脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」(第14回) ストレージで体のぜい肉を減らす?

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公開日:2018.10.24

一度聞いただけではなかなか理解できないIT用語。そんなIT初心者の社長にも分かるように、難解なIT用語を解説する本連載。今回のテーマは「ストレージ」だ。

「社長、ファイルサーバーのデータが一杯になってきたので、社内ストレージの増設かクラウドストレージを検討しませんか」(総務兼IT担当者)

「ストレー……?いまさら君に言われなくてもやっておる」(社長)

「やっておられる?ストレージを?」

「体のぜい肉を減らそうと、風呂上がりにいつもストレッチしておるぞ」

「ストレッチじゃありませんよ。会社のデータを保管するストレージのことですよ。最近はストレージの装置を買わなくても、クラウドに預けられるようになっているんです」

「ストレッチとストレージ。何だかややこしいな。わしのおなかのぜい肉がスリムになるなら、何でもいいぞ」

ストレージはデータの保管場所

 ストレージには保管や格納という意味があり、IT分野ではデータを保管する装置・仕組みをストレージと呼んでいます。ストレージがあれば社員はデータを共有しながら、効率的に仕事ができます。業務用データを格納するストレージを社内に置いて利用する場合もあれば、ストレージの機能をネットワーク経由で利用する「クラウドストレージサービス」を活用する場合もあります。

Q ストレージにはどんなタイプがありますか

 オフィスで利用するストレージにはいくつかの種類があるので、データの保護を考慮して最適なものを選択できます。

 価格が手ごろなのは、パソコンに外付けするHDD(ハードディスク)です。家電量販店などで手軽に購入できるものの、デスクから落としたりすると、衝撃などによる故障でデータが使えなくなるリスクがあります。業務で利用する重要データを単独で保管する場所としてはあまりお勧めできません。

 オフィスに設置する代表的なネットワークストレージといえばNAS(ナス)です。データ保管の専用装置として設計され、高い信頼性を備えています。社員は社内ネットワークを介してNASに格納されたデータを共有できます。

 一方、クラウドストレージサービスは、さまざまな事業者から提供されています。自社でストレージ装置を導入することなく、インターネットを介してクラウド上に保管されたデータを読み書きする仕組みです。

Q 社内設置とクラウド利用、それぞれのメリットとデメリットを教えてください

 社内に設置した場合は、ネットワークの遅延などによるパフォーマンス低下の影響を最小限にできると考えられます。ただ、基本的には社外から直接のアクセスは想定しません。また、保管できるデータ量や障害の影響を避ける二重化の仕組みなど、さまざまなストレージ機器と構成の中から、コストや機能が自社に合ったものを選ぶことができます。

 一方、クラウドは自社で装置を設置しないため、ストレージ装置自体の導入コストは抑えられる傾向にありますが、基本的にはクラウドの仕様に沿ってストレージを利用する必要があります。また自分の会社とは異なる場所(データセンター)にデータを保管することになりますが、言い換えれば、インターネットなどを経由してさまざまな場所からストレージにアクセスすることが可能です。かつ、保管するための容量は必要に応じて柔軟に増減できるのがクラウドのメリットです。クラウドストレージサービスの利用料金は使用するデータ容量などによって異なる場合がほとんどで、ユーザー1人当たり月額数百円から利用できるサービスもあります。

 コストだけでなく、社内利用なのか社外利用なのか、使うシーンやデータの重要性も考慮して最適なものを選びましょう。

Q ストレージのセキュリティは大丈夫でしょうか

 NASの中には、データの暗号化やウイルス対策などのセキュリティ機能を搭載した装置もあります。また、いつ、誰がNASを利用したのかログ(履歴)を取得する機能を備えたタイプであれば、不正利用の際の原因究明が可能です。「ログを取っている」と社員に伝えておけば、不正抑止にも効果的です。

 クラウドサービスでは、利用者の権限に応じたアクセス制御などで不正利用を防ぐ仕組みが一般的です。また、ストレージのデータを読み書きする際に、ウイルスが紛れ込んでいないかをチェックする機能を備えるサービスもあります。サービスによってはログを取得する機能も付加できます。

柔軟なら何でもいい?

「社長、社内ストレージとクラウドストレージのどちらがいいのか、迷ってしまいますね」(総務兼IT担当者)

「いつも強気の君らしくないね。もっと柔軟に考えたらどうかね。わしはストレッチを続けているおかげで、前屈もできるようになったぞ」(社長)

「そうか、社長、いいこと言いますね。クラウドなら柔軟に増設できますね」

「どっちでもいいが、ぜい肉はなかなか減らん」

「社長、ますますいいこと言いますね。クラウドにするにしろ、社内設置にするにしろ、要らなくなったデータのぜい肉を落とすのが先ということですか!」

「どうだ、わしの体重が1kg減るごとに予算を付けるというのは?」

「……減らないですよね?」

「失礼な!ストレージだけに、フトレーズ(太れーず)」

執筆=山崎 俊明

【MT】

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