人生を輝かせる山登りのススメ(第19回) 雪山は危険なのか?

スポーツ

公開日:2017.01.26

 秋から続く冬富士や北アルプスでの滑落事故、年末年始にかけて毎年のように起こる山での遭難……これらのニュースを耳にすれば、「雪山」イコール「危険」のイメージが定着するのも無理のないことかもしれません。しかし、雪山へ行くことがすべて危険で、まるで行くことが悪いと考えるのは早計です。冬の山には他の季節にはない魅力が詰まっています。今回は雪山のリスクと魅力について考えてみましょう。

夏山よりはるかに厳しい冬の雪山

 確かに雪山は、夏山にはないリスクがあります。何より異なるのは気象が厳しくなること。気温が低く、冷え込むとマイナス20度を下回ることも珍しくありません。それにより、凍傷や低体温症の危険が高まります。また、荒れると強風が吹き、富士山などの独立峰では体ごと飛ばされるような突風が吹くこともよくあります。吹雪になればホワイトアウト状態で、動くことすらできないことも……。

 また、登山道が雪に埋もれ、降雪直後の踏み跡がない山では、自分でルートを探しながら歩かなければなりません。当然、登山道をたどれる夏より道迷いをしやすくなります。さらに凍った斜面はスリップをしやすく、滑落の可能性も高まります。雪庇(稜線(りょうせん)の風下側に、庇(ひさし)のように張り出した雪)を踏み抜いたり、雪崩に巻き込まれたりと、あらゆる面で厳しい世界です。

冬こそ出合ってほしい世界が待っている

 それを知っていながらどうして雪山へ行くのかというと、冬は特別な季節だから。四季のはっきりしている日本は、特に山岳エリアにおいて、夏とは全く異なる世界に変わります。山は雪をまとってさらに美しさを増し、ピンと張り詰めた空気に誰もがすがすがしさを感じるでしょう。足跡のない雪面を白い息を切らせて進み、登り着いた先で青空にどこまでも続く雪景色を見たとき、夏には味わえない気持ちの高まりに満たされます。山小屋が営業を休止し、登山者も減る冬、山は原始の姿を取り戻すかのように思えます。冬しか出合えない山に会いに行くのです。

 雪山なりのリスクは高まりますが、よく考えると、事故のほとんどは人為的なミスによるもの。天気が荒れると知っていながら山に入ってしまったり、滑りやすいところで不用意に足を置いたり、ルートファインディングができなかったり。雪山がそのまま危険なのではなく、その山、季節に合った技量、判断力を持っていない人が山に入ることが危険なのです。

ファミリーや友人でも楽しめる雪山の魅力

 雪山の厳しさに対して、多くの方は「自分には技術も知識もないから雪山へは行かない」と話します。それは正しいです。山登りは夢中になればなるほど、より高く、より険しいところへ行きたくなるもの。だから、自分はハイキングはやるけれど雪山へは行かないなど、自分なりのラインを決めておくのはとっても大切なこと。ただ険しさだけを求めて無謀登山をしてしまう人より、ずっとよいと思います。でも一方で、ちょっともったいないなと思うこともあります。

 ひと口に雪山といっても、アイゼンやピッケルを酷使するような厳しい山もあれば、スノーシューで樹林帯を散策したり、ノルディックスキーで起伏を走破したりするなど、低地・低層の楽しみ方ができる山もあります。他にも、いつも歩いている里山に雪が積もったタイミングで、スノーハイキングに出掛けるのもよいでしょう。不安を感じるならば、旅行会社やスポーツ店で企画されている雪山ツアーや、ガイド山行に参加するのもお勧めです。

 危険だというイメージを持っているだけでは、なかなか雪山の楽しみ方には気付けません。せっかく素晴らしい体験に出合える機会ですから、しっかり対策を取って出掛けましょう。冬も山に踏み出したら、新しい何かがあなたを待っているかもしれませんよ。

富士登山オフィシャルサイト
■登山の前に必ず知っておくこと
http://fujisan-climb.jp/basic/

執筆=小林 千穂

山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。

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