ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第5回) ゴルフスイングに学ぶ部下の育成法(前編)

スポーツ

公開日:2015.12.16

 部下が言うことを聞かない、あるいは部下が思うように育たないと嘆く管理職の方は少なくないでしょう。人材育成、つまり部下をどう育て、成長させるか? ひいては業務成果、企業利益につながるこの問題は経営者や管理職の永遠の悩みの1つです。この問いに対する答えを、ゴルフスイングの基本原理から考えてみます。

ボールに強い推進力を与えるゴルフスイング

 まずは、頭で理解していてもなかなか身体がついていかないゴルフスイングの基本原理を、おさらいしましょう。

 多くの人に見られるゴルフスイングの間違いは、腕や手でクラブを振ろうとすることです。つまりクラブを腕の振りだけで、トップへの引きつけから、ボールのインパクト、フィニッシュまで持っていこうとします。このようなスイングをしてしまうと、クラブは不安定な軌道になり、偶然でも期待しない限り、クラブがきちんとボールに当たりません。ゴルフクラブのような長い道具を、腕や手だけでコントロールすることは難しいのです。

 ゴルフスイングはいわば円運動です。クラブに円運動をさせ、クラブヘッドの重さによる遠心力を利用することで、安定した軌道を描かせます。クラブに安定した円運動をさせるために必要なのは、軸をしっかり安定させること。回転するモノの中心がフラフラしていては、回転が不安定になってしまいます。そして、軸を安定させるために重要な概念が、「コア」の存在です。

 コアとは、重心(センター・オブ・グラビティ)のことです。東洋的には「丹田(たんでん)」と呼ばれ「ヘソ下3寸」ともいい、おヘソから3寸(約9cm)下にあります。このコアを安定させることが、軸の安定、さらにはスイングの安定につながります。ゴルフスイングでは、このコアがとても重要なのです。

 ヒモの片方の端に小さなおもりを付け、反対側の端っこを手で持ってグルグル振りまわす動作を想像してください。手元の小さな回転によって、おもりが付いた側の大きな回転運動を生みだしています。このとき、手元は小さな回転運動をしているものの、その位置はほぼ一定です。この動きは、ゴルフスイングの基本動作と同じです。先に付けたおもりがクラブヘッド、ヒモが腕とクラブシャフト、そして手元がコアに当たります。

 このとき、ヒモ自体は何もしていません。おもりと手元をつないで「力を伝えている」だけです。ゴルフスイングも同じで、腕自体は何もせず、コアの小さな回転によってクラブヘッドに大きな回転運動を生み出しているのです。では腕や手の役割は何でしょうか?

 腕や手の役割、それはクラブの動きを「感じ取る」ことです。ゴルフスイングでは、クラブと体とが、お互いに協調し合って動くことが大切です。クラブの動きを感じ、その動きが把握できて初めて、最大限のパワーが発揮できるのです。

 特にグリップは、クラブと体との唯一の接点です。上半身の力を抜き、リラックスさせながらグリップの感覚を研ぎ澄まし、クラブの重さやクラブの動きを感じ取りましょう。肩や腕、グリップに力が入ると、この感じ取る能力が発揮できません。

 ここで一度整理します。ゴルフスイングで大切なのは、クラブヘッドの回転運動によって生じる遠心力と慣性力を十二分に発揮させ、そのパワーをしっかり引き出すことです。これでクラブの動きは安定し、ボールをコンスタントに飛ばせるのです。

(1)ゴルフスイングは、回転運動である
(2)その回転運動は、コア(重心)によって生み出される
(3)コアとは「ヘソ下3寸」、丹田(たんでん)である
(4)コアから発せられた回転運動は、ボディー→肩→腕→クラブへと増幅しながら伝わる
(5)クラブヘッドから生じる遠心力と慣性力が、大きなパワーを生み出す
(6)腕は力を入れず、ボディーターンとヘッドに生じる遠心力と慣性力に任せる
(7)このときの腕と手の役割は、クラブの動きを「感じ取る」こと

ゴルフスイングを会社組織に置き換えてみると……

 さて、ゴルフスイングの基本原理を十分ご理解いただいたところで、このスイング原理を会社組織に置き換えてみましょう。

 ゴルフスイングの中心、そしてスイングのパワーの源であるコアは、会社でいえば社長です。社長は会社の理念や方針を明確に打ち出し、中長期的な戦略を立て、会社を引っ張っていかなければなりません。理念がはっきりしていなかったり、方針がコロコロ変わったりしていては、社員はどう行動してよいか分からなくなってしまいます。ゴルフスイングでも、コアがブレてしまってはスイングが不安定になり、ナイスショットは期待できません。これと同じように、社長は決してブレてはいけないのです。

 勘のいい読者の方は、もうすでに気づかれたと思いますが、このときのクラブが最前線で仕事をする一般社員です。管理職は、ゴルフスイングにおける、腕や手といえるでしょう。腕やグリップには、無理に力を入れてはいけません。コアからクラブへ、しなやかに推進力を伝えることこそ、スムーズな円軌道を描いてボール(目標)をしっかり飛ばすパワーにつながります。

 管理職は、ゴルフのスイングで腕や手がクラブの動きを「感じ取る」のと同様に、部下の働きを常に把握し、その能力を存分に発揮できるようサポート役に徹することが大切なのです。

 時に部下は誤った動きをしてしまいます。そのようなとき、管理職はどうすれば良いのでしょうか。管理職の権限で、無理やり抑えつければ良いのでしょうか。こうしたポイントを、次回は解説します。

執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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