ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
情報ネットワークが無線化されると新たにできることが広がるというのは想像に難くない。具体的にどんなことができるようになり、どんなメリットがもたらされるのだろうか。実際の事例を通して、Wi-Fiによって生み出される新たなビジネスの展開を紹介するとともに、Wi-Fiを新たな展開に結び付ける発想法や注意すべきポイントについても考えてみる。
製造業のA社では工場内に光回線を導入すると同時に、ビジネスWi-Fiのアクセスポイントを設置した。目的は工場内におけるノートPCの活用だ。これまで掲示板などに記入する方法で行っていた製造工程の進捗状況管理をノートPCで行えば、スムーズな情報共有が実現できる。同時に、複数台のノートPCを導入するため、作業者の移動時間を節約して製造の効率化も図れる。ビジネスWi-Fiの導入を働き方改革に生かした事例である。
建物の1階から4階にわたって、飲食店や売店を設けているB旅館は、ビジネスWi-Fiをすべての階に導入し、全売り場にPOSレジを導入した。来店者に対して各階の売り場で支払いができるという利便性を提供するとともに、各売り場における売り上げ状況をリアルタイムに把握できるようになった。これにより、売店の棚に陳列する商品ラインアップの改善や、売れ筋商品の迅速な補充などが可能になった。ビジネスWi-Fiの導入を顧客サービスの向上とマーケティングの強化に活用した事例だ。
採用面を強化するためにビジネスWi-Fiを導入するケースもある。廃車を買い取って部品を再販売するC社や食品を製造するD社では、社員寮の入居者用にビジネスWi-Fiを導入した。社員一人ひとりに快適な通信環境を提供し、社員の採用拡大と定着率向上を図り、人材不足を解消するのが狙いだ。
事業内容にリンクしたWi-Fiによる新展開で新たな価値提供につなげた事例もある。例えば、医療機関では安全性を確保しながら利便性を向上させるためにビジネスWi-Fiを活用している。Eクリニックでは、業務用と来院者用のネットワーク環境が分離できるハイエンドなビジネスWi-Fiを導入し、来院者用にビジネスWi-Fiによる通信環境の提供を始めた。その際、待ち時間の不満を和らげるために院内で提供している共用雑誌を来院者の端末で閲覧できる電子書籍に置き換えた。これにより、紙を通しての新型コロナウイルスの感染を防止するという安全性強化を図った。
老人ホーム事業を展開するF医療法人では、老人ホームの全居室をビジネスWi-Fiで無線化し、入居者に安定した通信環境を提供するとともに、医療システムの高度利用を実現した。具体的には介護用ベッドの見守り機能と医療システムを連携させ、測定データを無線で転送して起き上がりや離床の状況をリアルタイムに把握できるようにした。省人化を図りながら、より安全安心な医療サービスを提供できるようになった事例だ。
上記のさまざまな事例を分析すると、ビジネスWi-Fiの導入で新たな展開を図っていくには、基本的に二つのアプローチが考えられる。一つは現在の働き方や社員向けサービスを改善するという発想だ。工場におけるノートPCの活用や社員寮におけるWi-Fi環境の提供などがそれに相当する。もう一つはこれまでやりたくてもできなかったことをビジネスWi-Fiで実現できないかという発想を持つことだ。各売り場へのPOSレジの設置や介護用ベッドの見守り機能のリモート活用などがそれに当たる。
ただし、こうした新しい展開ばかりを考えていると落とし穴にはまりかねない。無線化による、セキュリティ面のリスク拡大に注意を払わないとビジネスWi-Fiの導入がマイナスに働く面も考えられる。ビジネスWi-Fiの導入時には、セキュリティの確保を忘れずに専門家に相談することをお勧めする。
執筆=高橋 秀典
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ビジネスWi-Fiで会社改造