ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
深刻な人材不足に悩む介護業界でもビジネスWi-Fiの導入が広がっている。その目的の1つは介護サービス利用者にビジネスWi-FiでICT環境を提供すること。それだけでなく、介護サービスを提供する事業者もメリットを享受するという2つの狙いがある。
狙いの1つは介護サービスの品質向上だ。24時間365日の見守りサービスや介護ロボット活用のための情報基盤を構築する。2つ目の狙いは従業員の生産性向上だ。快適でストレスなく働ける環境の実現に、ビジネスWi-Fiが大きな役割を果たしている。
数年前に開所した難病や末期がんなどの人たちを受け入れる医療とリハビリに特化した住宅型有料老人ホームのケースを見てみよう。この施設は介護スタッフだけでなく、医師や看護師が24時間入居者をケアする体制を整えている。
この老人ホームはオープンに当たりビジネスWi-Fiを導入し、ICT環境を整備した。施設の全エリアをカバーできるだけのアクセスポイントを設置し、入居者用として2.4GHz帯のネットワークを提供している。一方、スタッフ用には5GHz帯のネットワークを提供するといったすみ分けを行っている。このように、Wi-Fi6は2つの帯域の利用が可能だ。
各部屋には見守りセンサーと連携できるナースコールシステムを導入した。ナースコールを受けるだけではなく、センサーマットを介して呼吸や心拍数などのバイタルデータを収集し、リアルタイムで異常を検知できる仕組みとなっている。ナースコールやセンサーマットのデータはビジネスWi-Fiを通じて業務用のアプリケーション上に集約され、スタッフはスマートフォンを介してどこにいても入居者の状態をチェックできる。介護記録の入力などの業務もスマートフォンから行えるので、ストレスなく作業に取り組める。
これらのシステムにより、入居者にはいつでも駆けつけてくれるという安心感を提供し、スタッフも入居者の状態を常にチェックできるので、両者にとってWin-Winの体制となっている。
新設だけでなく既存の介護施設でも、情報ネットワーク改善のためにビジネスWi-Fiの導入が進んでいる。これまでは大きな更新をせず開設から20年以上経過した介護老人福祉施設で、ネットワーク基盤の全面刷新に取り組んだケースがある。
同施設はWi-Fi6に対応したビジネスWi-Fiを導入すると共に、認証サーバーにより不正アクセスを防止し、障害発生時に備えてネットワークを見える化する仕組みを整えた。従来、Wi-Fiが利用できるのは、ナースステーションなど一部のエリアに限られていたが、この刷新によって施設のどこからでもWi-Fiを利用できるようになった。
また、介護スタッフの人手不足を補うため、ビジネスWi-Fiを情報基盤とした見守りシステムを全室に導入した。スタッフはどこにいてもタブレットなどから入居者のバイタルデータの記録やリハビリ動画を確認でき、業務に必要なデータもスムーズにダウンロードできるので、ストレスが大幅に低減された。これは高速かつ大容量の通信が可能なWi-Fi6ならではの強みをうまく活用した例だろう。
もう1つの人手不足対策として、入居者のためにコミュニケーションロボットの導入を進めている。試験的に導入したコミュニケーションロボットは入居者に癒やしを提供できると好評だ。ロボットに搭載したカメラでリアルタイムの監視もできるため、スタッフにとってもメリットは大きい。今後は各フロアに1台の導入を検討している。
介護という仕事は人に頼るところが大きい。そのため人手不足に何も対策を講じないままでは、サービスレベルの低下を招いてしまう。具体的な対策として有力なのはビジネスWi-Fiで強力な情報基盤を構築し、その上でさまざまな業務アプリケーションを展開することだ。現場スタッフの負荷を考慮した対策は、今後ますます重要になるだろう。
執筆=高橋 秀典
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ビジネスWi-Fiで会社改造