ビジネスWi-Fiで会社改造(第14回) ビジネスWi-Fi環境の設計の勘所

Wi-Fi スキルアップ

公開日:2022.11.24

 ビジネスWi-Fiを導入しようと考えた時、オフィス、店舗、工場などの状況によって、アクセスポイントをどこに設置するのか、何台必要になるのか、ルーターの設定はどうすれば良いのか、など考慮するべきポイントがある。こうした設計を適切に行えば、業務に支障のない通信環境を整えられる。今回は、Wi-Fi環境の設計について事例を通して考えてみたい。 

課題に応じた解決策で通信環境状況を改善

 貸し会議室サービスを展開するA社では、貸し会議室内のWi-Fi導入を検討していた。ただ、ITの知識もほとんどなく、ルーターの選定やアクセスポイントの設置台数など細かい設計に悩んだため、専門会社にアドバイスを依頼した。

 依頼を受けた会社が、Wi-Fi導入スペースで電波調査を実施したところ、導入予定のスペースには、家電などにも使われている2.4GHz帯の周波数の電波が多数存在していると分かった。その電波による電波干渉を避けるために最新の規格であるWi-Fi6対応のルーターを導入し、そのルーターが備えている状況に応じて周波数帯を自動的に切り替えるバンドステアリング機能を活用するプランを採用した。

 ガラス製造業のB社のケースも周波数がビジネスWi-Fi設計のポイントになった。B社は既存のルーターは残しながらも、アクセスポイントの設置台数を増やして、オフィス全体をカバーする安定的なWi-Fi環境を構築したいと考えていた。念のため専門会社にデモ機を設置してもらい電波調査をしたところ、既存のルーターと競合していた。そこで、新たに導入するルーターの周波数帯を既存のルーターと競合しない5GHz帯に固定して、電波干渉を回避することにした。

 ワンフロアに160席ほどの飲食スペースを提供するC社では、アクセスポイントの数の見直しが必要になった。C社では、それまではWi-Fiルーターを1台設置し、その1カ所をアクセスポイントとして来店客向けにWi-Fi環境を提供していたが、安定した運用ができずクレームにつながっていた。

 そこで既存環境における電波調査を行ったところ、接続端末数からアクセスポイントが3台程度必要と判明。追加して適切な場所に設置した。これにより通信環境は安定し、良好な通信サービスを提供できた。

設計の前提となる3つのポイントを整理

 上記3社のケースでも明らかなようにビジネスWi-Fiの通信環境の設計は、電波調査が実施できる専門会社に相談するのが基本だ。ただ、その前に整理しておくべきポイントが大きく3つある。

 1つはビジネスWi-Fiを導入する目的だ。店舗などのゲストへのサービスのためか、オフィスの業務インフラなのか。それによってルーターに求める機能やアクセスポイントの配置が変わってくる。店舗とオフィスの両方に導入して、業務用にもゲスト用にも利用したい場合は、ネットワークの分離が必要になる。それを実現するには複数のネットワークを設定できる機能を持った機器を選ぶ必要がある。

 こうした用途だけでなく、使い方も想定しておくべきたろう。接続端末としてタブレットなどがメインとなり、それで動画を閲覧するといった使い方が考えられる場合は、大容量のデータ通信が必須となる。このケースでは、快適な通信速度を確保できる5GHzに対応したルーターの導入が望ましいだろう。

 ポイントの2つ目は、Wi-Fiの利用を想定しているエリアと常時接続台数の予測だ。機器によって電波の到達エリアが異なるため、利用エリアの広さに合わせて選ぶことが重要だ。1台のアクセスポイントで問題なく同時接続できる端末の数は、一般的なアクセスポイントでは50台程度といわれる。前述した飲食店のケースでは160席ある。この店では、満席になりそれぞれ接続しても問題ないように、3台のアクセスポイントを設置した。

 利用エリアは広さだけでなく、構造も考慮する必要がある。例えば、コンクリートの壁や柱などが多くて電波が届きにくい構造であれば、遠くまで電波を飛ばせる2.4GHz帯の活用が重要になる。また、複数階にまたがるオフィスであれば、コンクリートの床は電波を通しにくいため、ルーターとアクセスポイントの設置数を慎重に検討する必要がある。

 ポイントの3つ目は求めるセキュリティレベルだ。店舗や旅館・ホテルなどでゲスト向けにWi-Fi環境を提供する場合でも、セキュリティには十分配慮する必要がある。さらに医療機関や教育機関など、特定の機微な情報を扱っている場所にビジネスWi-Fi導入する場合は、ネットワークの識別名であるSSIDを隠す機能を持つ機器を選ぶなど、さらに高いセキュリティレベルを目ざすことが大切だ。

 この3つのポイントは、ビジネスWi-Fiの通信環境を検討する上で必ず必要になる要素だ。具体的な機器の検討プロセスに入る前にぜひ整理しておきたい。

執筆=高橋 秀典

【TP】

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