ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第6回) ゴルフスイングに学ぶ部下の育成法(後編)

スポーツ

公開日:2016.01.20

 部下をどう育て、成長させるか? また、誤った動きをしたときにどう対処をするか。成果の上がる部下の育成法を、ゴルフスイングにたとえて解説する後編です。ゴルフスイングの基本原理は、クラブヘッドの回転運動によって生じる遠心力と慣性力を十二分に発揮させ、そのパワーをしっかり引き出すこと。前回は、こうしたスイング原理の説明と、これをビジネスに置き換えた場合の、会社組織における社長、管理職、そして一般社員の役割についてお伝えしました。後編ではそれを掘り下げ、部下に成果を上げさせる管理職の役割について考えていきましょう。

管理職は部下のサポーターであるべし

 ゴルフスイングを会社組織にたとえるなら、社長はコア(重心)、腕やグリップが管理職、そしてゴルフクラブが最前線で活躍する一般社員です。

 ゴルフスイングの中心、そしてスイングのパワーの源であるコア。これがブレてしまってはスイングが不安定になることは明白です。会社の中心ということからたとえれば、社長はコアといえるでしょう。理念のない、方針が定まらない社長では、会社が立ち行かなくなります。ゴルフスイングと同じように、社長は決してブレてはいけません。

 次に、ゴルフスイングにおいて、腕そしてグリップの役割をするのが、管理職です。そして、クラブが最前線で仕事をする一般社員です。つまり、管理職にとっては部下です。管理職は、社長が立てた理念や方針を、部下に落とし込む役割を担います。

 ゴルフスイングにおける、腕やグリップの役割で大切なことが2つありました。それは「無理に力を入れない」、クラブの動きを「感じ取る」です。腕でクラブを動かそうとしたり、力を入れたりしては、クラブに生じる遠心力や慣性力を存分に発揮させられず、クラブの動きを妨げてしまう結果となります。ですから、腕は力まず、しなやかであることが大切なのです。

 この考え方からすると、管理職がすべきは部下を管理することではなく、部下のサポーターとして、部下が能力を存分に発揮できる環境を整え、そして最大限の支援をしてあげることになります。部下が、伸び伸び仕事ができるよう、管理職は余計な力を加えずに見守るのです。

 多過ぎる報告書、冗長な会議、面倒な決裁手続きなど仕事のブレーキは、業務を長く続けているほど積もりがちです。改善するために業務改革や組織変更をしてみても、根本的な解決に至らず現場の負担ばかりが増えていませんか? 管理をするための管理になっていないか、現場の声にしっかり耳を傾けてみましょう。

管理職の役割は部下に仕事をさせるためと心得よう

 会社のトップである社長が打ち出している理念や方針に対して、部下が誤った行動をしたとき、管理職はつぶさにそれを正しい方向に軌道修正してやらなければなりません。真っすぐなボールを打つという方針に対し、スイング軌道やフェースの向きといった「部下の行動」が誤っていたら、求める「結果」は到底期待できないからです。ですから、管理職は部下の仕事ぶりにしっかりと目を向け、常に気にかけておく必要があるでしょう。

 ゴルフスイングの場合、誤った動きは、そのほとんどがゴルファーの思考と感覚とのズレによるものです。例えば、真っすぐ振ろうとする思考に対し、実際には右だの左だのと違う方向に振っていることに感覚として捉えられていないケースです。それを改善するために大切なのは、まずズレを感じ取り、把握することです。これはグリップの感覚を研ぎ澄ませば可能となります。同じミスを繰り返す多くのゴルファーは、そのズレに気づけないのです。

 当然のことながら、ゴルフクラブと社員はまったくのイコールではありません。クラブは意志を持ちませんが、社員は意志を持って行動しています。ですから、たとえ理念や方針に対して誤った行動を取ったとしても、それを頭ごなしに否定してはいけません。

 社員の意思や価値観を認めつつ、会社の理念や方針を伝え、それに則した行動はどのようなものなのかを考え、理解させる必要があるでしょう。腕や手でクラブをコントロールしようとしても、思うようなスイングはできません。そして、それ以上に、上司が部下に言うことを聞かせようと無理やり押さえつけても、なかなか思うようにはいかないでしょう。

 管理職を始め、部下を持つすべての人は、「部下が言うことを聞かない」と嘆く前に、部下の仕事に余計な介入をしていないか、余計な圧力をかけていないか、部下がその能力を発揮し、成長できる環境を整えているか、部下の行動を気にかけているか、自問自答してみるべきだと思います。

 ゴルフスイングでは感覚を研ぎ澄まし、無理に力を入れずにクラブの動きを「感じ取る」ことがとても大切です。仕事の上でも、腕や手で打つスイングと同じことをしているなと感じたら、即、クラブ(部下)に伸び伸び仕事をさせるスイング(環境)に、シフトするように努めてください。きっと、目の覚めるようなナイスショット(仕事の成果)が得られるでしょう。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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