ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回) ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する

Wi-Fi スキルアップ

公開日:2025.02.07

 本連載の第31回で、文部科学省の「GIGAスクール構想」によりITリテラシーが底上げされ、教育現場ではネットワーク環境の整備が必要だと説いた。実際に多くの学校法人でビジネスWi-Fiの導入が広がっている。今回はどんな使われ方をしているのか、いくつかの事例を通して紹介する。独自の活用方法もあり、今後さらに活用領域が拡大しそうだ。

もはや常識になりつつある校内へのビジネスWi-Fi

 学校法人がビジネスWi-Fiを導入する目的は、多くの場合、タブレットなどを駆使した教育の実践にある。生徒一人ひとりにタブレットを配布し、個々の状況に応じた学習方法を選択できるようにする。指導側も、デジタル教材や学習進捗(しんちょく)管理ツールとして活用する。

 関西のある中高一貫の私立学校では、GIGAスクール構想に先駆けてICTを活用した学習の高度化に取り組んだ。多台数の同時接続が可能なビジネスWi-Fiを導入し、安定した通信環境を実現すると共に授業の資料をデータ化して、動画や音声を取り入れた密度の濃い授業を目指してきた。

 この学校ではタブレットの導入だけでなく、生徒が所有するデバイスの利用も認めている。授業では電子データや連絡事項のやり取りを目的としたチャットツールやクラウドサービスを導入し、多様な学習スタイルに対応したICT環境を整備している。また、東京のある中高一貫の私立学校では、自由な校風のもとで教員や生徒の自主性を生かせる学習用ネットワーク環境を構築した。早い段階から全教室にビジネスWi-Fiを導入し、オンライン学習にも対応する。

 上述した2校のように、進学校では自主的に学習できる環境を整備し、学力のレベルアップを図るケースが多いようだ。そのために、全校をカバーする高速なビジネスWi-Fiの導入は必須だろう。

学校の特色に合わせてビジネスWi-Fiを活用

 大学などでは独自の活用例も見られる。中部地方のある工業大学では、屋外でも速度と動作の遅延が少ないVPN機能を搭載したルーターなどを採用し、インターネットを利用して自動車の自動運転実証試験に取り組んでいる。コックピット側は高速で安定した高解像度の映像を投影、車両側は瞬時にそれに対応できる低遅延通信を実現した。

 同じく中部地方のある国立大学では、農学研究科のフィールド内の建物や施設にビジネスWi-Fiを導入し、屋外を含む広いエリアでのWi-Fi通信を可能にした。目的の1つは畜産の生産性を向上させる研究で、遠隔地から牧舎内の家畜の様子を観察するためだ。ビジネスWi-Fi導入後は、家畜が発情するタイミングを見逃さなくなったという。今後は広大な敷地内に設置されている太陽光発電パネルのモニタリングや農作物の監視などにも、ビジネスWi-Fiを活用していく予定だ。

 また、九州にある公立の農業系大学では、屋外でのロボット農機実習を可能にするため、全教室と農牧場全体をカバーする防じん防水性能を持つビジネスWi-Fiを導入した。有線LANの配線やモバイルWi-Fiルーターを持ち運ぶ必要がなくなり、教職員の負担も軽減した。同大学では畜産管理システムや温室モニタリングなどの運用も効率化された。映像による研修やオンライン講義への対応で実践的な実習が可能になり、ストレスなく農業を学べるようになったという。

 このように広大なキャンパスでのビジネスWi-Fiの導入は、遠隔地からの監視や運用を可能にするだけでなく、学生一人ひとりと教員や先輩とのコミュニケーションの活性化にもつながる。それにより学習スタイルも変わっていくはずだ。学びの進化の加速にはビジネスWi-Fiも一役買っているといえるだろう。

執筆=高橋 秀典

【TP】

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