ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
みなさんは日ごろ、どのように山を楽しんでいますか? 休暇を利用して夏に日本アルプスなど大きな山に登り、他のシーズンは家の近くの山へ出掛けているという人が多いのではないでしょうか。大型連休が増えたことによって、遠く離れた地方の名山へも行きやすくなりました。
普段の生活圏から離れた場所へ行くことは、大きな刺激があります。そのうち、自分の山、と呼べるくらい通える山を見つけるようになる頃には、山に登って自分の心と体のバランスを取る人も少なくないようです。
私は多くの山を知りたいと思っているので、まだ登っていない山へなるべく出掛けるようにしています。つまり「広く登る」ことをしているのです。でも、その一方で、1つの山に対してとことん「深く登る」ということもしようと心がけています。つまり、好きな山に何度も通うのです。
理由は、その山と深い仲になりたいから……。そう言ったら、笑われるでしょうか? でも、恋愛でもビジネスでも同じだと思うのです。良い関係を築くには何度も通って、いろいろなことを話して、相手のことをよく知らなければならないでしょう。
私は山に登ると、もっとその山のことを知りたくなります。夏に見たこの景色は、秋はどんなだろう。冬はどのくらい厳しいだろうか? と想像を巡らせます。山は四季によって、まったく違う表情を見せるもの。だから、その山のことを知りたいと思ったら、私は少なくとも四季、通ってみたくなるのです。
すべての山に何度も登ることはできないのですが、気になった山、行きやすい山が見つかったら、何度か登ってみるのをおすすめします。同じ道を歩いてみると、こんなおもしろい形をした木があったんだとか、夏は草に隠れていて気が付かなかった石碑に秋には気づくなど、初めて登ったときには得られなかった小さな発見があるでしょう。
さらに通ううちに、今日も変わらないその山の様子を見られること、今年も山からの同じ景色を見られることに心が落ち着いたりします。そうなれば、その山はあなたにとって特別な山、「ホーム・マウンテン」なのです。
私にとってのホーム・マウンテンの代表は、飛騨山脈の穂高岳と霧ヶ峰の車山です。車山はレンゲツツジの咲く春から、ニッコウキスゲの夏、ススキ原がきれいな秋、広い雪原となる冬と、年に何度も通っています。
穂高岳は日本第三位の標高があり、険しい岩山なので冬は簡単に近づけませんが、それでも登山シーズン中に何度も登っています。以前、山小屋で働いていたこともあり、その山へ行けば「おかえり」と迎えてくれる、まさにホームです。
同じ山に何度も、そして何年も登っていると、自分の思わぬ変化に気づくことがあります。初めて来たときは登山のことを知らなくて、こんな失敗をしたなあと笑ったり、去年の今ごろ、ここを歩いたときは、大きなプロジェクトを前に燃えていたなあと思い出したり。同じ道を歩くことで記憶がよみがえり、自分の生涯を遡ることができるのです。当時の自分と比べて、今はどうだろうかと、自然に振り返っているでしょう。
また、もっと小さな気づきもあります。いつもと同じペースで歩いているつもりなのに、前回より早かったとか、同じ景色を見ても、いつもよりなにか輝いて見えるとか。そんなときはきっと気持ちが軽いとき。普段より鳥の声がよく聞こえたり、風を心地よく感じたりもします。
逆に足運びが雑で、バランスを崩しやすいのは、集中力が欠けている証拠。今日は心が浮ついているなと気づかされます。
黙々と歩くのは悩みごとがあるとき。足元に咲く花にも気づかなかったり、いつもは立ち止まる展望ポイントを通過してしまうことも。それに気づいたときは、いつもより少し遠回りして歩く距離を伸ばし、頭をスッキリさせたりします。
ホーム・マウンテンはなにも大きな山でなくていいし、有名な山でなくていいのです。むしろ行きやすくて、登りやすい山のほうがいいでしょう。ホーム・マウンテンをつくるには、コースを変え、季節を変えて、その山にとにかく何度も通うことです。あなたもなじみの山に何度も登り、自分を見つめ直す時間をつくることで、普段の生活にも変化が訪れるかもしれないですよ。
執筆=小林 千穂
山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。
【T】
人生を輝かせる山登りのススメ