ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
「パソコンは仕事で使っているけれど、ITはよく分からない」というIT初心者の社長にも理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回は無線LANの通信速度の説明に出てくる「IEEE(アイ・トリプル・イー)」だ。
「社長、社員のパソコンの調子が悪くなっています。社員から不満の声がすごいんですよ。責められて私もつらい……。これを機に、わが社もノートパソコンと無線LANを入れましょう」(総務兼IT担当者)
「まだ使えるだろう」(社長)
「もう無理です。ノートパソコンのカタログを見てたら、最新のIEEE規格なら無線LANの通信速度がすごく速いらしいです」
「君、あごの調子が悪いのか。アイイーーってどうしたんだ」
「あごの調子よりもパソコンの調子が悪いんですよ。ノートパソコンと無線LANにすれば、ごちゃごちゃの配線がなくなりますし、最新のIEEE規格対応なら、自分の席以外でも通信速度を気にせずパソコンが使えるようになります」
「君のあごのほうが気になるな」
「アイーって言ってるのは、ケーブルなしで通信できる無線LANの規格のことですよ。英語のアイ(I)が1つ、イー(E)が3つで、IEEEです」
「イーが3つも並ぶのだから、きっとイーんだろうね」
社内ネットワークの高速・広帯域化が進み、大容量のデータを手軽にやり取りできるようになっています。オフィスに高速通信が行える無線LANとノートパソコンを導入し、社内のあらゆる場所で働ける環境を整備した企業も増えています。今回は、無線LANのカタログなどに記載されているIEEEって何?という疑問に答えます。
Q IEEEとは何ですか
米国電気電子学会(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)のことで、Eが3つ並ぶことから略してIEEE(アイ・トリプル・イー)と呼ばれています。世界中から電気・電子技術分野の技術者が集まり、通信やコンピューターなどの規格を定めている学会です。国際標準の規格として採用されるケースが多いため、IEEEが定める規格は世界中の注目を集めています。
Q IEEEと無線LANの関係を教えてください
無線LANはIEEE802.11の名称で規格化されています。使用する周波数帯と通信速度によって規格が異なります。無線LANのカタログや説明書を見ると、IEEE802.11a、11b、11g、11nといった文字が記載されています。
11a、11g、11nとアルファベットが下がるにつれて、通信速度が高速化します。2014年にはさらに高速な11acが実用化され、今後は超高速な11axが市場に投入されるなど、無線LANは高速化が進んでいます。
Q 無線LANのメリットは?
無線LANは親機となるアクセスポイント(AP)と、パソコンに装着する子機(無線カード)で構成され、いずれもIEEEの通信規格に準拠しています。現在はノートパソコンやタブレット、スマホにも無線LANの機能が内蔵され、手軽に無線通信が行えます。
メリットは有線LANのように通信ケーブルがないため、配線に制約されずに仕事が行える点です。例えば会議室にノートパソコンを持ち込み、会議資料を保存したNASへ無線LANでアクセスすれば、紙の資料を印刷せずにペーパーレス会議が実現できます。
また、タブレットをオフィス内で利用する場合、無線LANが利用できる場所であればデータのやり取りやインターネットの閲覧などが行えます。ノートパソコンの操作は苦手という社長も、タブレット端末で経営情報を参照できるようになります。無線LANで働き方を変えられるのです。
Q 無線LANに注意点はありますか
セキュリティです。無線LANにはデータ暗号化などの機能が標準で用意されています。しかし、電波が届く範囲であれば、悪意のある第三者が不正アクセスをするリスクがないとはいえません。そこで、オフィスのネットワークに接続できる端末をあらかじめ登録し、登録外の端末はアクセスを制限する仕組みを導入してセキュリティ強化を図るべきです。
無線LANを快適に利用するには、通信速度低下の原因となる電波干渉を防がないといけません。オフィス内を移動しても電波が途切れないように、オフィスの面積や端末数などによって環境のつくり方が変わります。導入の検討時にネットワークの専門家に相談するといいでしょう。
「社長、IEEEの通信規格もいろいろあり、どのタイプの無線LANがわが社にイーのか、選択に迷ってしまイーそうですね」
「何言っているんだ。イーものを選んでわしに提案するのが、君の役目じゃないか」
「そうですよね。無線LANだけでなく、ノートパソコンやタブレットも新調するとなると、IT予算が……」
「君、うちもIEEEでいこう。相(I)見積もりで、いー(E)ちばん、いー(E)ものを、いー(E)つか入れよう」
「社長、入れるつもりないですね……」
執筆=山崎 俊明
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