ビジネスWi-Fiで会社改造(第4回) ビジネスWi-Fiの導入と保守運用のチェックポイント

Wi-Fi スキルアップ

公開日:2022.01.25

 これまでビジネスWi-Fiの入門編としてさまざまな角度から情報を提供してきた。そのメリットは十分お分かりいただけたはずだ。今回は実際にビジネスWi-Fiを導入するに当たって留意しておきたい点について考えていく。メリットはたくさんあるビジネスWi-Fiだが、導入時や保守運用段階でのトラブルは避けたいところだ。失敗しないビジネスWi-Fi導入や保守運用のチェックポイントを解説する。

 まずは導入の際、どこで何のために利用するのかを明確にすること。それによってビジネスWi-Fiに求められる基本的な機能は変わってくるからだ。例えば、オフィスの通信インフラとして導入する場合は安定してセキュアな通信環境が求められる。店舗で顧客満足度向上のために導入するなら、来客者の使いやすさとマーケティングの情報収集の仕組みが必要になる。具体的にその中身を見ていこう。

 オフィスの通信インフラとしてのビジネスWi-Fiでまず求められるのが安定して高速で通信できること。多くの端末で同時接続しても高速で通信できるWi-Fi 6を選びたい。さらにオフィスの広さや形状に合わせて、アクセスポイントを設置することで、快適なビジネス基盤としてのWi-Fi環境が構築できる。電波干渉対策機能が提供されていればさらに安心できる。

 もう一つの重要なポイントはセキュリティ機能だ。前回も解説したように、セキュリティは「認証方式」と「暗号化方式」の組み合わせによって確保される。強固な最新の認証方式である「WPA3」と128ビットの鍵を繰り返し暗号化する「AES」の組み合わせで安心して利用できるようにしておきたい。

 店舗でビジネスWi-Fiを顧客満足度の向上策としても使いたい場合、まず考えたいのが社内で利用する環境とお客さまに提供する環境を分離しておくことだ。1台のアクセスポイントで社内用とゲスト用のネットワークを分断できる機能を備えているかどうかがポイントになる。もちろん、オフィスの情報インフラ向けにビジネスWi-Fiを導入する際、来客用にWi-Fi環境を提供しようとする場合にも同じことが言える。

 ビジネスWi-Fiを介して得たデータを集客やマーケティングに利用したいと考えている場合には、カウントした来店者数や滞在時間を提示してくれる機能やSNSなどの特定のページを表示する機能があると便利だろう。フリーWi-Fiに接続できる無料アプリケーションが利用できると観光客へのアピール材料になる。

 店舗で顧客がビジネスWi-Fiを使うのは、主にSNSやネットの閲覧程度なので、通信速度についてはそれほどこだわる必要はないだろう。ただし、同時接続台数に関しては想定移入店顧客数を考慮しながら、余裕を持った機器を選びたい。

 また、診療所や病院、工場などのさまざまな電子機器が存在する場合は、上記以外の配慮が必要になる。電波干渉を引き起こしては、通信が正常に行えないだけでなく電子機器の動作にも影響を及ぼす可能性があるからだ。ビジネスWi-Fiを設置する通信事業者にあらかじめ事情を伝えておき、現地の電波調査を実施してもらい、最適なプランを提示してもらうことでトラブルを避けるようにしたい。

保守運用やコストの内容についても押さえておく

 導入の際には、こうした基本的な機能を押さえた上でその後の運用を考えて必要と思われるポイントも検討しておくことをお勧めする。その一つが対応できる限界と拡張性だ。1台のアクセスポイントに接続できる台数には限りがある。社員の増加などで接続台数が増えた場合、設置した機器でどれだけ対応できるのか、あるいは追加の機器が必要なのか、追加の際にどれだけ簡単に拡張できるかなどを、事前にチェックしておきたい。

 アクセスポイントなどの機器のコストの支払い形態もチェックポイント。主な手段はレンタルか買い取り。月額支払いのレンタルのメリットは導入の初期コストが抑えられることだ。一方、一括で買い取って資産に計上しておき減価償却していく方が、長期間で見ると総支払額が低くなるケースもある。機器の設置費用に関しては導入時の支払いになるので、ある程度の初期投資は必要になる。

 レンタル契約の場合、契約期間など契約条件についても要確認だ。一般的に2年程度の契約期間が多く、期間内の解約には解約金が発生する場合もある。契約期間が切れた後の利用の可否や料金についても確認しておくとよいだろう。

 設置するWi-Fi機器によって通信速度に差が出ることがあるので、機器をレンタルする場合には性能をしっかりチェックしておきたい。オフィス向けのビジネスWi-Fiではストレスの少ない最新の機器を使っているレンタルサービスを選びたい。

 これらに加えて、ビジネスWi-Fi導入は料金プランやサポートも含めて検討する必要がある。中でもサポート内容は最も重要なポイントになる。まずは導入前のサポート。アクセスポイントの設置場所や台数についてのアドバイスや導入に当たってのサポート範囲も事業者によって異なる。電話相談やオンサイトでの作業など、こちらの要望に応じたサポートが受けられるかは費用と合わせてチェックしておきたい。

 さらにポイントとなるのが機器の最適な設置プラン作りと設定をどこまで任せられるかだ。ルーターやアクセスポイントの設置プラン作りや設定は専門知識を持った担当者がいなければ難しい。利用人数や間取りなどの情報を提供するだけで、安心して任せられる事業者を選択したい。

 導入後のサポートも重要だ。24時間365日対応など、トラブル発生時の対応体制は選定のポイントになる。また機器の設定変更などの対応方法も要確認だ。申し出れば外部からリモートで設定変更してくれる事業者もある。

 プラン作りや機器の設定を事業者に任せることができれば、小規模なビジネスWi-Fiなら導入作業自体はそれほど難しくはない。設定済みの機器を受け取り、事前に決めておいた場所に設置し、機器に電源コードとLANケーブルを接続するだけになる。今回取り上げたポイントをしっかりチェックしておくことで、導入作業の負荷を軽減しながら、ビジネスWi-Fiの導入を成功させることができるはずだ。

執筆=高橋 秀典

【TP】

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