ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
群龍割拠の戦国時代、覇権と生き残りをかけて戦った武将の生き様には、その根本において現代のビジネスに通じるものがあります。混迷する現代社会にあって、戦国武将の戦略を学ぶことは、現状を打破して飛躍するための大きなヒントになります。
戦国時代の武将で最も人気があるのは織田信長でしょうか。そのドラマチックな生涯が人を引き付けるのですが、ビジネスや経営といった側面からみると、古い発想や行動を否定して、新しいものを創造し続けたイノベータ―でもありました。
1560年、駿河・遠江・三河を支配する今川義元が4万の大軍を率い尾張に進軍してきました。対する弱小大名の信長軍はわずか2500。ところが連日の勝利に湧く義元は軍を休めて酒盛り。信長は梁田政綱の配下によりこの報告を受けます。そして、おりからの豪雨の中、今川本陣を奇襲。虚をつかれた今川軍は動揺し、信長は劇的勝利を手にします。これが信長の名を全国に知らしめた桶狭間の戦いです。
1575年、信長・徳川家康の連合軍と武田勝頼との間に戦いが勃発します。最強といわれた騎馬軍団を擁する武田軍をどう破るのか。当時の鉄砲は火薬詰めに手間がかかり、連続で撃つことが困難。そこで信長は鉄砲隊を3組に分けるという戦法を採用。騎馬軍団を見事に撃破し勝利を収めました。
この2つは信長の小学生でも知っている非常に有名なエピソードです。問題はビジネスパーソンとしてこうした信長の天下取りから何を学ぶかです。信長の躍進を可能にしたのは、現在の企業経営にも通じる革新です。それは企業経営の3要素である「ヒト・モノ・カネ」、そして「情報」という多様な分野に及びます。
まずヒトの面でいえば人材活用の革新です。信長は能力主義によって人材を活用しました。それまで家臣の活躍の場は家柄や地位で与えられていましたが、飛躍するには能力が優れる新しい人材を活用する必要があります。信長は身分や氏素性などは気にせず、豊臣秀吉をはじめ有能な人物を積極的に登用。大きな活力を得て、強固な軍団に成長していったのです。
次はモノ。信長は最先端の技術を積極的に取り入れました。鉄砲の有効性に着目した第一人者で、織田軍はこの時期、世界的に見ても有数の装備数を誇りました。さらに大砲や鉄製の軍艦まで作戦に応じて展開しています。こうした新技術を活用するため、技術者の確保、保護にも熱心でした。最新テクノロジーの活用はビジネスにおいても不可欠です。
3番目はカネ。戦国時代、領地をどう治めるかも重要でした。従来は農業を基本とした統治でしたが、信長はそれだけでなく流通や工業なども活性化し経済力を強化しました。領地拡大と同時に、それらを結びつける流通経済を確立したのです。有名なのが楽市楽座。自由市場を開き、商品流通の拠点となる堺や大坂を支配しました。流通を支配すれば、敵の経済活動を封じ、自軍の行動を有利にできます。需要に応じて生産物を動かすことで、多大な利益を上げ、経済力を蓄えるのです。
最後は情報です。フロイスなど宣教師を大事にし、欧州の文明や政治体制、軍事力なども貪欲に吸収、世界の中の日本を認識しています。国内の情報収集にも力を注ぎ、大きなビジョンをもって天下統一に挑んだのです。
1582年、信長は明智光秀の謀反によって殺されますが、その生涯は常に常識にとらわれず、果敢に新しいものに挑戦するものでした。こうした姿勢こそがイノベーションを生み出し、時代を越えて組織を飛躍させる大きなエネルギーとなるのです。
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戦国武将に学ぶ経営のヒント