ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
深刻な人手不足に悩む建設業では生産性の向上は待ったなしの経営課題だ。ICTを活用したオフィス業務の効率化だけではなく、建設現場で働く人を支援する環境やシステムの整備も必要になる。ビジネスWi-Fiを活用すると、どのように生産性向上を実現できるのだろうか。導入へのアプローチとそのメリットについて考えてみたい。
建設業界における経営課題は、少子高齢化による労働人口減少という問題にとどまらない。2024年4月から改正労働基準法が適用されると、建設業界でも「月45時間、年360時間」という労働時間の順守が求められるようになる。生産性向上のために残された時間は少ない。
多くの建設会社では、これまでもICTを活用した効率化や高度化に取り組んできたはずだ。他の業界とも共通する経理や人事、給与といった管理業務のシステム化だけでなく、CADによる図面作成のデジタル化や設計図面のオフィス内での共有など、建設業界特有の業務にもICTを活用している企業は増えている。
しかし、最も大きな問題は建設現場の効率化をどう実現するのかだ。人材不足が深刻でありながらアナログな作業が多く、ICTの導入自体が難しいとされてきた。どこからICT化を図るべきか分からないまま従来通りのやり方を踏襲している建設会社も多く、デジタル化が遅れているのが実態だ。
実作業のデジタル化は確かに難しい。建設現場で使えるロボットの開発も進んでいるが、どの建設現場でも使えるというものではなく、ロボット自体も高価なため、簡単には導入が進まないだろう。ドローンを使った点検作業の効率化も同じような段階にある。
そんな建設現場のICT活用の鍵となるのは、建設現場の作業者や管理者の負担を軽減するための手段を考えることだ。現実的なアプローチとしては現場からの報告業務など、本社とのコミュニケーション業務をICTで効率化すること。これにより実際に成果を上げている建設会社も増えている。
建設現場でICTを活用するための基盤となるのは、建設現場で利用できるデバイスの導入とデータを送受信するためのネットワーク環境の整備だ。デバイスとしてはタブレット端末やスマートフォンが利用できる。誰もが使いやすいインターフェースを備えている上、カメラも装備されており手軽に導入が可能だ。
ネットワーク環境としてはまずビジネスWi-Fiを導入したい。建設現場の事務所まで有線回線を引き込み、現場の必要な場所にアクセスポイントを設置する。電波干渉しないようにネットワークを設計すれば、大容量のデータを安定して高速で送受信でき、デバイスを操作する上でもストレスがない。ポータブルWi-Fiルーターなどで代用するという方法もある。
デバイスとネットワークを確保すれば、さまざまなアプリケーションが活用できる。導入されるケースが増えているのが、現場作業の進行報告書を現場のデバイスで作成する施工管理のアプリケーションだ。
施工管理アプリケーションは、デバイスで現場の進行状況を撮影して画面上の必要項目を入力すると報告書が作成され、送信するだけで報告業務が完了する。そのため現場作業終了後に本社などに戻って報告書を作成する必要がなくなり、現場の担当者の負担を大幅に軽減できる。
次に多いのが、現場と本社をカメラでつなぎ、本社にいる経験豊富な現場監督の指示を遠隔で受けるという活用方法だ。画面上で分かりやすく指示を伝えるためのアプリケーションもある。現場監督は同時にいくつもの現場を本社から監視できて、現場では的確な指示を受けながら作業が行える。知識や技術の継承という意味でも効果は大きい。
最近ではデバイスのカメラと設計図面を連携させて、拡張現実のような方法で指示を出せるアプリケーションも登場している。これは、カメラが撮影した現場の映像に設計図面からの指示を原寸大で映し出し、現場の作業者の支援を行うというものだ。
建設現場向けのアプリケーションは日々進化している。これらを活用して建設現場の生産性を向上できれば、人手不足や労働時間の問題も解決に結びつく。使い勝手の良いデバイスと安定した高速ネットワークの建設現場への導入が、その第一歩となるのである。
執筆=高橋 秀典
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ビジネスWi-Fiで会社改造