人生を輝かせる山登りのススメ(第44回) 島の山旅を楽しもう(伊豆大島・三原山)

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公開日:2019.01.18

 長い日程が必要なく、それでいて本州の山とは違った非日常感を味わえるのが島の山の魅力です。太平洋側の島は冬も比較的穏やかな気候で、広く開放的な海の景色や、特殊な地質がつくり出す風景が見られます。離島の旅は幅広い世代に人気ですが、私はそれと登山を組み合わせる島の山旅に夢中になっています。12月中旬には伊豆大島の三原山へ行ってきました。今回は手軽な島の山旅を紹介しましょう。

伊豆大島の中央に巨大な山体を横たえる三原山。山頂部は大きな火口があり45分ほどで1周できる

船でのアクセスも楽しい島旅

 伊豆大島は東京都に属する島で、東京都心から約120㎞南の太平洋に位置します。面積は約91km2、周囲は50kmほどで、その名の通り伊豆諸島で最大の島です。

 東京都港区海岸1丁目の竹芝客船ターミナルから、高速ジェット船に乗れば最短1時間45分(東海汽船の航路・所要時間を参照)で到着。横浜、久里浜、館山などからも高速ジェット船、または大型客船が就航しています。さらに航路だけでなく東京・調布からの空路もあります。このように島への交通手段が多く、アクセスしやすいのが伊豆大島の利点です。1泊2日なら余裕がありますが、行程を工夫すれば、日帰りでも行ってこられます。

 今回、私は熱海港から高速ジェット船に乗りました。伊東を経由して、1時間あまりで伊豆大島に到着します(直行便の所要時間は45分)。ジェット船は揺れが少なくて乗り心地がよく、途中では海上から初島や伊豆半島、相模湾の絶景が見られます。船で向かうというのも島の山ならでは。旅気分が一気に盛り上がります。

 到着後、早速レンタカーで島巡りをしました。伊豆大島を代表する植物のヤブツバキが花を咲かせ、山の斜面を覆う常緑樹が温暖な気候を表しています。噴火を繰り返すことによってできた伊豆大島は「日本ジオパーク」にも認定されていて、その成り立ちを感じられる興味深い場所がたくさん点在しています。

伊豆大島ならではの景観を満喫

 例えば、島の東側には海から突き出る岩塔の筆島があります。これは火山が波の浸食によって削られ、溶岩の通り道であった中心部の硬い所が残ったものだそう。長い年月をかけてこの形になりましたが、もっと時がたてば、この岩塔も削られてなくなってしまうでしょう。今だけ楽しめる風景です。

火山の中心部のみが残ったという筆島。岩塔が海から突き出している

 また、伊豆大島に行ったらぜひ見たいのが千波地層切断面です。地層が縞模様のように美しく重なり、その見た目から「バウムクーヘン」とも呼ばれています。伊豆大島は100〜150年ごとに大噴火を繰り返してきました。その約1万5000年の歴史の年表ともいえるのがこの断層面で、過去の噴火のたびに降り積もった堆積物の断面が高さ約24m、長さ約63mにわたって美しい縞模様として見られます。層の中には、伊豆大島の噴火によるもののほかに、新島や神津島を作った火山から飛んできた噴火物も含まれているのだそうです。

幾重もの層が積み重なる千波地層切断面。戦後、道路を作るときに偶然発見された

 ほかにも噴火が植物を焼き、スコリア(火山岩の一種)が積もった広大な緩斜面が広がる裏砂漠はとても東京とは思えない景色ですし、爆裂火口跡を利用した波浮(はぶ)港など、独特な景観も楽しめます。

予想外の景色が見られる三原山

 さて、この伊豆大島で楽しむのは島の中央にそびえる三原山のトレッキング。標高は758mと意外に高いですが、メインの登山口である三原山頂口の標高が約550mあるので、そこから山頂へは1時間足らずです。火口を1周するお鉢巡りをしても、全行程を3時間程度で歩くことができます。

約200メートルもの深さがある火口跡。火口壁の縞模様も度重なる噴火によってできた

 三原山頂口からの道は舗装路で、山慣れた人にはやや単調に感じられるかもしれません。それでも、昭和61年(1986)の噴火で火口からあふれた溶岩流の跡を見られたり、その溶岩流の末端に立ったりすることもできます。再生しつつある植物の生命力を感じることもできるでしょう。また、登りながら振り返れば、海の向こうに伊豆半島の天城山や富士山、三浦半島などの眺めが素晴らしく、飽きることはないと思います。

 火口縁にたどり着いたら、緩やかにアップダウンしつつ、火口1周コースを歩きます。三原山は、噴火から30年の時を経て平静を保っていますが、それでも火口壁から吹き上がる水蒸気や、深さ約200mもあるという噴火口、大迫力の溶岩流跡などが間近に眺められます。

 山頂部は麓から見上げる印象とはまったく異なり、大地のエネルギーを感じられる荒々しい山の姿を見せています。町から少し歩くだけで、まるで別世界のような風景を楽しめるのが島の山の魅力です。

1986年の噴火の際にできたというゴジラ岩。1984年公開の映画で三原山に沈められたゴジラの復活か?背後は伊豆の天城山

 こうした山頂部とは対照的に、南洋に静かに浮かぶ伊豆諸島の島々が幻想的です。それらの島には何があるのか想像力がかき立てられ、さらなる島旅への願望を誘うでしょう。今回紹介したのは伊豆大島の三原山ですが、伊豆諸島にはほかにも神津島の天上山、御蔵島の御山、八丈島の八丈富士など、魅力的な山があります。

 太平洋側は冬も晴天率が高いのが特徴ですが、伊豆諸島はこれからの季節、冬型の気圧配置が強まると山の上で強風が吹いたり、海が荒れて船が欠航・接岸できなかったりすることもあります。条件の良い日を見計らって出掛けましょう。

 離島の中で、冬も比較的穏やかでアクセスしやすいのが瀬戸内海の島々です。神の宿る島・安芸の宮島の弥山(みせん)、多島美を満喫できる芸予諸島・生口島の観音山、大三島の鷲ヶ頭山などが人気です。天候が安定する春に向けて、今から計画を温めるのも楽しいですね。みなさんも非日常感が増す島の山旅を楽しんでみてはいかがでしょうか?

伊豆諸島の利島、新島、神津島などが近くに見える。これらの山でもハイキングが可能だ

執筆=小林 千穂

山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。

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