ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
複数のフロアにまたがるオフィス全体にビジネスWi-Fiを導入するのは、ハードルが高いかもしれない。だが、オフィス全体の通信環境を無線化すれば、さまざまなメリットが生まれる。例えば、オフィスのどこにいても無線デバイスを活用できるだけではなく、サステナビリティーにもつながる。オフィス全体にビジネスWi-Fiを導入するアプローチと、そのメリットを考えてみたい。
ある大手通信事業者では、自社ビルで数十フロアにまたがるオフィス全体の通信環境をビジネスWi-Fi化した。最初の数カ月で電波状況を調査し、アクセスポイントの設置計画をまとめた。その後、数カ月かけて工事を完了した。利用開始後も電波状況やデータ量を確認し調整を行うなど従業員の使い勝手の向上に取り組み、快適な通信環境を実現した。
こうした複数フロアを使用するオフィスで快適な通信環境を整備するには、設計の工夫が必要だ。フロア間の通信はもちろん、フロア全体に電波を行き届かせるには、アクセスポイントを等間隔に設置しても最適化できない場合がある。オフィスレイアウトを把握して各エリアで働く人の人数を考慮し、コンクリート製の壁といった障害物も含めた調整が求められる。そのため、ビジネスWi-Fiに詳しいプロの協力が不可欠だ。
大規模オフィスの通信環境を快適にするには時間、手間、費用がかかるが、もたらされるメリットは多い。最大のメリットはユーザビリティーの向上だ。同社はテレワークを積極的に取り入れてきたが、従業員はWi-Fiを利用している自宅と同じように、オフィスでも快適に仕事ができるようになった。
ネットワークには、全てのアクセスを疑いセキュリティを確保する「ゼロトラスト」の考えを適用し、コスト面、管理面の負担が軽減した。パソコンは有線ポートのないモデルの導入が可能になり、持ち運びやすい軽量型を選べるようになった。
持ち運びしやすい端末の採用は、テレワークの活用をより一層促せるだろう。また、オフィスのどこでもWi-Fiを利用できれば、フリーアドレスのレイアウトも可能になり、出社率に合わせた座席数を用意するだけで済む。従業員数が増えても柔軟に対応でき、無駄なオフィススペースも不要になる。
オフィス全体へのビジネスWi-Fiの導入で、高度なオフィスワークの可能性が広がる。Wi-Fiの電波から位置情報を収集し、どの座席に誰が座っているのかをリアルタイムに把握する仕組みも構築できる。ビジネスWi-Fiを通して、従業員の働き方に関する情報も取得できるのだ。
屋外における位置情報の収集はGPSを利用する場合が多いが、ビル内でその方法を使っても不正確になりがちなだけでなく、どのフロアにいるのかは全く把握できない。しかし、ビジネスWi-Fiを用いて位置情報を収集すればこうした弱点を克服できる。座っている席を手動で登録してもらう手間がなくなり、自動的に情報を収集できるのもメリットだ。
オフィスの利用状況をビジネスWi-Fiから把握できれば、省エネ対策にもつながる。例えば、ビジネスWi-Fiが使われていないフロアや会議室を自動的に消灯したり、エアコンの温度設定を変更したりする仕組みを作れば、無駄な電力消費の防止になる。
以前紹介した、勤怠の自動的な把握も可能だ。テレワーク時のデバイス利用状況とオフィスの出退勤の情報を自動で取得し、勤怠システムにデータを送信すれば正確な勤務状況を把握できる。過度な残業が発生しそうな時は、管理職や本人に自動的に通知することもできる。
オフィスへのビジネスWi-Fiの導入は時間と費用と手間がかかるが、一度導入すればレイアウト変更や組織変更、人事異動などの際に、情報ネットワークの見直しコストが有線接続と比べて大幅に削減できる。加えて、省エネ対策やエンゲージメント向上につながる施策を実行できる。
事例のように大規模なオフィスでなくても、ビジネスWi-Fiがもたらすメリットは変わらない。企業としてサステナビリティーを強化するためにも、ビジネスWi-Fiの全面導入を早急に検討するべきだろう。
執筆=高橋 秀典
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ビジネスWi-Fiで会社改造