脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」(第61回) 縁と円が大切――エンゲージメント

コミュニケーション

公開日:2023.01.11

 経営にITが不可欠なのは分かっているが、なかなか理解できないIT用語。そんなIT初心者の社長にも、分かりやすく理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回は、ITを使って効果を高められる「エンゲージメント」だ。

「社長、わが社も創業30周年になりますし、会社の活性化のためにエンゲージメントに取り組みませんか」(総務兼IT担当者)

「エンゲージメント?社内で誰か婚約でもしたのか。めでたいことだな」(社長)

「似ていますが、婚約ではありません。エンゲージメントは会社に対する従業員の信頼感や愛着心を意味します。会社と従業員がお互いに結び付きを強くして、共に成長しようという取り組みです」

「会社と社員との縁結びというわけじゃな。そういえば、ワシは結婚して35年になるが、かみさんとのエンゲージメントが心配になってきた」

会社と従業員が共に成長する

 エンゲージメントは婚約や約束、契約といった意味から転じて、関係性を強くするといった表現でも使われます。会社と従業員との関係性を向上させて共に成長をめざす従業員エンゲージメントや、会社と顧客との良好な関係性を維持してサービスを継続的に使ってもらう顧客エンゲージメント、投資家が会社との対話によって企業価値の向上を促す投資家エンゲージメントなどさまざまな分野でエンゲージメントが注目されています。

Q 従業員エンゲージメントが注目される理由は何ですか

 テレワークが浸透し、従業員がオフィスから離れた場所で勤務する中、会社への帰属意識を高めようとする動きがあります。また、転職市場が活性化し、能力の高い人材がより高い報酬とポジションを求めて転職することも珍しくありません。会社への求心力を高め、会社と従業員が共に成長できるような関係性を築くために、エンゲージメントが注目されているのです。

Q エンゲージメント向上のメリットは何でしょうか

 会社と従業員との信頼関係を深め、従業員がやりがいを持って仕事をすれば、モチベーションが高まります。従業員が成長するキャリア形成にもなり、優秀な人材の引き留めにつなげられます。従業員とのエンゲージメントが強い会社は、組織が活性化します。業績の向上につながる可能性もあります。

Q エンゲージメント向上の方法を教えてください

 会社の社会的存在意義や将来像のビジョンを従業員に浸透させる方法があります。仕事の意義が高まれば、モチベーション向上につながります。創業30周年といった節目の周年事業は、会社に対する従業員の思い入れを高めるチャンスです。

 エンゲージメント向上には社内の風通しのよさが欠かせません。上司も含め、従業員同士が日頃から緊密かつ手軽にコミュニケーションできることが、そのポイントです。コミュニケーション活性化のためにビジネスチャットが注目されています。コミュニケーションがよくなれば、エンゲージメント向上にもつながるでしょう。コミュニケーションツールの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

口先だけではないエンゲージメント

「社長、エンゲージメントを理解してもらえましたか。創業30周年の周年事業を企画して社内の求心力を高めましょう」(総務兼IT担当者)

「ワシも周年事業のことは気になっていたんだ。20周年の時には、お世話になった関係者を招いてホテルでパーティーをやったな」(社長)

「大人数のパーティーにするかはともかく、私がいい企画を考えますから、安心してください」

「君はいつも、口約束だけ。口先だけのエンゲージメントじゃないだろうな」

「絶対にやりますから、エンゲージメントの円(予算)をください」

執筆=山崎 俊明

【MT】

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