ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
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御嶽山が噴火したのは2014年9月27日(土)、午前11時52分ごろ。大勢の登山者が秋山の1日を楽しんでいた好天の週末でした。しかも登山者の多くが山頂に登り着くお昼の時間帯であっただけに、死者58人、行方不明者5人、負傷者69人という未曽有の火山災害となりました。それから丸4年が経過した今年の秋、火山活動の静穏化と山頂シェルターの完成を受けて、噴火後に初めて入山規制が限定的に解除されました。その御嶽山山頂である剣ヶ峰に登ってきましたので、様子をレポートします。
噴火後、火口から1km以内が警戒区域となり、今なお区域内の立ち入りが規制されている御嶽山。今年、9月26日から10月8日まで13日間の限定的なものでしたが、黒沢口登山道のニノ池上分岐から山頂部への入山規制が緩和されました。
剣ヶ峰への入山規制緩和により、多くの人が訪れた御岳ロープウェイ
私が御嶽山を訪れたのは10月2日(火)、長野県木曽町にある御岳ロープウェイを利用して黒沢口登山道へ向かいました。噴火前は名古屋方面の利用者が多い王滝口登山道に次いで入山者数が多かったルートです。
黒沢口登山道を登っていく
ロープウェイの営業開始時間である午前8時30分に鹿ノ瀬駅(山麓駅)へ行くと平日にもかかわらず、すでに多くの人が来ていて、駅の入り口前に長い行列ができていました。噴火後、長らく山頂へ行けない状態が続いていたので、登山者が多いことは想像していましたが、こんなに多くの人が集まるとは、御嶽山への関心の高さに驚きました。
10分ほど待ってロープウェイに乗車、登山道の始点に当たる飯森高原駅(山頂駅)から歩き始めます。ほとんどの登山者がヘルメットを装着、またはすぐにかぶれるように携行していて、危機意識が浸透しているようでした。七合目の行場山荘から本格的な登りが始まると、登山道は渋滞していましたが、それにいら立つ人はおらず、お互いにあいさつを交わしたり、譲り合ったりして雰囲気よく登っていました。八合目、女人堂のあたりは鮮やかな紅葉に彩られ、登山者たちの気持ちを和ませていたようです。
登山途中で出会った男性は「麓の木曽町に住んでいて、御嶽山には何度も登り、とても親しみのある山。今日はこの山を見せるために小学生の息子を連れてきた」と話してくれました。また、埼玉から夫と2人で来たという女性は「噴火の直前に登っていて、タイミングが少しずれていれば、自分が犠牲になったかもしれない。そう思うととても人ごとには思えず、被害に遭った方への祈りをするために来た」と言っていました。また、献花するための花束をリュックサックに忍ばせた女性もいました。みながそれぞれに気持ちを秘めて山頂へ向かっているようでした。
八合目の女人堂前から見る御嶽山。ナナカマドの紅葉が美しい
噴火当時、黒沢口登山道の九合目で12〜7㎝ほどの火山灰が降り積もったと資料にありましたが、4年の間に風雨や雪で流されたり、道を整備してもらったりしたからか、ここまでの登山道にはほとんど灰はなく、噴火前と大きくは変わらない印象でした。しかし、九合目上部から二ノ池を見るとかつてはコバルトブルーの水をたたえていた池が火山灰に埋まり、一面灰色の沼地になっています。
ほとんどが灰に埋まった二ノ池。奥に見えるのは建て替え中の二ノ池本館
二ノ池との分岐から上が、今回規制緩和された部分です。その道を登り、御嶽山の最高所である剣ヶ峰へ上がります。かつてあった御嶽頂上山荘は撤去され、跡地にコンクリート製のシェルターと慰霊碑が造られていました。同じく山頂直下に建っていた御嶽剣ヶ峰山荘は解体が進み、ほとんどが取り壊されています。
剣ヶ峰へは手すりの付けられた石段を登っていくのですが、そこはまだ最低限の整備しかされていない様子で、噴石が当たったと思われる石段は欠け、手すりのパイプは折れ曲がるなど、噴火のすさまじさを生々しく伝えていました。登山者たちも一様に、その惨状に驚いていたようです。言葉少なく山頂に達した人々は静かに手を合わせた後、下山していきました。
御嶽頂上山荘跡地に造られたシェルター
噴火のすさまじさを感じながら剣ヶ峰山頂へ向かう
一方で、復興へ向けての光も見え始めています。以前、この連載第25回「泊まるだけから滞在型へ、山小屋での新しい過ごし方」でも紹介しましたが、飛騨頂上に当たる五の池小屋では、小屋内の薪ストーブで造られるケーキやピザが人気で、利用者が増えているとのことです。
また、長い間休業していた二の池新館は今年の夏、二の池ヒュッテと改名し、リニューアルオープンしました。新しくオーナーとなった高岡ゆりさんが担々麺や鍋焼きうどんなど温かい昼食メニューをそろえ、登山者が立ち寄りやすい山小屋をめざして奮闘していました。そのすぐ近くにある二の池本館も、噴石に強い素材で補強された新しい山小屋に立て替え中、来年のオープンをめざしています。山頂部の山小屋も徐々に営業を再開し、次シーズンはより多くの登山者が訪れることも期待されています。
注)9月26日から10月8日まで行われていた規制緩和はすでに終了し、現在は再び火口からおおむね1㎞以内が立ち入り禁止で剣ヶ峰へは登れません。法律により処罰対象になりますので許可のない立ち入りは絶対に控えましょう。また、山頂部の山小屋である行場山荘、女人堂、石室山荘、二の池ヒュッテ、五の池小屋、御岳ロープウェイは今シーズンの営業を終了しました。来年度の規制緩和については、木曽町では10月17日現在未定とし、日程などが決定した際には町の公式ページで公開するとしています。黒沢口登山道以外の状況につては、王滝村(長野県)、下呂市(岐阜県)などの各公式ページも参考にされるといいでしょう。御嶽山周辺域にはスキー場やリゾート施設が点在しています。冬山のアクティビティーを楽しみたいという方はそちらも検索されてみてください。
執筆=小林 千穂
山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。
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