人生を輝かせる山登りのススメ(第24回) 光環、環水平アークなど、息を飲む気象現象

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公開日:2017.06.16

 山では天気の変化が劇的で、時にとても美しい現象を目にすることがあります。今回は、私が実際に見たものの中から印象的な気象現象を紹介します。山登りをしていて比較的遭遇しやすい現象をレア度★、見るのが難しい現象をレア度★★★★★と示しました。さぁ、美しい空の世界をお楽しみください。

■雲海(レア度★☆☆☆☆)

 文字通り、雲が海のように広がる現象。山では晴れているとき、このように見えます。山のように周りから高く突き出した場所でしか見られない気象現象の1つで、見たいと思っている登山者も多いはず。雲海はたいてい早朝に出現し、太陽が高くなると消えてしまいます。標高の高いところにある山小屋に泊まり、早起きすると、運が良ければ見られます。

白馬岳の麓に広がった雲海。ダイナミックな雲海が見られるのも山登りの醍醐味

 

 さらに、幸運が重なれば雲海から昇るご来光を見られることも。日が昇る直前、雲の海が金色に輝き、この世のものとは思えない美しさ。これはレア度★★☆☆☆です。

南アルプスの北岳から朝日に染まる雲海を見る。雲の海から富士山が顔を出す

 

■ブロッケン現象(レア度★☆☆☆☆)

 稜線(りょうせん)の片側から日が差し、その反対側に霧がかかっていると、自分の影の周りに虹ができる現象。夏山では尾根の片側で霧が出現することは珍しくなく、この現象もよく目にします。天気が優れない日の午後で、急激に天気が回復し始めたときなどに見られます。

北アルプス大キレットを縦走中に見たブロッケン現象。よく見ると影の周りに大きな二重の輪ができている

 

■ハロ(レア度★★☆☆☆)

 太陽の周りにできる円形の光の輪。空を覆う薄い雲の中に六角柱型の氷の粒があると、太陽の光が屈折してこのように輪ができます。初夏の薄曇りの日に見られる確率が上がります。

5月中旬、北アルプスの常念岳で。ハロの中を薄い飛行機雲が通っている

 

■レンズ雲(レア度★★☆☆☆)

 日本では、大きな山の上にできるものを笠雲、風下側にできるものを吊し雲といいます。富士山の周辺で見られることが多いですが、なかなかキレイな、はっきりとした形のものは現れません。これができるときは悪天の兆し。たいてい翌日は荒天となります。山にいるときは気象の変化に注意しましょう。

冬の富士山に登っているときに見たレンズ雲。手前に光るのは雪煙。このように風の強い日にできる(左写真)、下から見たレンズ雲。別の日に同じく富士山で(右写真)

 

■降水雲(レア度★★☆☆☆)

 スコールのように降る雨を離れた場所から見ると、写真のように見えます。雲から激しく雨が落ちる様子は、まさに雨のカーテンです。夏の夕立が起こる時間に見晴らしの良いところから見られる可能性が高いでしょう。でも、たいてい、そのカーテンはあっという間にこちらに迫ってきます。豪雨だけでなく雷を伴う可能性もあり、大変危険です。これを見かけたら直ちに安全な場所へ避難しましょう。

8月中旬、北アルプス南岳から蒲田川を見下ろしたもの。この後、間もなく山でもすさまじい雨になった(左写真)、アメリカ・カスケード山脈で見た雨のカーテン。スコールが迫ってくる(右写真)

 

■ビーナスベルト(レア度★★☆☆☆)

 よく空気が澄んだ日の、日の出の直前または日没直後、太陽とは反対側の空が美しいピンク色に染まる現象。写真は初夏の夕方、北アルプス剱沢から針ノ木岳方面を見たもの。ピンク色の空は、太陽が地球越しに反対側の空を照らしている部分。下にはっきり分かれたブルーの部分は地球の影だそうです。太陽の方ばかり見ずに、反対方面もぜひ観察してみて。地球の影を目で見られるなんて、ロマンチックだと思いませんか?

8月の唐松岳から見た剱・立山連峰。日が昇る直前、美しい色合いに空が染まった

 

■二重の虹(レア度★★★☆☆)

 夕立後に虹が現れることはよくありますが、美しい半円形の虹を見るチャンスはそう多くありません。写真は北穂高岳で撮ったもの。激しい雷雨の後、日が差したので外を見てみると大きな二重の虹ができていました。

虹が大き過ぎて普通のカメラでは収められなかったので、慌ててスマートフォンのパノラマ機能で撮影

 

■滝雲(レア度★★★☆☆)

 尾根を越えた雲が反対側へ下降気流として流れるときに見られます。雲海が尾根を越えて滝のように流れ、下部で消える幻想的な現象です。条件がそろうと、山全体を飲み込むぐらい大規模なものが発生することもあります。滝雲を見るなら、フェーン現象が予想される日が狙い目。

9月上旬の早朝、大キレット(長野県の南岳と北穂高岳の間にあるV字状に切れ込んだ岩稜帯)を越える滝雲。雲の流れが美しいので、ぜひ生で見てもらいたい

 

■波状雲(レア度★★★☆☆)

 雲が風の強弱や風向きによって波状になるもの。強風時に見られることが多い現象です。波の隙間から青空が見えるととても美しく、条件が良いと、空一面波状雲に覆われることもあります。波状雲はすぐに形が崩れるといいますが、このときも美しい波模様は、写真を撮ってしばらくするとはかなく消えてしまいました。

北アルプス立山で。波模様の美しさに、歩くことも忘れて見とれた

 

■光環(★★★★☆)

 太陽の周りに色が付いた輪ができる。太陽の光が薄い雲の中にある水滴や氷晶に回折してできる現象。とても珍しいというわけではないが、太陽がまぶし過ぎるので、出現していても見逃してしまうことが多い。サングラスをかけていると裸眼よりよく見える。

冬の富士山で。この日は雲の形によって、さまざまな光環が見られた(左写真)、同じ日に見た別の光環(右写真)

 

■環水平アーク(レア度★★★★★)

 空の低い位置にできる逆さの虹です。晩春から夏にかけての正午前後という限られた時間帯で、しかも大気中に六角形の氷晶があるときしか現れず、これが出現すると地方紙の一面を飾るぐらいの珍しさ。私が見たのは剱岳の中腹ですが、やはり、翌日の新聞に立山の室堂から撮られた写真が大きく載っていました。この経験以降、まだ一度もこの現象を見たことがありません。空の高い場所に出現する環頂天アークより出現率は低いそうです。

北アルプス剱岳の山麓で見た環水平アーク。数ある気象現象の中でもひときわ美しい

 

 今回は写真も厳選し、11の美しい気象現象を紹介しました。このように山登りをしていると珍しい気象現象に出合えることがあります。移ろいやすい山の天気を察知することにもつながるので、ぜひ、景色を眺めるだけでなく、空を観察することも楽しんでください。みなさんもレアな現象を目にしたら、教えてくださいね。

執筆=小林 千穂

山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。

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