トップインタビュー(第7回) “まごころ”重視の経営が利益を生む

経営全般 増収施策

公開日:2015.10.01

竹田本社代表取締役・竹田製菓会長 竹田和平氏

 日本の高度経済成長期から焼き菓子「タマゴボーロ」でシェアトップの座を保ち続ける竹田製菓。同社会長で日本一の個人投資家としても知られる竹田和平氏は、まごころ重視の経営の啓発活動にも取り組む。自社のテーマパークで改めて実践したところ、1年半で売上高が2倍になったと効果を語る。

──竹田さんは「タマゴボーロ」や「麦ふぁ~」で有名な竹田製菓の会長であると同時に、日本屈指の個人投資家。さらにご自身の経験や財産を、社会に還元する社会起業家としても活躍していらっしゃいますね。 

竹田:大きな声で「ありがとう」を年に100万回言うことを推奨する「ありがとう講」や、「徳」の概念を伝える「智徳問答講」などを開いてきました。

 70代になった10年ほど前、インターネットが普及して「面白い時代になったな」と思ってね。今までは手書きの手紙を封筒に入れて切手貼って送っていたのに、電子メールならいっぺんに何万通もタダ同然で出せて、バーチャルに話し合いもできる。時間や空間の制約がないから、「これは教育にいいなあ」と思って、メールマガジンやメーリングリストを積極的に活用するようになりました。

 昨年には「智徳志士の会」という会を立ち上げ、また新しい運動を始めました。経営者を中心に多くの会員を集め、勉強会を開きながら活動を進めたいと思っています。

──どんな活動を行うのですか。

竹田:今ね、日本の国家財政は危機的状況でしょう。破綻したりインフレになってカネに値打ちがなくなったりしたら、経済の仕組みは壊れちゃう。本当に恐ろしいことになりますよ。これはもう国難だと思っています。

 でもね、いくら財政が危機的状況だといっても、そう簡単に支出は削れない。政治家は選挙の票を失うのが怖くて福祉カットなんてできないですから。結局、収入を増やすしかないんですよ。

 日本の税収は1990年をピークに大きく落ち込んだまま。なんとかもっと稼げないのか。今、中小企業の70%は赤字経営で税金を納めとらんって言うでしょ。残りの30%も多くはやっとこ黒字にしている程度。どうも“気”が出ていないですよね。経営者も投資家も、知恵を出せばもっと稼げるのに「眠れる宝」になってしまっている。

 「(財政)破綻か納税か」と真剣に突き付けられたら納税しかない。5年で所得を5倍にして5倍の税金を納めよう。破綻から日本を守ろう。始めるのはそういう運動です。誰も立ち上がってこんで私が立ち上がろうと。「世の中のためになりたい」という心を持った知恵と徳のある「智徳旦那」をつくりたいと思っています。

──所得を5年で5倍にするというのは簡単ではありません。経営者は何をすれば良いですか。 

竹田:私はね、過去に5年で5倍の利益を上げた経験があるんですよ。竹田製菓の社長になったのは57年。人件費が暴騰している時代だったので、事業を続けるには生産を合理化するしかなく、機械化を進めました。結果、大量生産が可能になり、タマゴボーロはシェアトップを獲得します。利益はうなぎ登りになりました。

 時代によって環境は異なりますから、「あのときにこうやった」というのは参考にならないかもしれません。けれど、いつの時代も変わらない真理がある。それは「まごころ」を大事にした経営をするということです。

 人間の心にはまごころと、その反対のエゴの心があります。まごころとは他人の痛みを自分の痛みと感じ、他人の喜びを自分の喜びに感じる心。エゴの心は自分のことばかり考えている心です。どうも最近、まごころパワーが忘れられとると思うんですよ。まず心をつくらにゃいかん。

 私はまごころを縮めて「まろ」って言っています。経営者にはまろが輪になってつながる「まろわ経営」を実践し、業績を伸ばしてほしい。

お客様が喜んでくれれば、会社の業績は伸びる

──竹田製菓が成長してきたのも、まろわ経営の成果ですか。

竹田:そうですね。ええ。事業を始めて60年以上、常にお客様を大事にしてきました。そうするとお客様は喜んでくれて「あの会社は良い会社だ」と思ってくれます。会社の業績は伸びますがね。

 愛知県犬山市の工場隣で営業するテーマパーク「お菓子の城」でも、2013年3月からまろわ経営を改めて徹底しています。入園者数が減ってやや低迷が続いていたお菓子の城ですが、1年半後には売り上げが2倍に達しました。

 従業員に伝えたのは、お客様から「親切ですね」「きれいですね」「楽しいね」「また来ます」という4つの言葉を言ってもらいなさいということ。そう言ってもらえればうれしいし、言ってもらえんと悔しい。「美」と「醜」の感情をはっきり分けることで、お客様に喜んでいただける言動が取れるようになるのです。

 チーフ10人には、フェイスブック上で毎日、気付いたこと、良かったことなどを報告してもらいます。言葉にはその人の心が表れますから、私は2週間に1回ぐらい見て、ちょっと注意したり褒めたり……。言葉を直せば心が変わって、ちゃんと目標に向かうようになります。これが続けば売り上げは5倍になりますよ。

 お客様にどういう気持ちで接するか、精神的なことばかりをくどいほど言い聞かせてきましたが、最近は売り上げについても教えています。これからは経費のこと、利益のことを教えていくつもりです。店を経営できるようになったら応用が利くから、どんな仕事もできる人材に育ちます。

──竹田さんが心に重きを置く経営に努めるようになったのは、どんなきっかけからですか。

竹田:振り返って考えると、祖母の教育も影響しているんでしょうな。仏教信者でね。うまくいけば徳がある、うまくいかんと徳がないと、なんでも非常にシンプルに徳で判断する。徳は「得」に通じている。子ども心にも徳っていいものだなと(笑)。

 「まろUP!」と言い出したのは60歳になるちょっと前。従業員の顔を見ていて、みんな顔が暗いなと思ったからです。

 中小企業に入ってくるのは、勉強が苦手で試験がうまくいかなかった子が多いでしょう。緑に囲まれた理想的な工場をつくったりもしましたが、環境をどんなに整えてもやっぱり表情は暗い。結局は心の問題なのです。なんとか従業員の顔を明るくしよう、元気にしようと中小企業の社長さんたちと共同で講演会を開いて美醜を教えたりしてきました。商売は気です。生きた経済はそろばんだけでは動かん。「情」がないとね。情の部分が良くなって従業員が楽しく働けばお客様も増えて利益も増えていきますよ。

──竹田さんは80歳を超えて今なお新しい運動を始めるなどパワーに溢れています。そのエネルギーはどこから湧き出るのですか。

竹田:実は昨年初めぐらいにちょっと体調を崩しましてね。でも何にでも良いことを見つけるのが大事だと思って「良い形で体重が減った」「まろUPの途上だ」と考えるようにしていたのです。

 そうしたら「まごころ頂点」「思考頂点」「感動頂点」という言葉が浮かんできた。視界が一気に開けて頂点に達した気分になったのです。苦しい思いをしたけれど、脱皮した昆虫のように殻を抜け出したのでしょうな。「不可能はない」「何でもできる」と感じるようになりました。この世は自分の「思い」次第。状況はどうにでも変わるのです。

日経トップリーダー 構成/小林佳代

執筆=竹田 和平(たけだ・わへい)

1933年愛知県生まれ。戦後、元菓子職人の父親と菓子製造業を開業。「タマゴボーロ」の成功により52年竹田製菓を設立。57年社長に就任、85年から会長。和製ウォーレン・バフェットともいわれ、日本一の個人投資家として一時は100社を超える上場企業の大株主に名を連ねていた。インターネットを活用したリーダー育成などにも取り組んでいる。

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