ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
滋賀県にある紙製品製造会社では、生産性向上と通信安定化のために、Wi-Fi環境をリニューアルした。工場とオフィスの双方からWi-Fi活用を推進している同社にとって快適なWi-Fi環境は、ビジネスを推進する鍵となる。リニューアル以前はどのような課題があり、どのような手段で解決したのか。同様の状況にある製造業の立場から考えてみたい。
同社はコピー用紙、ノート・メモ、封筒・宅配袋・切手用品、オリジナルコピー用紙などを生産している。11万㎡を超える敷地内に3棟の工場を持ち、従業員がパソコンからネットワーク経由で生産設備を管理している。生産性を向上させるために、プログラムによって機械を制御できるPLC(Programmable Logic Controller)を導入していた。
PLCのメリットを引き出すには、設備の稼働状況を目視で確認しながら、状況に応じてプログラムを随時変更して最適化を図る必要がある。しかし、工場の中ではWi-Fiを利用できない場所があったり、接続不良や速度が低下したりする課題を抱えていた。これではPLCのメリットを全面的に享受できない。
生産部門だけではなく、管理部門でも問題が発生していた。新型コロナウイルスの感染拡大によって、東京など全国のグループ拠点との間での大人数が参加するオンライン会議が急増した。オンライン会議は同時に多台数を接続する必要があり、ネットワークの負荷が高まったのだ。スムーズな進行のため、代表者数名が接続し、残りのメンバーは聞いているだけという状況も生じた。
同社は、生産、管理の両面の課題を解決できる安定した高速通信の実現を目指して、ネットワークインフラの刷新を決断。Wi-Fi環境を見直し、高速Wi-Fi規格を工場と事務棟に導入した。
同社では5GHz帯と2.4GHz帯の両方に対応し安定通信を実現できる無線LANアクセスポイントを32台導入し、工場全域に配置した。工場内の他の設備との干渉が少なく、高速通信できる周波帯域によって広域に安定したWi-Fi環境を構築できた。
一方、事務棟の事務所、会議室、食堂にはWi-Fi6に対応した無線LANアクセスポイントを5台導入するとともに、最大転送速度が2.5Gbpsという高速データ転送が可能な有線のスイッチで工場内の無線LANアクセスポイントをつなぎ、通信容量を確保して耐障害性を向上させた。
社内には、ユーザー認証プロトコルを利用するRADIUSサーバーを設置。導入した無線LANアクセスポイントのSSIDごとに認証経路を指定できる機能を活用し、同社と本社からの出張者を分けて認証している。
ネットワークインフラ刷新の効果は大きいようだ。工場ではPLCへのアクセスがスムーズになり、生産設備の稼働状況が改善されて生産性が向上した。事務棟では多台数が同時接続しても安定して通信できるようになり、20人規模のリモート会議も快適になったという。
工場と事務棟の広範囲で快適なWi-Fi環境は、制約のない自由な発想での業務改善計画立案につながっている。例えば、持ち運びが容易なタブレット端末で手順書を閲覧しながら安定した作業品質を確保する取り組みなども開始し、積極的なWi-Fi環境の活用を図っている。
この取り組みが象徴するように、Wi-Fiというネットワークインフラの進化は、新たな発想での変革が迫られる日本の製造業にとって、働き方を変え生産性を向上させる強力な推進力になるだろう。
執筆=高橋 秀典
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ビジネスWi-Fiで会社改造