないかと私は考えています。

 本当にうまくなりたいのであれば、基礎をつくる最初の段階からレッスンに通うことをお勧めします。ただ、そうは言っても、どのレッスンプロから習えば良いのか、あるいは、どのスクールに入れば良いのかが分からない、というケースも少なくないと思います。

 いうまでもなく、レッスンは指導です。そしてインストラクターは指導者です。ですから、指導とは何か、指導者はどうあるべきかを知れば、良いゴルフのレッスンが見分けられるようになるでしょう。そこで今回は「指導」することについて説明いたします。この知識はゴルフに限らず、ビジネスで部下や後輩を指導する上でも多いに参考になると思います。

教育とは「教える」ことと「指導する」こと

 教育には、大きく分けるとティーチング(Teaching)とコーチング(Coaching)の2つがあります。直訳すると、ティーチングは「教える」こと、コーチングは「指導する」ことです。この2つは似ているようで全く異なるものです。私なりの考え方を詳しく説明していきます。

 ティーチングは「教える」ことですので、指導者や学習者が変わっても、その情報や知識の本質は共通しています。例えば、ゴルフ用語やクラブなどの用品に対する知識、ルールやマナーなどは「教える」対象になります。これらは、誰が教えても、誰に教えても同じで変わることはありません。もし違っていたら、それはゲームになりませんね。

 一方、コーチングは「指導する」ことです。上達という目標達成に向けて導いていくことが指導です。ですから、学習者の能力によって、指導の内容や方法は変わってきます。また、学習者が目標とするレベルや難易度によっても、それは変わってきます。

 ティーチングとコーチングでは、コミュニケーションの伝達方向が違ってきます。ティーチングは、誰が教えても同じことを伝えますので、その情報や知識の伝達方向は、教える人から学ぶ人への一方通行です。コーチングでは、学習者の理解度や習得度合いを鑑みながら、指導を進めていかなければなりません。ですから、指導者と学習者との間には、双方向のコミュニケーションが不可欠です。

ゴルフレッスンに求められるテーラーメイドな指導

 ゴルフレッスンは、指導の内容によってティーチングとコーチングを使い分ける必要があります。

 まず、前述の通り、ゴルフ未経験者にゴルフ用語や用品知識、ルールやマナーを教えることはティーチングです。例えば、誰が教えても1ラウンドは18ホールですし、ウッドの1番はドライバーと呼ぶわけです。

 一方、ゴルフスイングを習得していくには、コーチングが求められます。ゴルフスイングは人それぞれだからです。こう言うと、「プロのスイングは皆キレイで同じに見える。ゴルフが上手な人のスイングは皆同じなのでは?」と疑問を持たれる人も少なくないかも知れません。しかし一見キレイで同じに見えるゴルフスイングでも、よく観察すると、構えの姿勢やバックスイングの位置、スイングのテンポなど皆違うことに気づくでしょう。

 筋肉の柔軟性や関節の可動範囲、筋力の強さや瞬発力、そしてバランス能力などは年齢や生活環境で異なります。さらに、体形や体のサイズも人によって異なります。100人のゴルファーがいたら、その人に最善のゴルフスイングも100通りあると言っても過言ではないのです。よってゴルフの上達には、そのゴルファーにとっての「オンリーワンスイング」を見つけることが重要なのです。

 それだけではありません。めざしたいゴルフのスタイルや好み、物事の受け取り方や感じ方、性格なども十人十色です。ですから、ゴルフのレッスンには、テーラーメイド(個別対応)が求められます。あなたにピッタリのスーツを仕立てるのと同じです。ゴルフレッスンとは、人それぞれのオンリーワンスイングをテーラーメイドで備えさせるプロセスです。決して、一律のスイングを学習者に指示強制することではないのです。

良い指導者の条件とは

 特別な人でもない限り、人間の骨は皆206個ですし、骨格の基本構造も同じです。筋群の数も600余りあるといわれており大差ありません。解剖学や生理学などから見た体のつくりは基本的に皆同じです。しかし、人間の体には個体差があります。さらにゴルフに大切なイメージする力、心理面は、その人の個性と深く関係しています。

 ですから、良いゴルフインストラクターは、解剖学や生体力学といった専門知識に精通しているだけでなく、高いコミュニケーションスキルを持ち個体差や個性を把握できなければならないのです。

 良いゴルフインストラクターの条件をまとめると、次のようになります。

(1)決められたスイングを指示強制するのではなく、オンリーワンスイングを引き出せる人
(2)指導者からの一方通行ではなく、双方向コミュニケーションができる人
(3)学習者1人ひとりとテーラーメイド(個別対応)できる人
(4)学習者の「やる気」を引き出せる人
(5)学習者の「気づき」を引き出せる人
(6)解剖学や生体力学など、必要な専門知識に精通している人

 プロゴルファーとしての戦績や実績、知名度などを重要視する向きもありますが、それは二の次、三の次だと私は思います。「名選手必ずしも名コーチにあらず」です。

 これら条件を兼ね備えたインストラクターであるか否かを見極めるには、まずは一度レッスンを受けてみるのが近道です。多くのゴルフスクールでは体験レッスンを受け付けていますから、入会する前に体験することをお勧めします。体験レッスンを行っていないスクールでは、インストラクターがどんなレッスンをしているかを見学したり、すでにレッスンを受けた方の意見を聞いたりすればいいでしょう。

 以上のような良いゴルフインストラクターの条件とは、実は、ビジネスにおいて部下や後輩を指導する上で求められる条件と相通じるものがあります。

 ビジネスで言い換えると、(1)は「仕事のやり方を指示強制するのではなく、部下の能力を引き出せる人」となります。(6)は「仕事に必要な専門知識に精通している人」となります。(2)~(5)は、指導者を上司に、学習者を部下に置き換えればそのままです。

 ゴルフ未経験者に対して、ゴルフ用語や用品知識、ルールやマナーなどのティーチングが必要であるように、相手が新入社員のように経験が浅い場合は、仕事を一人前レベルにこなせるだけの基礎知識や、社会人としてのしつけやマナーを、ティーチングで教え込まなければなりません。

 そこから先、部下や後輩が個性を伸ばしていけるかは、指導者の手腕にかかっているのです。良いゴルフインストラクターは、ビジネスの指導者としても参考になること請け合いです。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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