ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第32回) ゴルフスイングを安定させる体幹トレーニング

スポーツ

公開日:2018.03.09

 肩を回せ!腰を回せ!背筋を伸ばせ!脇を締めろ!頭を動かすな!ボールをよく見ろ!……と先輩ゴルファーからアレコレ指導されて、困惑した新米ゴルファーは少なくないでしょう。そうした注意を1つずつ修正すれば、思うようにボールを飛ばせるようになるのでしょうか。いえいえ、決してそのようなことはありません。

 まず、ゴルフスイングに必要な根本的なことを知っておかなければなりません。ゴルフスクールを経営する私は、初心者にいつも次の3つの要点を教えています。

●安定させるべきところを安定させること(スタビリティ)。
●大きく動かすべきところは動かすこと(モビリティ)。
●かつ効率よく力を生み出してボールに正しく伝達(キネティックチェーン)すること。

 どれも必要で、どれかが欠けたら思い通りにボールを飛ばすことはできません。

ミスショットの原因のほとんどは、安定すべきところが安定していないか、動くべきところの動きが十分でないか、ボールを飛ばすための十分なパワーが正しく伝達されていないか、といったことなのです。今回は3つの要点のうち、「安定させるべきところを安定させること」――スタビリティに注目し、体幹の重要性と鍛え方についてお話ししましょう。

体幹を鍛えれば“飛んで曲がらない”

 ゴルフスイングにおいて安定させるべきところとはどこでしょうか。最も安定させなければならないのは「体幹」と「下肢(ヒザや太もも)」です。最近、ゴルフに限らず、多くのスポーツのパフォーマンスを高める上で「体幹」の重要性が語られています。まずは体幹とはどこをいうのか確認しましょう。

 手元にある辞書には「人間の胴。人体の主要部分」とありますが、解剖学や生体力学では次のように定義されています。

【体幹とは】 胸部と腹部をセパレートしている「横隔膜」と、腹筋群の中で一番深層部にあり、内臓をコルセットのように支えている「腹横筋」、背骨を深層部で支えている「多裂筋」、そして骨盤の底の部分から、腸やぼうこうなどの内臓を下から支えている「骨盤底筋」の4つの筋肉によって、上下左右を囲まれた空間。

 確かに「人間の胴」ですね。具体的にイメージするなら「下腹部」といっていいでしょう。昔から何か大きなパワーを発揮しなければならないとき「下腹(したばら)に力を入れろ」といいました。下腹部、つまり体幹をしっかり安定させると、身体パフォーマンスは上がります。ゴルフスイングにおいても、体幹を安定させて骨盤を回旋運動させると、より安定したショットを放つことができるわけです。

 もう少し詳しくお話しましょう。以前、本コラム(ゴルフエッセー第5回第7回)でも、ゴルフスイングにおける「コア」の重要性をお話しました。コアとは、重心(センター・オブ・グラビティ)のことで、東洋では「丹田(たんでん)」と呼ばれています。ゴルフスイングは回転運動ですから、必ず回転の中心があります。この回転の中心が「コア(=重心/丹田)」です。コアが不安定だと安定したスイングはままなりません。故にコアを有する体幹の安定は不可欠というわけです。

 体幹の安定は、回転軸が定まることともいえます。回転軸が安定するとボールのミート率が上がり、クラブヘッドに生じる遠心力を最大限に引き出すことができます。これができればショットの方向性もブレが少なくなり、おのずと飛距離は伸びます。つまり、体幹が安定すれば「飛んで曲がらない」スイングが獲得できるわけです。

回転の中心が安定していると、遠心力が働き円運動になる

 ゴルフが上手な人とそうではない人のスイングを動画で比較すると、この体幹の安定度が全然違うことがひと目で分かります。ゴルフがうまくない人のスイングは、伸び上がったり、スウェー(スイング中、体が左右にブレること)したりと、バタバタ動き過ぎています。その原因のほとんどが、体幹の不安定さにあるといっても過言ではありません。スマートフォンなどでフォームを撮影する機会があれば、プロのスイングと比較チェックしてみましょう。

体幹安定に必要なコアマッスルは立った状態で鍛えよう

 続いて体幹を安定させる方法を説明します。先に紹介した「腹横筋」と「多裂筋」の2つに、腰椎(背骨の腰の部分)を支える「大腰筋」と、骨盤を支える「腸骨筋」を加えた4つの筋肉を「コアマッスル」と呼び、体幹を安定させるには、これらの筋肉を鍛える必要があります。大腰筋と腸骨筋は2つ合わせて「腸腰筋」とも呼ばれています。

 人間は、就寝中以外ほとんどの時間、足を地に付け上体を起こした状態で活動しています。スポーツにおいても、水泳などを別にしておおむね上体を起こして行います。よって、体幹のトレーニングも足を地に付け上体を起こした体勢で行うのが効果的です。

 私が勧める体幹トレーニングは、ゴルフスクールに取り入れている「ゴルフフィットネス」の運動プログラムの1つ「パワーバランス運動」です。立った状態で行いますし、ゴルフの動きに即した運動ですので、ゴルフのための体幹トレーニングとしてうってつけです。

 「パワーバランス」というゴムホースのような運動補助器具を、ゴルフスイングをするように横方向に、ビューンビューンと左右連続で振ります。このとき、身体軸(正中線)を安定させ、肩と腕の力を抜き、体幹を意識しながら左右均等に振ると効果的です(連続写真参照)。

【パワーバランスの振り方】
・足幅は肩幅程度に開き、踵は上げずにベタ足で。
・軸を意識し、頭を動かさぬよう、左右均等に横方向に振りましょう。

 ゴムホースを振ると、それに遠心力が働くため、外へ外へと引っ張られます。人は引っ張られると、本能的にバランスを保とうと引っ張り返します。その引っ張り返す力は遠心力と真逆の方向、つまり体の中心方向へと働きます。このとき無意識に体の中心であるコアを使います。故にパワーバランス運動によって無意識のうちにコアマッスル(体幹)が鍛えられるのです。

 ゴムホースの慣性力でより体が捻転されるのでストレッチの効果もありますし、呼吸を伴いながらリズミカルに運動しますので、有酸素運動でもあります。筋トレとストレッチ、さらに有酸素運動の3つを同時に行えるので効率的です。

体幹強化は腰痛予防にも効果あり

 ゴルフの上達を図るには、体幹の強化はとても重要であるとご理解いただけたと思いますが、体幹強化のメリットはそれだけではありません。体幹を鍛えると身体バランスが整い、体を支える能力が向上するため疲れにくくなります。18ホールを回っても疲れ知らずで、翌日の仕事への悪影響がなくなります。

 体幹を鍛えることは、腰痛予防につながります。骨盤の前傾角度や背骨のS時カーブの湾曲が、正常に保たれるからです。本コラム(ゴルフエッセー第30回)でお伝えしていますので、ぜひ参考にしてください。

 体幹が強くなるメリットはまだあります。内臓のポジショニングが良くなり、内臓機能の働きも向上します。特に腸の働きに効果があり、お通じが良くなります。お通じが良くなると老廃物を体の外に追い出してくれるので、デトックス効果が高まります。デトックスによって肌もキレイになるので、女性の方はやらない手はありません。男性にとっても見た目の印象が良くなれば、ビジネスにもプラスに働くでしょう。

 文字通り、体の幹である「体幹」を鍛えるメリットは計り知れません。ぜひ取り組んでください。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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