ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
プロセスより常に結果を求められるビジネスマン。趣味で楽しむ登山ではちょっと考え方を変えて、結果よりプロセスを大切にしてみませんか? それによって得られることも多いのです。
第1回で紹介したように、山登りの大きな魅力の1つとして「達成感」があります。困難を乗り越えて、目標としていた山に登れたときの感動は大きいもの。それによって自信がつき、さらなる高みへとモチベーションも大いにアップするでしょう。
山頂に立つのを目標とし、つらい登りや難しい状況に立ち向かう強い心は、山に登る上でとても大事です。でも、山頂に達する結果に重きを置きすぎると、ただ「登っただけ」で終わってしまうことになりかねません。
いろいろな登山者を見ていて感じるのは、まるでノルマをこなすかのようにピークハントしている人が案外多いということ。もしかしたら無意識のうちに仕事的な考えを、趣味に持ち込んでしまっているのかもしれません。
山に登る目的は人それぞれでよいのですが、山頂に立つことだけを目標にすると、結果は登れたか、登れなかったかのいずれかになってしまいます。もし、登れなかったときは失望感が心の多くを占めるでしょう。
1956年、日本人によるマナスル初登頂(参考:NHKアーカイブス「日本登山隊 マナスル初登頂」)を契機に戦後の登山ブームが起こりました。今でも登山に対しては「挑戦」「挑む」といった言葉がよく使われ、登れなかったときは「敗退した」などと表現されます。でも、趣味としての一般的な登山では、山頂に立つことは使命でもなければ、まして山を相手にした戦いの場でもありません。山は登山者にとって親しむもの。結果は二の次でよいのです。
そういう私も、以前は山頂に立つことにこだわっていた時期があります。数年前の2月下旬、山岳雑誌の取材で富士山に登ったときのこと。夏は登山経験のまったくない人も登りますが、厳冬期の富士山は日本でも屈指の難度となります。
トレーニングを重ねたものの、出発前は成功させなければならないというプレッシャーと、もしミスをしたら生きて帰れないという恐怖感にさいなまれました。そのときに山の仲間が掛けてくれた言葉は「楽しいと思えなくなったら下りればいい」というものでした。
とても気持ちが軽くなり、そのときに気がついたのです。山頂に立つという気持ちが強過ぎて、一番大切にすべき「楽しさ」を忘れていたと――。
この言葉をもらってからは、無理をして登ることはなくなりました。体力が追いつかなければ素直に下山する。天候の条件が悪ければ中止する。それが安全登山につながっています。
登れたかどうかという結果より、登っていることをいかに楽しむかが重要だと思うようになったのです。結果にかかわらず、山にいる過程がその人にとって充実していれば、登山は成功だといえると思います。
ただ、その山行を充実したものにするには、漠然と登っているだけではダメです。登る前にその山の地勢や植生の特性を知っておく、歴史を調べる、ふもとの集落の文化を知るなど、準備段階からいろいろ興味を持つことが肝要です。そうすれば、同じコースを歩くにしても、ただ「登る」という行為をしている人より「気づき」が多くなります。そして、感じたこと、考えたことを次の山行や普段の生活に生かすのです。
人生を変えるほどの刺激を登山によって得たいと思ったら、山頂に登れたかどうかにこだわるより、登ることをどれだけ楽しめたか、登ることによって何を得られたかを意識すべきです。
仕事では日常的に結果を求められて、大きなストレスの中に身を置いているビジネスマンも多いでしょう。休日に楽しむ登山では少し視点を変え、結果よりもプロセスを大切にする時間を楽しんでみませんか?
執筆=小林 千穂
山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。
【T】
人生を輝かせる山登りのススメ