人生を輝かせる山登りのススメ(第65回) 霊山から望むダイヤモンド富士

スポーツ

公開日:2020.10.23

 標高日本一の山、富士山の山頂と太陽が重なって見える風景をダイヤモンド富士といいます。秋分の日、山梨県にある七面山(1989m)に登り、そのダイヤモンド富士を見てきました。その日、その時、その場所に行き、しかも晴れていなければ見ることができない、特別なご来光です。今回は強いパワーをいただけそうな荘厳な朝の話題をお伝えします。

秋分の日(2020年9月22日)に七面山で見たダイヤモンド富士

 

ダイヤモンド富士とは?

 頂にダイヤモンドのように輝く太陽を乗せたダイヤモンド富士。日の出、または日の入りに、観察する場所から見て太陽の方向と富士山の山頂がちょうど重なるときにだけ見られる景観です。日の出・日の入りの傾きは地軸によって日ごとにずれていくため、ダイヤモンド富士といえる景観をカメラに収めるチャンスは、条件に合った観測場所で年に2回訪れます。

 ダイヤモンド富士が見られる条件は、まず、富士山がきれいに見える場所であること。そして、その場所が富士山の東側か西側に位置していて、太陽の動きの範囲に入っていることが必須です。さらにダイヤモンド富士となる日に、富士山や観察する場所に雲が出ておらず、晴れていなければなりません。このように、それぞれの場所からきれいに撮影できる条件がかなり限られる現象で、まさにダイヤのような価値があるともいえそうです。

七面山のダイヤモンド富士

 山梨県身延町(飛び地)に位置する七面山は法華経信仰の霊場で、多くの信者が登拝に訪れます。山上にある寺院・敬慎院の遥拝所からは、春分の日と秋分の日の年に2回ダイヤモンド富士のご来光が望めるチャンスがあります。七面山にはもちろん、一般の人も登ることができ、私も以前、修行体験をさせてもらいました。その時のことは本連載の第43回「信仰の山で山岳修行体験」にまとめています。

 以前から七面山のダイヤモンド富士を見たいと願っていたところ、偶然にも身延山久遠寺から取材のチャンスをいただき、再び登ることになりました。秋分の日の前日、9月21日に表参道の登山口を出発。前回と同じように約4時間かけてキツイ登山道を登りきり、山上の敬慎院に到着。この日は宿坊である敬慎院に泊まりました。

 翌朝は朝4時に起床。お勤めに参加した後、5時過ぎから遥拝所に立ち、ご来光を待ちます。運よくこの日はきれいに晴れて5時50分ごろにダイヤモンド富士を見ることができました。太陽は山頂の中心よりやや左から顔を出し、昇りきったときには、ほぼ山頂の真上に来ました。シルエットで浮かび上がった富士山から差し込む朝の光はとても爽やかで、私の心も温かく包まれました。それにしてもお彼岸の中日、真東から日が昇る秋分の日にダイヤモンド富士が見られるなんて、七面山はすごい所だと思いませんか?

前回登ったのは11月。この写真の通り、富士山よりだいぶ右(南)からの日の出でした

 

特別なご来光が本尊を照らす

 七面山の神秘はこれだけではありません。ダイヤモンド富士が見られる日は、その富士山から昇った日の光が遥拝所広場の西側に立つ随神門の間を通り、参道を通って敬慎院本堂に祭られる本尊(七面大明神像)を照らすのです。太陽、富士山、随神門、本堂、いずれかの位置が少しでもずれれば光は届かないので、神がかった現象だといえるでしょう。

 昔の人がどのようにこの場所を見つけ、どのように設計して本堂を建てたのかは想像も及びませんが、年に2回しか見られない神秘的な光景には、きっと誰もが感動するでしょう。七面山が霊山としてあがめられているのも納得ですね。この日にお参りをすれば、特別な御利益をいただけそうです。

 なお、今回の詳しい山行の様子は久遠寺の教報誌『みのぶ』令和2年11月号に掲載される予定なので、ぜひ機会があればご覧ください(問い合わせ:身延山久遠寺布教部 TEL:0556-62-1011)。

随神門を真っすぐに貫くダイヤモンド富士の光

 

ご来光が本殿を照らす。中に祭られている本尊の七面大明神像に光が届くという

 

いろいろな所で見られるダイヤモンド富士

 山上からのダイヤモンド富士は格別ですが、山に登らなくても富士山が望める場所なら関東周辺のいろいろな場所で見ることができます。秋から春にかけては空気が澄み、各地でダイヤモンド富士を見るチャンスが多く訪れます。

 富士山の東側スポットなら、国土交通省関東地方整備局のWebサイト「関東の富士見百景」にあるダイヤモンド富士の紹介ページを参考に出掛けましょう。見られる場所や日付などがまとまっていて、行き先を検討する助けになります。

 富士山の西側スポットなら、湖面の映り込みで上下2つのダイヤモンド富士を同時に撮影することができることで有名な静岡県の田貫湖(4月20日、8月20日ごろ・日の出)などもオススメ。今回の七面山は、公益社団法人やまなし観光推進機構のWebサイト「富士の国やまなし」でダイヤモンド富士の観測ポイントとして紹介されています。この中には、竜ヶ岳(元日前後・日の出)のような、アイゼンなど雪山の登山装備が必要な場所もありますからご注意ください。みなさんも感染予防や防寒対策をしたうえで出掛けてみてはいかがでしょうか?

執筆=小林 千穂

山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。

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