ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
ビジネスWi-Fiで大切なのは、安定した通信環境で安心して常時利用できるようにすることだ。第3回は、そうした環境を実現する機能やサービスとして、「安定した通信環境を確保する電波干渉対策機能」、「安心して重要な業務をWi-Fiでできるようにするセキュリティ機能」、「いざという時に頼りになる遠隔操作サービス」の3つについて解説する。
Wi-Fiを業務用に使う際に、通信速度の次に重要なのが安定性だろう。いつでも安心して使えることが、業務をスムーズに処理するための基盤になる。つながったり、つながらなかったりすることは、利用者にとってストレスになるだけでなく、ビジネス上のトラブルにもつながりかねない。
この安定性を損なう原因として挙げられるのが“電波干渉”だ。Wi-Fiに対応した機器は5GHz、2.4GHzという周波数で割り当てられたチャネルを使ってアクセスポイントに電波を飛ばしてデータをやりとりしている。電波干渉はこのチャネルに別の電波が割り込んできて、道を塞いでしまうことで発生するトラブルだ。
オフィスに複数の家庭用Wi-Fi機器を持ち込んで利用すると、電波干渉が起こりやすい。それぞれの機器が独自にチャネルを設定しているためだ。一方、アクセスポイントとルーターが別になっているビジネス用Wi-Fi機器であれば、電波が到達する範囲を調査してアクセスポイントの位置を決めて、電波干渉が起こらないようにチャネルを割り振って全体を設計することによって、安定した通信が確保できる。
ただし、工場などで電波ノイズを発生する加工用機械を設置していたり、高圧電流ケーブルを敷設していたりする場合にはビジネス用Wi-Fi機器を使っても注意が必要だ。また、テレビや電子レンジやコードレスの固定電話、Bluetooth機器も場合によっては電波干渉の原因になるので、念のため考慮しておきたい。こうした電波干渉を回避するために、ノイズを自動で検知して干渉しないチャネルに変更できる「電波干渉対策機能」を備えた機器も発売されているので、設置場所に合わせて適切な機器を選びたい。
無線通信の一種であるWi-Fiは便利な一方で常にセキュリティ面での不安が付きまとう。物理的にネットワーク接続する有線通信よりも、不正アクセスされるリスクは大きくなってしまう。それだけにセキュリティ対策をしっかり行うことが必要になる。
悪意を持った犯罪者にWi-Fiのセキュリティをかいくぐってアクセスされてしまうと、ネットワーク上でやりとりしている情報が盗み取られたり、ネットワークに不正侵入されて他の端末にアクセスされたり、他のネットワークを攻撃するための踏み台に利用されたりすることがある。
Wi-Fi環境におけるセキュリティは「認証方式」と「暗号化方式」の組み合わせによって確保される。認証方式としては、特定の鍵によって認証する「WEP」が使われてきたが、容易に鍵が解読されてしまうため、一定時間ごとに暗号鍵が自動変更される「WPA」が誕生した。
WPAには「WPA」とその強化版である「WPA2」があったが、WPA2の脆弱性をカバーするために2018年6月に「WPA3」が発表された。WPA3はパスワードが漏えいしても通信内容を暗号化して解読を防ぐ機能や誤ったパスワードでのログインが繰り返されるとログインをブロックする機能を備え、2019年からWPA3に対応した機器が登場している。
暗号化方式には、通信時に暗号キーが毎回変更される「TKIP」とネットワーク上のデータを128ビットの鍵を繰り返し暗号化する「AES」がある。「AES」のセキュリティレベルは非常に高いといわれている。ビジネスWi-Fiにおいては、認証方式と暗号化方式を組み合わせて高いセキュリティを確保するのが一般的だ。
Wi-Fiを安心してビジネスに使うためにはサポートの内容にもこだわりたい。導入時のサポートだけでなく、運用中にも必要だ。目に見えない電波で通信するだけに、トラブルが発生した際には、どう対応してよいのか分からずに立ち往生してしまうこともある。そんな時に迅速にトラブルに対応してくれるサービスがあると助かるはずだ。
社内に高いITスキルを持ったシステム担当者が少ない中小規模の企業で特に注目したいのが、リモート操作によるサポートが受けられるかどうかだ。リモート操作であれば、離れた場所にいる社外の専門スタッフのサービスをすぐに受けることができる。ビジネスWi-Fiが使えなければ業務に大きな支障を来すため、どれだけスピーディーに対応できるかが大きな鍵となる。
ビジネスWi-Fiの機器やサービスを提供している企業の中には、24時間365日のサポート窓口があり、遠隔からのトラブル対応の体制を整えているところも少なくない。IT人材の確保が難しい中小規模の企業が、Wi-Fiをビジネスで活用することを検討する際には、こうしたサポート体制をぜひチェックしておいてもらいたい。
執筆=高橋 秀典
【TP】
ビジネスWi-Fiで会社改造