ビジネスWi-Fiで会社改造(第49回)
テレワークでの通信障害対策を考えよう
サイバー攻撃は日々高度化し、セキュリティ対策はますます重要になりつつある。しかし、何から手を付ければいいのか分からない、IT初心者の社長にも分かりやすくITキーワードを解説する本連載。今回は、古典的な手口だが対策が難しいと言われる「インサイダー脅威」だ。
「社長、競合のA社で中途退職者による顧客情報の流出があったみたいです。インサイダー脅威に気を付けないといけませんね」(総務兼IT担当者)
「私の座右の銘は『コンプライアンス遵守』だ。不正な取引は絶対許さないぞ」(社長)
「おっしゃる通りですね。ただ、インサイダーは取引だけではなく、セキュリティ上でもリスクになり得ます。もし関係者が情報を漏らしたとなれば、会社の存続にもかかわります」
「そこまで言うなら、君はもう何か対策を考えているんじゃないか? よかったら聞かせてくれないか」
インサイダー脅威は、企業や組織の従業員、取引先などが業務で知りえた重要情報を外部に持ち出したり、故意に流出させたりすることです。機密情報を転売して金銭を得たり、会社への不満を抱えていたりと、その動機はさまざま。外部からのサイバー攻撃に比べ、内部不正対策は手薄になりがちで気が付きにくく、情報セキュリティの抜け穴と言えそうです。

インサイダー脅威は会社の信用問題にも大きく影響する
Q インサイダー脅威にはどんな種類がありますか。
インサイダー脅威は大きく分けると3つに分類されます。1つ目はメールの誤送信、外部システムの誤操作、外部媒体の紛失など、過失や不注意による情報漏えいです。2つ目は不正に入手した認証情報によるなりすまし、3つ目は関係者による機密情報の持ち出し、データやシステムなどの破壊です。
Qインサイダー脅威が深刻な理由は何ですか。
内部不正は多くの場合、業務で知り得た情報や人脈、業務上の権限などが用いられるため、被害に気付きにくいことが特徴としてあげられます。そのため対策が後手に回りがちで、被害の規模や損害が大きくなってから発覚することも珍しくありません。
また、過失や不注意によって発生する事案もインサイダー脅威となります。その結果生じた被害によって企業の社会的信用が失墜するリスクもあるため、十分な対策が必要です。
Q インサイダー脅威にはどんな対策が有効ですか。
まずは社内の情報セキュリティ規定を整備し、従業員へのセキュリティ教育や請負業者のセキュリティ体制チェックから始めましょう。ヒューマンエラーによるリスクを低減するため、雇用形態や部署、役職に応じて利用できるシステムやアプリケーションを制限するなど、厳格なアクセス権限も欠かせません。
また、社内での待遇や業務内容などに不満を抱える従業員がいる場合、故意によるインサイダー脅威のリスクが高まりやすくなります。適正な処遇改善やメンタルケアなどに加えて内部通報制度を導入することも必要です。
自社での対応が難しい場合、操作ログの取得やシステム・アプリケーションの利用制御など、インサイダー脅威への対策を支援するサービスもあります。どんな対策が自社にふさわしいか、知見のある事業者に相談することをお勧めします。
「インサイダー脅威のリスクについて、理解していただけましたか」(総務兼IT担当者)
「説明ありがとう。セキュリティ対策だけじゃなくて従業員の満足度向上も重要になりそうだな」
「確かに、従業員の満足度が上がれば働くモチベーションも上がり、リスクの低減と合わせて一石二鳥です」
「それはそうと、内部犯行とは言わないが、私が取引先からもらったお菓子をこっそり食べるのは止めてくれないか。必要なら配るから」
「ご存じだったんですか。あまりにおいしそうだったので、つい......」
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=山崎 俊明
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