トップインタビュー(第42回) ロハスを徹底してブランディングに取り組む

経営全般

公開日:2018.10.22

スーパーホテル副社長 山本晃嘉 氏

 国内外でビジネスホテル「スーパーホテル」を100棟超展開する株式会社スーパーホテル。2018年、同社は1989年の創業以来初となるブランディングに着手し、ロゴデザイン、コンセプトからホテル館内の内装、WEBサイトに至るまで全面的な刷新を進めている。なぜ今、ブランディングなのか。取締役副社長・山本晃嘉氏に話を伺った。

――「スーパーホテル」はトレードマークともいえる黄色の看板で特にビジネスマンの間で高い知名度を誇っていて、業績も決して悪くないと思います。そんな中で、2018年を「リ・スタート」の年と位置付け、ブランディングを進めています。その理由を教えていただけますか。

 最終的な決め手になったのはお客さまの声なのですが、順を追ってお話ししましょう。私どもは以前、サンコーリンクスの社名でビジネスホテル「ホテルリンクス」を経営していました。そんなときにバブルが崩壊し、デフレの世の中になることが見込まれました。それにいち早く対応し、当時1泊8000円から1万円ほどの宿泊料だったビジネスホテルに5000円以下で泊まれるようにするというコンセプトで、1996年に始めたのがスーパーホテルです。

 コストを抑えないと1泊5000円以下にはできません。そこで大きな力になったのがIT化です。ホテルで人手がかかるのがチェックイン、チェックアウトのときです。そこに独自のシステムを導入し、人件費を抑えて、1泊5000円以下にすることができました。

1泊5000円以下を実現し、黄色い看板でアピールしたスーパーホテル

 しかし、安かろう悪かろうのホテルではお客さまの支持は得られません。我々はコンセプトとして「安全・清潔・ぐっすり眠れる」を掲げ、この3つを徹底的に追求することにしました。

――安く泊まれて、清潔な空間でゆっくり休める。これでファンを増やされていったわけですね?

 はい。それにその後、プラスしたコンセプトが「ロハス」です。ロハスは2000年代半ばごろから日本でも非常に盛り上がりました。こうした環境を大切にする方針を、当社では2001年から掲げていました。

 ハード・ソフトの両面で省エネ設計を徹底的にやり、CO2の排出量を削減するようにしました。また、宿泊時に発生したCO2排出量をカーボン・オフセットする「エコ泊」や、翌日の清掃を不要にしてくださったお客さまにオリジナルミネラルウォーターを差し上げる「エコひいき」など、お客さま参画型による環境保全活動も始めました。

 2009年には、ロハスをコンセプトにした「スーパーホテルLohas」の1号店をJR奈良駅にオープンしています。2011年には環境大臣が創設したエコ・ファースト制度の「エコ・ファースト企業」にホテル業界で唯一認定されるなど、私どもとしてはロハスの活動に力を入れてきました。しかし、お客さまの声を実際に聞くと、そのことがあまり伝わっていなかったのです。

LOHASをコンセプトにアピール

――伝わらなかった原因はどのあたりにあったとお考えですか?

 理由の1つに、ロハスという言葉自体に難しさがあったと思います。ロハスと言われても、少し漠然としていて、ハッキリとイメージしにくい。そこで今回のブランディングではもっと明確にお客さまに伝わるコンセプトが必要だと考えました。そこで「ナチュラル」「オーガニック」「スマート」というイメージしやすい3つのテーマを設定しました。

 ブランディングに向けてお客さまのグループインタビューも実施しました。その中で「ロハスと黄色の看板が一致しない」という意見がかなりありました。イメージとコンセプトに乖離(かいり)があったわけです。

 将来を見据えた経営戦略上の狙いもあります。スーパーホテルのお客さまは40、50歳代がメインで、20代、30代の方が比較的少ないんです。将来のことを考えて、スーパーホテルに泊まったことがない若い方にもっと利用していただくために新たなイメージを打ち出しました。

 これから新設するホテルは、ロゴから内装、アメニティーに至るまですべて新しいブランディングに基づくものになります。また既存のホテルも順次リニューアルしていきます。去年すでに7棟のリニューアルを終え、今年も12棟のリニューアルを予定しています。

ブランディングの結果、新しいイメージを打ち出したスーパーホテル

――現在、外国人観光客が急増している影響などでホテルの建設ラッシュが全国的に続いています。ホテル業界の現況と今後をどのように見られていますか?

 極端に言うと、空き地があればホテルを建てているような印象ですね。インバウンド需要はまだ増えているものの、すでに一部では供給過剰になり、ホテル業界全体では稼働率も少し落ちてきています。2020年の東京オリンピック・パラリンピック以降は、コンセプトのしっかりしたホテルしか残っていかないのではないでしょうか。

 日本人のビジネスホテルの使い方もこれから変わってくると思っており、近年スーパーホテルで力を入れているのは地方です。既存のホテルはほとんど大都市にありますが、当社の新規開業の8割は地方です。最近、女性同士やシルバーの方同士のいわゆる交流客が増えていますが、そうした方々が地方に行くときにも気軽に使っていただけるビジネスホテルをめざしています。

 ただし、スーパーホテルの第一のお客さまはビジネスパーソンです。そこをぶらすつもりはありません。工業団地などが近くにあり出張需要が見込めて、さらに温泉などがあって観光需要もある、両方合わせればホテル経営が成り立つ、そんな立地に出店しています。日本全国には、こういう立地が結構あるんです。

 例えば、2015年12月、島根県の江津市に出店しました。江津は山陰地方で一番人口が少ない都市で、東京からの移動時間距離が全国で一番長い都市としても知られています。私どもも最初はちゅうちょしました。

 しかし、工業団地が近くにありビジネス需要はある、しかも市だけでなく住民の方々がすごい連帯感を持って街の活性化のために協力していただける。地元企業がホテル建設のために寄付を募ったら2億円集まったというくらいですから。実際、開業したら稼働率は90%を超えています。スーパーホテルができたことで新たにお店ができたり、周りの飲食店がにぎわったりしていると聞いています。地方創生のお役に少しでも立てられているとしたらうれしいですね。

――これからブランディングを徹底しながら、事業を展開されることになりますが、今後ポイントになることは何でしょう?

スーパーホテルはブランディングによりコンセプトを深化させ、競争が激しくなるホテル業界で勝ち抜く

 重要なのは、ホテルはサービス業なのでサービスの質を保つことだと考えています。スーパーホテルでは、約700人の現地採用のアルバイトが働いています。ですからアルバイト教育がとにかく大切です。弊社では費用はかかりますが、入社半年未満の全国のアルバイトに東京か大阪に来て研修を受けてもらっています。接客マナーなどのスキルだけでなく、当社の経営マインドについても学んでいただいています。

 もう1つ重要なポイントは、ITのさらなる活用です。当社はIT活用においてホテル業界では先進的に取り組んできたと自負していますが、今後はAIなども利用して、お客さまのチェックインや滞在をよりスマートにしていく。例えば、今度銀座のホテルではタブレットとQRコードを使用したスマートチェックインシステムを導入する予定です。

 ITの活用は顧客満足度の向上だけでなく、社員満足度を高めるために重要です。単純作業はできるだけシステムで対応できるようにして、判断が必要だったり、知恵を出さなくてはならなかったりする業務を人が担当するようにしたいと思っています。ITの活用によってお客さまも社員もより幸せになれる会社をめざしたいと思っています。

※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です

執筆=山本 晃嘉(やまもと・あきよし)

1975年大阪府生まれ。2015年京都工芸繊維大学院博士課程修了。1996年フジ住宅株式会社へ入社。1998年株式会社スーパー・コートに入社し、賃貸事業部、介護事業部、有料老人ホームの立ち上げ・運営を経て、2012年に社長に就任。2017年に株式会社スーパーホテル副社長に就任し、現在に至る。

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