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秋から冬にかけて、標高の高い山は雪に覆われて厳しさを増し、雪山登山をしない人は登山から足が遠のきがちになります。しかし、気候が穏やかな都市近郊の低山・里山は、秋冬が絶好のハイキングシーズンです。今回は身近な自然に親しむ里山ハイクの魅力をお伝えしましょう。
人の暮らしの近くにある里山。岩殿山(634m/山梨県)からの景色
のどかな「ふるさと」のイメージがある里山。里山とはその名の通り、人の暮らし(里)の近くにある自然(山)のことです。家を建てるための木材や、炊事などに使う炭やまきを山から切り出したり、日当たりのいい斜面には畑、川の近くに水田を造ったりと、日本人は古くから自然をうまく利用して暮らしてきました。
里山から必要な恵みを必要なだけもらいつつ、木々や野生動物、昆虫など、さまざまな生物と共生する伝統的な生活様式を長い時間をかけて育んできたのです。このように、人の暮らしと共にある半自然環境のことを里山といいます。
里山ハイクの最大の魅力は牧歌的な景観の中に身を置けること。農作物が実った棚田や畑、ススキの草原、クヌギやコナラの二次林など、人の営みが感じられる里山でのハイキングは、手軽で親しみやすく、気持ちをほっとさせてくれます。
しかし、かつては国内のどこでも見られた里山の景観は、今では貴重なものとなりました。高度経済成長期に主要なエネルギー源が木炭から石油に変わったり、外国産木材の輸入や利用が増えたりするなど、人々の生活の変化や高齢化とともに、古代から長く続いてきた里山はその機能を失って徐々に消えつつあります。里山は私たちの暮らしだけでなく、そこにすむオオタカやサシバ、カヤネズミ、ニホンアカガエル、メダカなどさまざまな生き物の生息域でもあります。里山がなくなると、それらの生物が暮らしの場を失うことにもつながるのです。
環境省では、里山とその周辺の環境を次世代に残していくべき自然環境の1つと位置付けて「生物多様性保全上重要な里地里山(略称:重要里地里山)」を2015年に選定・公開しています。このWebサイトでは、全国500カ所の重要里地里山の場所や選定理由が紹介されていますので、里山歩きをする際の参考になります。ただし、Webサイトの注意書きにある通り、紹介されている土地の立ち入りには事前承諾が必要な場合がありますので注意しましょう。
「重要里地里山」の1つ、粟ヶ岳(532m/静岡県)の眼下に広がる茶草場。茶畑に敷かれる草を採取するための茶草場が茶畑の周辺に点在し、半自然の環境を維持している
里山歩きする際には、景観を楽しむだけでなく、昔の人の営みの痕跡を探しながら歩くともっと楽しめます。例えば、注意深く探しながら山道を歩いていると、いろいろなところで見かけるのが炭焼き窯の跡です。炭焼きは、昭和の中ごろまで各地の山で行われ、かつての里山の暮らしを象徴するものの1つです。
炭焼き窯はドーム型に石が積み上げられ、斜面の谷側に出入り口が造られているのが特徴で、少し意識をして見れば、すぐにそれだと分かるでしょう。秋から冬にかけては林床の下草が枯れ、より見つけやすくなります。炭焼き窯の跡は天井部分が崩れて、側壁だけになっているものが多いですが、それでも直径数メートルの円形の石積みから、山と共にあった、先人の暮らしが想像できます。
雲取山(2017m/東京都・山梨県・埼玉県)の山頂へ至る三峯神社からの登山道にある炭窯跡。見慣れると、案内板がなくてもいろいろなところで見つけられる
そのほか、家の敷地などに設けられた石垣や段々畑の跡など、里山歩きをしているとかつての生活をうかがわせるものを見つけることができます。一昔前の時代にイメージを膨らませると、ピークハントとは違った楽しみを見つけられるでしょう。
秋冬でも日帰りで行ける手軽なハイキングとして、身近な自然に触れられる里山へ出掛けてみてはいかがでしょうか。
執筆=小林 千穂
山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。
【T】
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