ニューノーマル処方箋(第64回)
ランサムウエアがビジネス化。「RaaS」の脅威
新しいシステムを覚えたと思ったら次は生成AI。最新技術についていくのは一苦労、そんなIT初心者の社長にもITキーワードを分かりやすく解説する本連載。今回は、学び直せばきっとITの理解にも役立つ「リスキリング」だ。
「社長、商工会からリスキリングの案内が届いています。社長も参加してみませんか」(総務兼IT担当者)
「リスクだって。何か会社のリスクに関する説明でもあるのか」(社長)
「リスクではなくリスキリングです。プログラミングやAI活用など、業務に役立つ新しい技術やスキルを学ぶことです。経営にも役立つと思いますよ」
「スキルと言われても、何がどう役立つのか、いまいちピンとこないなぁ」
リスキリングとは、新しい知識や技能を習得するために学び直すこと。社会のDX化、AIやIoTなどの技術革新が進み、デジタルスキルを有する人材の育成が世界的に課題とされています。日本でも厚生労働省や経済産業省がリスキリングへの助成事業を始めるなど、新たな取り組みが始まっています。
Q リスキリングを推進するメリットは何でしょうか。
技術革新や労働環境の変化によって生じた人材の偏りを平準化できることが挙げられます。例えば、バックオフィス業務や生産現場のデジタル化によって、今より少ない人員でも業務が行えるようになります。一方で、デジタル人材をはじめとした専門職は人手が足りないため、社員に新たなスキルを習得させ、より多くの人材を配置する必要があります。社員にとっては新たなスキルを習得できればキャリアアップにつながるため、企業と社員の双方にメリットがあると言えます。
Q リスキリングにはどんなものがありますか。
具体的には語学やプログラミング、デザイン、データ分析といった職種転換に関するもの、プレゼンテーションやマネジメント、コミュニケーション能力など、ビジネスパーソンとして不可欠な能力を磨くものなど、その種類は多岐にわたります。
学習方法は専門学校や大学で行われる講座への参加や外部講師によるセミナー受講など、対面での学習に加えてオンラインでの学習もあります。国の助成・補助が受けられる場合もありますので、学びたい内容に合わせて検討するとよいでしょう。
Q リスキリングの留意点はありますか。
リスキリングは社員の能力を引き出し、組織の成長や利益の最大化につなげるための戦略と言えます。社員に対しては学習時間の確保や受講費用の支援といった学習環境の整備に加えて、学んだことを業務で生かせるような仕組みづくりに留意する必要があります。社員が今以上に活躍するためにはどんなスキルが必要なのか、身に付けたスキルをどのように生かすべきなのか、経営陣や管理者はよく見極めることが重要です。
学習時間を確保するには、社員がどのような働き方をしているのか把握することが先決です。業務内容を可視化できるツールを活用すれば、効率化すべきポイントが特定できます。
「社長、このリスキリング講習会は経営者のためのAI活用がテーマみたいです」 (総務兼IT担当者)
「AIには関心があるんだが、この年になって新しいことを勉強するのは大変だし、気が重いな」(社長)
「新たな挑戦に年齢は関係ありません。社長がリスキリングに取り組めば、社員のいい手本になります」
「よし、ではエーヤーと気合を入れてAIを学ぶとするか」
執筆=山崎 俊明
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脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」