ビジネスWi-Fiで会社改造(第43回) ビジネスWi-Fiを活用し、自治体DXを推進しよう

Wi-Fi スキルアップ

公開日:2025.01.30

 地方自治体がWi-Fiを導入する目的は、従来はインバウンド需要を見込んだ観光地の集客、災害時の通信手段の確保、街づくりの後押しなどが多かった。近年は「自治体DX」への関心が高まる中、業務効率化や行政サービス向上を目的としたビジネスWi-Fiの導入も増えている。今回は自治体DXのためのビジネスWi-Fiの活用について考える。

ビジネスWi-Fiは自治体DX実現の特効薬

 多くの地方自治体は人口減少という深刻な課題に直面している。民間有識者による「人口戦略会議」は2024年4月、今後の人口推計を発表した。推計によれば、全国の市区町村のうち4割超にあたる744自治体が、2020年~2050年の30年間に20〜39歳の若年女性人口が半減するという。このように人口減少に歯止めがかからない自治体を「消滅可能性自治体」と呼ぶ。

 消滅可能性自治体は、自治体の運営予算や人材不足といった課題も抱える。少ないリソースで行政サービスの質を向上させる解決策として注目されているのが、デジタル技術を活用する「自治体DX」だ。

 自治体DXを実現する上では、クラウドサービスの活用や利便性の高いアプリケーションの開発、サービス向上につながるインフラ基盤の整備などが柱となる。インフラ整備のための通信ネットワーク環境変革の切り札として、庁舎内にビジネスWi-Fiを導入するケースが増えている。

 従来のWi-Fi導入は、訪日外国人客の呼び込みや街おこし、地域防災や減災を目的にしたものが多かった。昨今は自治体運営のDXを推進するために市役所などへの導入が増えている。ビジネスWi-Fiの導入で、自治体の業務がどのように変わり、住民向けサービスがどのように進化したのか、いくつかの事例を見ていきたい。

総務省によるガイドラインのセキュリティレベルをクリア

 関西のある自治体では、議会改革の一つにペーパーレス化推進を挙げ、通信基盤としてビジネスWi-Fiを導入している。市役所の本庁舎と別棟に無線LANのアクセスポイントを設置して障害発生時の回避機能を装備し、全館にWi-Fi環境を構築した。

 市議会の通知や連絡、配布資料はデジタル化し、市議会議員にはタブレットを貸与してペーパーレス化を実現、リモートによる会議運営にも対応した。その結果、手荷物が簡素化され、業務効率化を実現できた。

 中部地方のある自治体では、ネットワークの更新に合わせて県庁と県内の合同庁舎にビジネスWi-Fiを導入した。議会、執務室、会議室などにアクセスポイントを設置し、さらに来庁者向けのネットワークも整備した。目的は、行政改革や職員の働き方改革、県民への行政サービスの向上だ。

 幹部職員への業務報告や説明資料はパソコンからスクリーンに投影し、全員がパソコンからデータにアクセスしながら会議を進められるようになり、ペーパーレス化で業務が大幅に効率化された。今後は県民サービス向上のためのアプリケーションを強化するという。

 北関東のある自治体では、新庁舎建設に伴いビジネスWi-Fiを導入し、行政情報ネットワークを再構築した。旧庁舎で物理的に分断していたネットワークを、行政専用の閉域ネットワークを利用して論理的に三階層に分離し、総務省が示すガイドラインをクリアした。ビジネスWi-Fi導入による利便性向上と共にセキュリティも強化し、庁舎内や出先機関のどこへでもパソコンを持ち込めるようになり、業務効率を向上できた。

 セキュリティへの懸念から自治体業務ではビジネスWi-Fi導入に尻込みするかもしれないが、前述した事例のように、論理的に三階層に分ければセキュリティレベルを確保できる。待ったなしの自治体DXを推進するために、インフラとしてのビジネスWi-Fiの導入をお勧めしたい。

執筆=高橋 秀典

【TP】

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