ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
カタカナや英略字ばかりのIT用語。もっと分かりやすくならないの、と言ってしまうIT初心者の社長もIT用語が理解できる本連載。今回は、身近な課題である「ペーパーレス」だ。
「しまった!」(総務兼IT担当者)
社長に説明するために会議資料を作成した総務兼IT担当者。報告書の中にミスを発見したものの、会議の時間が迫っており、印刷し直して差し替えられません。
「社長、会議に入る前に提案があります。うちもペーパーレス会議にしませんか」(総務兼IT担当者)
「何だ、急に!ペーパーがどうしたって。トイレで紙詰まりでもあったのか」(社長)
「違いますよ。コードのないコードレス、砂糖を入れないシュガーレス、紙を使わないペーパーレス。印刷資料なしに会議をするのがペーパーレス会議です」
「資料なし?それでどうやって会議をするんだ。さては、売り上げ目標を達成できなかった資料を隠そうとしているな」
「ギクッ」
「ほら見ろ。それで資料をトイレに流して、揚げ句の果てに詰まったんだろ」
「正直に言うと、資料の数字を間違えたんです。それを20部印刷してしまって……。でもペーパーレスにしたら、たとえ数字を間違ってもすぐに直せて会議に臨めるんですよ」
「ペーパーとトイレと会議、いったい何の関係があるんだ。ちゃんと説明しなさい」
ペーパーレス会議は、パソコンやタブレットで会議資料のデータを見て、紙の資料なしに会議を行うものです。わざわざ紙の資料を印刷、配布する必要がないので、印刷コストの削減や業務の効率化に効果があります。
また、資料データを見られるパソコンやタブレットがあれば、参加者は本社・会議室に集まらなくても、営業拠点など離れたところから会議に加われます。移動時間の削減による働き方改革も可能です。
Q ペーパーレスの利点は?
会議で紙を使わないメリットはいろいろあります。用紙代やプリンターのインク代(トナー代)のコスト削減に加え、印刷資料をとじる手間がなくなるため、業務効率化が可能です。また、プレゼンテーションソフトなどで作成した資料を紙に印刷する場合、紙の無駄を減らすため、1枚に2分割や4分割して印刷する場合があります。ペーパーレスならパソコンやタブレットで資料を閲覧するため、分割は不要です。資料の文字や図も見やすくなります。
資料データは会議参加者がアクセスできるサーバーに置いておきます。サーバーの資料データを更新すれば、参加者は常に最新の内容を見られます。会議直前に数字のミスに気付いた場合も、サーバーの資料データを修正するだけです。紙のように印刷して差し替える必要はありません。
Q ペーパーレス会議には何が必要ですか
パソコン(できればノートパソコン)かタブレットとペーパーレス会議システムなどが必要です。ペーパーレス会議システムは、参加者の認証機能が付いていたり、紙の資料のようにコメントを書き込んだりできるタイプもあります。また、会議終了後、参加者の端末に資料を残さない機能もあります。
Q 会議のほかに使い道はありますか
営業活動のペーパーレス化に活用できます。営業活動で取引先を訪問する際、いくつもの製品カタログ(紙資料)の持ち運びは大変です。ペーパーレス会議の仕組みを活用すれば、取引先でタブレットから資料データを参照して製品特徴を説明できます。このほか、マニュアル資料をデータ化し、現場で機器修理やメンテナンスを行うときに資料を参照する使い道もあります。
Q ペーパーレス会議の注意点はありますか
ペーパーレス会議は資料の閲覧やダウンロードに制限を設けたり、パスワードを設定したりして、セキュリティも高められます。ただし、ネットワーク環境に留意する必要があります。ノートパソコンやタブレットを使って社内でペーパーレス会議を行う場合、資料データを保存しているサーバーにアクセスするためのネットワーク環境が必要です。会議の参加人数が多い場合、快適に会議を行うためにはネットワーク環境の見直しが必要になるかもしれません。どんな接続方法が適切か、ネットワークに強いITサービス事業者に相談するとよいでしょう。
「社長、ペーパーレスのメリットを分かっていただけましたか。導入すれば会議もスムーズになるし、紙代、インク代、会議参加のための交通費も削減できるんです」(総務兼IT担当者)
「うん、資料の印刷など、会議を準備する君の仕事が楽になるのは分かった。ところで君が数字を間違えた資料はもう直したのかね」(社長)
「まだです……」
「よし!今日の会議はペーパーレスでいこう。会議資料なんて要らん。久しぶりに社訓100カ条をみんなで唱和するぞ!」
「え、あの2時間ぶっ続けで声を張り上げる100カ条ですか……」
会議室。開始時間なのに社長と総務兼IT担当者しか集まっていません。
「おい、どうしたんだ?誰も会議に来ないじゃないか」(社長)
「みんなトイレの個室にこもっているようです」(総務兼IT担当者)
「じゃあ早く来るように、ノックでもしてきたらどうだ」
「それがノックしても駄目なんですよ。紙(ペーパー)はあってもレス(応答)がない」
執筆=山崎 俊明
【MT】
脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」