ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
テレビの人気番組の影響か、近年、ジオがひそかなブームになっています。という私も地質に興味を持っていて、ここのところ、岩や石に目を向けた登山にハマッています。ジオは「Geo」と書き、「地球」や「土地」という意味の言葉。このGeoと連結する形で、後に続く語によって意味が変化します。例えば、「Geodetic(測地)」「Geoglyph(地上絵)」「Geology(地質学)」など。
また、地質の保護活動を基軸に地域の活性化に役立てようとする活動も国内外で盛んに行われるようになってきました。「Geopark(ジオパーク)」は、その最たる例です。ジオパークはその性質から登山ができる山を含む場所が多くあり、ユネスコのジオパーク認定をめざす地域も少なくありません。そこで今回は、ジオを意識することで出合った山を紹介しましょう。
私がジオに興味を持つきっかけとなったのは、2017年に歩いた南アルプスの縦走です(関連記事「第27回南アルプス大縦走(前編)」「第28回南アルプス大縦走(後編)」)。そのときに日本第6位の標高を持つ悪沢岳(3141m)の山頂近くで赤い色をした不思議な石を見たことが始まりでした。
専門家に聞いたところ、それは大昔に太平洋の奥深く、海底に積もったプランクトンなどの死骸が、長い年月をかけて海底深くで岩となったもの。さらに地殻の隆起によって標高約3000mという高さにまで押し上げられてきたのだといいます。海底から押し上げられた岩で大山脈ができたという事実から、すさまじい地球のエネルギーを知って感動しました。その経験以来、今まであまり気にすることがなかった山の岩や石にも目を向けるようになったのです。
先日、飛騨山脈のジオパーク認定をめざしている岐阜県の奥飛騨温泉郷へ行ってきました。飛騨山脈は大きなプレートがぶつかり合う地域にあり、地殻の隆起やマグマの活動が盛んです。
奥飛騨温泉郷の奥には笠ヶ岳(2898m)があるのですが、新穂高ロープウェイに乗って、西穂高口駅にある山頂展望台から望むと、その山が正面に望めます。昔の女性がかぶった市女笠(いちめがさ)に形が似た、美しい山です。山の斜面をよく見ると、水平に縞模様が入っているのが分かります。ジオ的な視点で見ると、それは巨大なカルデラ火山であった証拠なのだそうです。
約6500万年前(恐竜が滅びたとされる時代)、この辺りは激しい火山活動によって火山灰や溶岩が繰り返して積もり、それが後に隆起して山となり、さらに浸食されて、今、この縞模様を目にすることができます。こうした来歴を知ると、山の景色も少し違ったものに見えてきますね。
巨大カルデラの存在を感じられる笠ヶ岳。西穂高口駅の山頂展望台から
また、笠ヶ岳の南側にある乗鞍岳山麓に五色ヶ原という場所があります。そこには美しい滝が何本もかかるのですが、これらはかつて大規模に起こった乗鞍岳の噴火によってできたともいえる景色なのです。
五色ヶ原は乗鞍岳の山頂部にある複数の火口から流れ出した溶岩流が堆積して作られました。その溶岩の厚みは600~700mにも及ぶそうです。この分厚い溶岩の一部が地上に現れ、崖になったところを流れるのが、落差40mの布引滝です。
溶岩の下を通ってきた伏流水が滝の上部で湧き出し、幾筋もの糸となって流れ落ちる様子は、心も澄み渡る美しさです。この滝の背後にある岩は、溶岩が冷えて固まるときにできた柱状の構造をしています。柱状節理といって縦に細かい割れ目があり、垂直に崩れる性質を持っているため崖の形状になりやすくなります。
その崖の大部分を占める岩の断面は、積もった溶岩のごく一部ですが、それでも想像を絶する量の溶岩が流れてきたことが実感できます。そして、今は涼やかな景色も、かつてここに大量に流れた熱い溶岩によってできたことを思うと、とても不思議な気持ちになるでしょう。
※布引滝を見学するにはガイドツアーに参加する必要があります。詳しくは五色ヶ原のHPをご覧ください。
乗鞍岳噴火の規模が実感できる五色ヶ原の布引滝
現在、日本全国で「世界ジオパーク」または「日本ジオパーク」に認定されているところは43カ所あるのですが、その中で、アポイ岳、鳥海山、磐梯山、筑波山、立山、南アルプス、霧島、阿蘇山など、登山の対象となっている山も多く含まれます。それらの山に登るときは、せっかくですから「日本ジオパークネットワーク」のサイトや、ジオに関する本を見て予備知識を得たり、ガイドツアーに参加したりして、ジオ・大地の成り立ちにも目を向けてみてはいかがでしょう?予習して行けば、きっと今までとは違った山の楽しみが見つけられるはずです。もちろん、認定されている場所以外にもジオを感じられる場所はたくさんあります。
ちなみに、2018年の夏、私は北アルプスの成り立ちを知ることをテーマの1つとして、山脈最北部の秘境・栂海(つがみ)新道を歩いてきました。その様子が9月28日19時56分からNHK総合(中部7県のみ)で放送されます(中部ネイチャーシリーズ)。大山脈ができる地球の壮大なドラマを感じられると思いますので、機会がありましたら、ぜひ、予習の1つとしてご覧ください。
執筆=小林 千穂
山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。
【T】
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