ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
経営にITが大事なことは理解しているが、社員に任せ切りでよく分からない。そんなIT初心者の社長も理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回は、他人任せではいられない、アカウントの乗っ取りだ。
「社長、大変です。ネットで発信している当社のSNSのアカウントが何者かに乗っ取られました」(総務兼IT担当者)
「何!!誰かが株を買い占めて、わが社を乗っ取ろうとしているのか」(社長)
「違いますよ。うちは株式を公開していないじゃないですか。会社の乗っ取りではなくて、誰かがSNSのアカウントを乗っ取って社長はケチだと中傷しているんです。SNSの担当者に聞いたら、そんな投稿はしていないそうです。間違いなくアカウントを乗っ取られたのかと……」
「ケチは本当のことだとしても、それはアカンな。早く、何とかしなさい」
メールやSNSなどのサービスを利用するための権利をアカウントと言います。ITサービスで氏名やメールアドレスなどの個人情報を登録すると、アカウントを取得できます。通常、ID、パスワードが発行されます。社内システムのログイン情報もアカウントと呼びます。
攻撃者がID、パスワードなどアカウント情報を盗み、ITサービスや社内システムを不正利用するのが「アカウントの乗っ取り」です。攻撃者はアカウントを悪用して顧客・取引先に偽のメールを送信したり、SNSで偽の情報を発信したりします。攻撃者が悪用するメールアドレスなどのアカウント情報は本物のため、偽メールや偽情報であるのに気付きにくいという特徴があります。
Q 企業でのアカウント乗っ取りのリスクは何でしょうか
攻撃者が社内システムの従業員のアカウントを乗っ取れば、社内システムや社外のクラウドサービスなどに保管された重要情報を盗み取れるようになります。従業員のメールアドレスから本人になりすまして取引先に請求書のメールを送り付け、攻撃者の口座に金銭を振り込ませる手口もあります。重要情報や金銭が奪われるリスクだけでなく、顧客・取引先に損害を与えて自社の社会的信用を失うリスクもあります。
Q SNSアカウント管理の注意点を教えてください
いまやSNSを使って情報発信する企業は少なくありません。このSNSアカウントが攻撃者に乗っ取られると、意図しない偽情報が発信されたり、拡散されたりする恐れがあります。乗っ取りによって偽情報が広まれば、対応には膨大な手間がかかります。
SNSの公式サイトを装った偽のサイトにログインさせてアカウント情報を盗み取り、パスワードを改ざんしてサービスを利用できないようにする手口もあります。SNSにログインする際、公式アプリを利用してアクセスするといった注意が必要です。
Q アカウントの乗っ取りを防ぐにはどうすればよいでしょうか
アカウント情報のID、パスワードをしっかり管理しましょう。パスワードはできるだけ複雑にする、複数サービスでのパスワードの使い回しはやめる、あまり利用していないサービスのアカウントは削除するといった対策が必要です。
また、ID、パスワードに加え、1回のみ有効なワンタイムパスワードを組み合わせる多要素認証も効果があります。アカウント乗っ取りの防止には、セキュリティ対策の強化が欠かせません。どんなセキュリティ対策が自社に効果的なのか、専門家に相談するといいでしょう。
「社長、アカウント乗っ取りは何とか収拾しました。すぐに担当者にパスワードを変更させました。同じパスワードを他のITサービスや社内システムに使っていないかも確認しました」(総務兼IT担当者)
「ワシもSNSを始めようと思っていたが、何だか心配になってきた」(社長)
「任せてください。社長のアカウントが乗っ取られないように、社長のスマホのセキュリティ設定を強化します。ですから会社のセキュリティ対策も強化しませんか?」
「はっ、灯台下暗し!ワシがケチだと知っているのは、君しかいない。君が投稿したのではないか」
「社長がケチなのはみんな知っていますよ……」
執筆=山崎 俊明
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