ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
会社のITに関して「お金と口は出すけれど、内容は社員任せ」というIT初心者の社長にも理解できるように、ITキーワードを分かりやすく解説する本連載。今回のテーマはセキュリティ対策で効果が期待できる「ログ」だ。
「君、社長室にあった木彫りの置物を知らんか。あれがないと……ぶるるっ」(社長)
「寒いですか?空調の設定温度を変えましょうか」(総務兼IT担当者)
「出張に行くと言ったら、珍しくうちのカミさんからお土産を頼まれて……。買ってきたものの、なくしたとなるとカミさんから何を言われるか……ぶるるっ」
「それは何の置物で、どのくらいの大きさですか。いつ気付きましたか」
「手のひらに載るくらいの熊の置物じゃよ。1時間前にはあった」
「なるほど、密室ですね。最後にあと1つ、誰かと社長室で会いましたか」
「誰も社長室には来ておらん。ん?君、急に髪の毛をくしゃくしゃにしてどうしたんだ。かゆいのか?」
「気にしないでください。これが名刑事コロンボのスタイルなんです。社長、このヤマ(事件)、ミステリーマニアの私に任せてください!」
「君の刑事ごっこはいいから、早くわしの大切な置物を見つけてくれ」
「パソコンの操作ログのように、いつ、誰が、何をしたのかが分かれば、犯人が簡単に分かるのですが……。そうだ、熊だけに森のログハウスにでも逃げ込みましたかね」
「ロクな結果になりそうにないな……」
ログとは、パソコンやサーバー、ネットワーク機器、セキュリティ機器などの利用や動作の記録情報です。いつ、誰が、どんな操作をしたのかが分かるログを取っておけば、情報の漏えいや改ざんなどの問題が発生しても、ログを証拠に原因を究明できる場合があります。万一の情報漏えい時に説明責任を果たす上でも、ログは重要といえます。
Q ログは何に役立つのですか
主に2つあります。セキュリティ対策とIT機器の障害対応です。
例えば、社内システムに不正アクセスがあった場合、ネットワーク機器やセキュリティ機器のログを収集・分析すれば、不正アクセスの経路を突き止められる可能性があります。顧客情報などの流出が疑われる場合、パソコンの操作ログを見れば、いつ、どのパソコンで、どんな操作(ファイルの書き換え、送信、印刷など)が行われたのか確認できます。操作ログを確認することが、情報流出の原因究明に役立つ場合もあるのです。
一方、IT機器の障害対応では、機器内に蓄積されたシステムログを確認すれば、障害の原因を把握できる場合も少なくありません。ソフトウエアの設定変更、修正などで障害を回復できる可能性があります。
Q ログは社内の担当者でも扱えますか
パソコンやネットワーク機器などのログ情報は膨大な量になり、ITによほど精通した技術者でなければ、内容を理解して目的のログを見つけるのは難しいといえます。例えば、情報漏えいが発生すると、関連するすべてのログを調べなければなりません。問題のパソコンや機器を特定するだけでも大変です。
そこで、パソコンやサーバー、ネットワーク機器などのログを一元的に管理し、IT担当者が理解しやすい形式でログを表示するツールや、ログ確認などをまるごと任せられる運用保守サービスの導入を検討することも1つの方法となります。
Q ログは社員に知らせずに収集したほうがいいのでしょうか
何のログをどう収集し活用するのかについて、経営層、社員ともに理解を得ておくことが重要です。例えばパソコンの操作ログを取っていると伝えれば、社内のセキュリティ意識の向上も期待できます。また、さらなる意識向上をめざすためには、パソコンやネットワーク機器から収集したログの分析結果を社内で定期的に報告してもよいでしょう。例えば、ウイルスメールが社内ネットワークに侵入した場合、いつ、どの経路から侵入したのかを社内に伝えれば、社員は同じようなメールに気を付けるようになります。
操作ログは内部犯行の防止にもつながります。ログの収集、保管をきちんと行っている状況を社内に告知すれば、パソコンやシステムの不正利用を抑止する効果も期待できます。
「社長、ログの必要性を理解していただけましたか」
「ログの大切さは分かったけど、置物を盗んだ犯人はいまだ見つからんじゃないか」
「いや、ちょっと待ってください。犯人を見つけるためにこうして社長室に来ているわけで」
「さては君か!」
「いや、違いますって」
「君だろ!」
「いったん失礼します!わっ」
(出張カバンにつまずいて転ぶ。中から置物が転がり出る)
「あっ」
「おっ」
「社長、大事なものを出張カバンにしまったなら、そのことをログ(記録)に残しておいてください。記憶より記録です。さもないと、社長が何かなくすたびに、私が刑事コロンボのまねをしなければならないじゃないですか」
「さすが名刑事!コロンボだけに、ただでは転ばんな」
執筆=山崎 俊明
【MT】
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