ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
ゴルフというスポーツには、他のスポーツにはないある特徴があります。それは、ライバルを応援するという要素です。例えば、同伴プレーヤーが林に打ち込んだら一緒に探したり、良いプレーをしたら「ナイスショット!」と声を掛けたりします。また、相手が嫌がることや、プレーの妨げとなるような行為は絶対にタブーです。
一方、他のスポーツ、特に点を取り合うスポーツにおいては、競う内容こそ異なりますが、基本的にはいかに相手に不利なことをし、自分が有利にゲームを進めるかを競います。テニスならば、相手が打ち返せない所にボールを打ち、相手のミスを誘い、自分に有利なシーンをつくっていきます。試合中に、相手のプレーを手助けしたり、プレー中に相手のプレーを喜んだり、たたえたりすることはないでしょう。
その点でゴルフは、加点を競う足し算のスポーツではなく、ミスを減らして少ない打数を競う引き算のスポーツです。だからこそ、お互いを励まし合う心が生まれるのかもしれません。
このようにゴルフは、相手も良いプレーができるよう計らいつつ、自分も最高のプレーをしようと努力するスポーツです。そして時には、対戦相手をも応援するスポーツといえるでしょう。
またゴルフには、自分とは全く関係のない後続組のことも配慮して行動するという一面もあります。自分が打った後のバンカーをキレイにならしたり、ターフ*1をディボット*2に戻して目土*3したりする行為などがそれに当たります。これらの行為は決して自分のプレーのためにやることではなく、後続組やコースのメンテナンスを考えてのものです。
これらもろもろの行動を考えると、他者を思いやるスポーツがゴルフ、ともいえます。ラウンドしているゴルフプレーヤーは自身のプレー以外に、同伴者や後続組、コース全体にとって何が好ましいかを常に念頭に置いて行動することが求められているのです。
*1 ターフ:ショットで削り取った芝生
*2 ディボット:ショットでターフを取ったことでできた穴
*3 目土:ディボットを砂で埋めて修復すること
ゴルフのように、自分のことだけでなく全体にとって何が最適なのかを考える行動習慣は、ビジネスにおいてとても大切です。自分のことばかり主張したり、自分優先で物事を考えたりしていると、必ず何らかの弊害が生じます。そうなると、同僚や部下はもちろん、取引先からも信頼されなくなるでしょう。
自分のグループや部門のことだけでなく、会社全体における「最適」を考え、さらには自社が属する業界やそれを取り巻く社会にとって好ましい姿は何かを考えて行動すること。それができたなら、上司や経営陣からも信頼され、財産ともいえる貴重な人材だと認められるに違いありません。
現在の私の立場に置き換えて説明してみましょう。
私が代表を務めるゴルフハウス湘南という会社は、ゴルフスクールを経営する会社です。ゴルフ業界に身を置いていますので、自社の利益のみを考えるのではなく、ゴルフ業界全体にとって何が好ましいのかを考えて活動しています。
例えば、弊社が今取り組んでいるのは、「ゴルフと医療との連携」です。
ゴルフスクールでは、共通のミッション「ゴルフを通じて、より多くの人々に健康で豊かな生活を送っていただく」を掲げ、ゴルフインストラクターと医療従事者との両輪で、ゴルフを楽しむ人たちの健康増進を図り、末長く元気なゴルフ生活を送っていただくためのサービスを提供しています。
解剖学や生体力学など、フィジカルトレーナーに負けない知識を習得したゴルフインストラクターが、お客様の身体能力に応じた適切なレッスンを行い、指導し切れない領域を医療従事者がサポートする、といった取り組みです。
これらのサービスは、ゴルファーの引退年齢を引き上げ、ゴルフ人口の減少に歯止めをかけることで、ゴルフ業界全体が活性化することを望んでのことなのです。
自分のことだけではなく社会全体の最適化を考えて行動することは、ゴルフに限らずスポーツ界全体、また、ビジネス観点からも取り組まなければならないテーマだと考えています。
――ゴルフプレーヤーの話に戻りましょう。
先に回っているプレーヤーが後続のためにバンカーをならしたり、ディボットに目土したりしてくれるからこそ、次にプレーする自分も良いコンディションでプレーできているのです。それを思えば、快く同じような行動が取れるはずです。人を励ましたり応援したりするマインドは、己の心をフロー化し、己のパフォーマンスを高めます。
仮に自分が打った跡のバンカーをならさず、そのままプレーを続けたとしたら、きっとそのプレーヤーは心がノンフローに陥り、その後のプレーの質は低下することでしょう。つまり、全体最適を考えた行動は、巡り巡って自分のためになるのです。
では、全体最適を考えるにはどうすればよいでしょうか?「鳥の目」を持って行動することです。「鳥の目」とは、高い所から全体を見渡す目のことです。
仕事のシーンにおいては、自分の今のポジションより1つ上のポジションに身を置いたつもりで、物事を考えてみるとよいでしょう。例えば、課長なら部長の立場、部長なら社長や会社役員の立場に立って考えるのです。そうすれば、全体最適にはどうすべきかが見えてきます。特に若い社会人の方には、そのようなクセ付けをしてほしいと思います。
執筆=小森 剛(ゴルフハウス湘南)
有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。
【T】
ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」