ビジネスWi-Fiで会社改造(第10回) 安心して使ってもらう―セキュリティ強化作戦

Wi-Fi スキルアップ

公開日:2022.07.20

 柔軟なオフィスレイアウトを可能にし、テレワークではシームレスな働き方を実現、お客さまにも利便性を提供できるビジネスWi-Fi。しかし、ワイヤレス接続であるためセキュリティ上のリスクも存在する。ビジネスWi-Fiだからこそ留意しなければならないセキュリティリスクはどこにあり、どんな対策が必要なのか。今回は、ビジネスWi-Fiのメリットを安全・安心に享受するために、Wi-Fiにおけるセキュリティ上の脅威とその回避策を解説する。

セキュリティ強化の第一歩は最新の「WPA3」の導入

 本連載でこれまで取り上げてきたように多くのメリットがあるビジネスWi-Fiだが、ワイヤレスであるがゆえに、有線LANに比べてセキュリティ面での脆弱性があるのも事実だ。ビジネスWi-Fiだからこそ考えられるセキュリティリスクは大きく2つある。データを盗聴されるリスクと、外部から侵入される不正アクセスのリスクだ。

 盗聴されるリスクへの対策の第一歩は暗号化だ。連載の第3回でも解説したように、Wi-Fi環境におけるセキュリティは「認証方式」と「暗号化方式」の組み合わせによって確保される。

 一定時間ごとに暗号鍵が自動変更される認証方式「WPA」の最新の暗号化規格が2018年6月に発表された「WPA3」だ。パスワードが漏えいしても通信内容を暗号化して解読を防ぐ機能や、誤ったパスワードでのログインが繰り返されるとログインをブロックする機能を備える。

 Wi-Fi6からこのWPA3に対応しており、最新機器の多くで採用され、最も高いレベルのセキュリティ強度を実現する。それ以前のWi-Fiが対応している「WPA2」もそれなりの強度を有しているものの、脆弱性も指摘されている。より安心を手に入れたいならWPA3に対応した機器の導入をお勧めする。

 もう1つのセキュリティリスクである不正アクセスへの対策は、ユーザー認証の強化が有効だ。通常、Wi-Fiにアクセスする際には、接続したいアクセスポイントのSSIDを指定して、Wi-Fiルーターのパスワードを入力する。このパスワードはSSIDごとに共通であり、多くの人が同じパスワードでビジネスWi-Fiを利用している。

 この状態でパスワードが漏えいすると誰でもアクセス可能になり、ビジネスWi-Fiのセキュリティ対策としては十分とはいえない。そこで検討したいのが、社員ごとにIDとパスワードを発行して個別に認証を行うID/パスワード認証の導入だ。

 万が一社員の誰かのパスワードが流出した場合には、該当するアカウントだけを利用停止にすれば被害を最小限に抑えられる。ただし、この方法ではIDとパスワードさえ分かれば、誰でもアクセスできることに変わりはない。例えば端末を紛失したり、盗難にあったりすれば、その端末から不正にアクセスされる可能性がある。

セキュリティ向上に社員教育は欠かせない

 こうしたトラブルを防ぐため、もう一段セキュリティを強化できるのが、電子証明書を利用したデバイスごとの認証だ。従業員がアクセスするデバイスに電子証明書を導入し、電子認証が確認できたデバイスだけにアクセスを許可する方法である。

 この方法であれば、許可を得ていないデバイスからのアクセスを防ぎ、デバイスの紛失や盗難があってもそのデバイスを排除すればよい。専用サーバーの構築や運用などが必要になり導入へのハードルは高いものの、セキュリティレベルを強化できる。

 上記の対策は、ビジネスWi-Fiの導入を主導する部署の検討課題だが、会社としてセキュリティレベルを上げるためには従業員教育もしっかりやっておく必要がある。テレワークが広がってきた近年では、自宅のWi-Fiを利用して社内のシステムにアクセスするケースも増えている。自宅のWi-Fi機器に脆弱性があれば、不正アクセスされる可能性もある。

 社員の自宅に関しても、ルーターのIDやパスワードを初期設定のままではなくオリジナルのものに変更したり、使用するデバイスを登録しておき、それ以外のデバイスは接続できないようにしたりする機能を利用すれば、セキュリティレベルを強化できる。また、自宅機器のファームウエアが常に最新の状態になっているかの確認も必要だ。

 テレワークとオフィスワークを併用するハイブリッドワークの時代には、社内のビジネスWi-Fiだけでなく、従業員が自宅で利用するWi-Fiのセキュリティリスクも考慮するのは当然だろう。

 これまで紹介したようにセキュリティの強化策はさまざまあり、自社でどんな対策が必要なのか迷う場合は、専門家に相談するのが良いだろう。気軽に相談できる“セキュリティのかかりつけ医”のような専門家をもつのも、セキュリティ強化のポイントである。

執筆=高橋 秀典

【TP】

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