ビジネスWi-Fiで会社改造(第13回) 安定した通信環境を手に入れたい

Wi-Fi スキルアップ

公開日:2022.11.10

 Wi-Fiの電波は目に見えない。それだけに、つながらない、つながりにくい、つながっていても通信状況が安定しないといった場合に、原因が分かりにくいケースがある。どうやって原因を確認し、改善策を講じるか。実例を通して、よくある事象と原因、そして通信環境の改善策を紹介する。

不安定な通信状況の原因は見えない電波干渉

 住宅設備関連企業のA社ではオフィス内にビジネスWi-Fiを導入していたが、通信状況が安定せずに遅延などの現象が起きて業務に支障をきたしていた。そこで専門会社に依頼して、電波調査を実施した。

 電波調査とはアナライザーと呼ばれる測定器を使って、高周波信号に含まれる周波数の成分を表示し、解析することだ。ビジネスWi-Fiの周波数帯で使われている電波の強度を調べると、妨害電波やノイズが発生していないかなどを確認できる。

 A社の場合は、電波調査によって周囲に多くのネットワークが混在していたことが判明した。特に遠くまで電波の届く2.4GHz帯の電波が多数存在しており、速度低下や回線の遮断という事態を発生させていたのである。

 B美容室では市販のWi-Fiルーターを導入して、美容雑誌のデータをタブレットにダウンロードして閲覧していた。しかし通信状況が安定しないため、ダウンロードに時間がかかり、お客さまサービスが円滑に行えず悩んでいた。

 A社と同様に電波調査を行ったところ、やはり2.4GHz帯で電波干渉が発生していることが分かった。B美容室が利用しているWi-Fiルーターは電波干渉が発生している2.4GHzにしか対応していなかったために、通信状況が安定しなかったのである。

最新規格、Wi-Fi6の対応機器で通信環境を改善

 このどちらのケースも、解決策は同じだ。2.4GHz帯だけでなく、5GHz帯も利用できるWi-Fi6対応のビジネスWi-Fiを導入し、問題は解決した。Wi-Fi6であれば2.4GHz帯と5GHz帯の両方に対応するので通信状況が安定する。しかもWi-Fi5よりも高速な通信が可能で、同時接続台数を増やせるというメリットも享受できる。

 長くWi-Fiの標準的な周波数帯だった2.4GHz帯は、利用しているユーザーの数が多いうえ、電子レンジや冷蔵庫などの家電製品でも利用されている。壁のような障害物にも強く、電波を遠くまで飛ばせるという2.4GHz帯のメリットは、反面、電波干渉を引き起こしやすいというデメリットにつながる。

 その点、最新規格であるWi-Fi6対応機器では、5GHz帯も利用できる。5GHzは家電製品に利用されていないので、それらの電波干渉を受けにくい。しかも、Wi-Fi6対応のWi-Fiルーターの中にはバンドステアリング機能を備えた機種もある。

 バンドステアリング機能は周波数帯の混雑状況に応じて、利用する周波数帯を自動で切り替えてくれる機能だ。2.4GHz帯の利用が多く、混雑している場合には、より快適に通信ができる5GHz帯へと自動で切り替える。

 ただし、5GHz帯には壁などの障害物に弱いというデメリットもあるため、注意が必要だ。アクセスポイントから離れた場所で情報端末と接続しようとすると、通信が不安定な状況になる場合がある。こうしたトラブルを防ぐためにはどこに何台アクセスポイントを設置するのかなど、通信環境の設計をきちんと行うことが大切だ。

 ビジネスWi-Fiの通信状況が不安定な場合、まずは、専門の事業者に依頼して電波調査を実施する。次に、利用エリアと必要な端末数を適切に設定した上で、ルーターやアクセスポイントなどの機器を見直したり、設置場所や設置数の改善案を提案してもらったりするのがセオリーと言えるだろう。

執筆=高橋 秀典

【TP】

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