ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
経営とITは切っても切れないほど密接な関係といわれる。けれど、なかなか理解できない。そんなIT初心者の社長にも理解できるように、ITキーワードを解説する本連載。今回は雲をつかむような話。身近になった「クラウド」だ。
「社長、社内で運用しているメールシステムが更新を迎えるので、そろそろクラウドに変えませんか」(総務兼IT担当者)
「クラいだと? 確かにわが社は節電に取り組んでいるからオフィスはちょっと暗いかもしれん。でもメールは関係ないだろう」(社長)
「社長、オフィスが『暗い』なんて言っていませんよ。クラウドはIT事業者が提供するサービスです。メールやファイル共有などを、自社でシステムを持たずにサービスとして利用するんです」
「君の話は雲をつかむようでよく分からんが、クラウドで会社が明るくなるなら、考えてみるか」
クラウドは、通信事業者やIT事業者がデータセンターを利用して提供するサービスの総称です。自社でシステムを持たずに、さまざまなインフラやアプリケーションをサービスとして利用できます。メリットは「持たざる経営」の実現です。システム導入を検討する際、クラウドの利用を第一に考える「クラウドファースト」という言葉もあるほど、クラウド利用は一般的になっています。
メールシステムを例にすると、従来は機器を自前で用意し、システムを構築・運用していました。クラウドであれば、事業者のメールサービスを月額料金で利用できるようになります。
社外にあるデータセンター上のアプリケーションなどを、ネットワークを通じて利用する
Q クラウドは在宅勤務に役立ちますか
クラウドを利用しなければ、在宅勤務が進まないといっても過言ではありません。働き方改革では、在宅勤務やモバイルワークといった社外で仕事をする機会が増えます。クラウドのファイル共有やグループウェアなどのサービスを活用すれば、隣にいなくても社員同士が連携しながら仕事を進められます。
テレワークに適したパソコンの導入・運用をサポートするサービスもあります。データをパソコン本体ではなく、クラウドに保存します。ですから、どこでもどの端末からでも自分のデータにアクセスしながら仕事が行えます。パソコン本体にデータを保存しないので、端末紛失時の情報漏えい防止やBCP対策として効果的です。
Q クラウドのセキュリティが心配です
クラウドが利用され始めた頃は、クラウドにデータを預けると「セキュリティが心配」という声も聞かれました。しかし、クラウド提供事業者は最新セキュリティ技術を駆使した対策に力を入れてきました。今は、自社で個別にセキュリティ製品を導入・運用するよりも、クラウドの方が安全という認識が一般的になっているくらいです。
自然災害時に、自社システムであれば被害を受ける可能性が高くなります。強固なデータセンターで運用されるクラウドであれば、システムへの被害を軽減できるケースもあります。事業継続(BCP)の観点からも安全といえます。
Q クラウド導入の留意点を教えてください
利用するサービスの導入・縮小・廃止を、柔軟に行えるのがクラウドの利点です。自社システムと異なり、クラウドは運用管理の手間や機能拡張の負担がないといったメリットがあります。とはいえ、毎月サービス利用料がかかるため、長期間利用すれば、自社システムより割高になる可能性もあります。自前のシステムとクラウドの、どちらが業務に適しているのか比較検討するとよいでしょう。また、クラウドサービスは、インターネットを介して利用するのが一般的です。ネットワークの再検討が必要になります。
「社長、クラウドがどんなものか、納得していただけましたか」(総務兼IT担当者)
「在宅勤務を進められるなら、今の時世にぴったりだな。でも、これで社員が明るくなるのか」(社長)
「クラウドにすれば、社員が仕事をしやすくなって明るくなること間違いなしだと思います」
「なるほど、社員一人ひとりが明るくなるなら、その分、オフィスの電灯の明るさを落としても大丈夫だな」
「そうですね。(心の声――そんなことを言ってると、社員から、しっぺ返しをくらうど!)」
執筆=山崎 俊明
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