トップインタビュー(第41回) 世界で先端技術開発を支える環境試験器のエスペック

経営全般

公開日:2018.08.22

エスペック代表取締役社長 石田雅昭 氏

 1947年の創業で、大阪市北区に本社を置くエスペック。温度、湿度、圧力などを変化させ、さまざまな環境下で製品や部品などの耐久性をテストする環境試験器の世界的トップメーカーである。あらゆる業界で競争が激化する中、なぜ同社は先頭を走り続けられているのか。代表取締役社長・石田雅昭氏に話を伺った。

――御社は国内シェア60%以上、世界シェア30%以上を持つ環境試験器のトップ企業ですが、最近の業績はいかがですか?

 おかげさまで好調です。前期の2017年度は過去最高売り上げ・最高営業利益を記録しました。アフターサービス、受託試験といった事業も順調に推移していますが、弊社のコアビジネスである環境試験器をはじめとした装置の製造・販売が好調です。

 主な要因としては電動化・自動化を進める自動車の研究開発で需要が多かったことと、海外の大手スマートフォンメーカーが新製品を出すのに伴い製品・部品の試験が必要になったことの2つが挙げられます。また、半導体などその他のエレクトロニクスの分野でも需要が高まっています。

 まず、最近は国内の製造業の設備投資意欲が活発になっているように思います。弊社は海外の売上高比率が40%を超えるようになっていますが、北米、中国、欧州、東南アジアなど海外のニーズも旺盛です。

――そのように業績好調な御社の強みはどういったところにあるのでしょう?

 まず、当社の環境試験機器が、各国のニーズに合わせて精密な制御ができることが挙げられると思います。温度、湿度、圧力、振動といった要素を精密に制御し、お客さまが求められている環境をバラツキなく、正確に再現できることが弊社の試験器のアドバンテージになっています。

 また、日本は元々湿度が高いこともあって、湿度の試験についてのノウハウはかなり持っているつもりです。今、環境試験器の世界では弊社とヨーロッパの会社の2社が主なグローパルプレイヤーになっているのですが、ヨーロッパは乾燥した地域が多く、湿度の試験に関しては当社の試験器にアドバンテージがあると思います。この点は、特に湿度が高い東南アジアなどの国を想定した試験で有利に働いています。

 あとは、カスタマイズ対応の細かさですね。製品は、国によって求められる試験規格が違います。試験器も、それにしっかり対応できるようにしなければなりません。さらに同じ国でも企業によって必要とする仕様が異なります。こういうシグナルタワーが要るとか、電線を入れるための穴を扉に開けてほしいとか、手を入れられるようにしたいとか、お客さまからはさまざまな要望があります。そうしたご要望にできるだけ細かく対応することが大切だと思っています。

 最初からオーダーメードで注文を受けるケースはもちろんのこと、カタログに載っている標準品を出荷する場合でも7割近くは何らかのカスタマイズを施しています。

――そうしたビジネスを支えるバックボーンとしてはどのような理念をお持ちでしょうか?

 常にプログレッシブ、進取的であることを大切にしています。次に必要とされるニーズは何かをいち早く考える。新たな技術をいち早く開発する。新たな市場をいち早く開拓する。さまざまな領域において先を読み、進取的に先んじるということです。

 弊社は創業当初、フラスコを留めるクランプなど理化学機器の製造を主に行っていました。その後、カラーテレビや電気冷蔵庫などいろいろな分野で技術革新が起こりつつあるのを見て、この先、環境試験器の需要が増えると判断、昭和30年代後半に環境試験器の製造に事業転換したという経緯があります。

 昭和40年代後半に成長のタイミングが来たと捉え、京都の福知山市に当時としては破格なほど広い土地を買って工場を建てましたが、これがその後の日本ものづくりの発展に伴う環境試験器の旺盛な需要に応える形になりました。

 海外展開も先手を打ってきたと思います。日本の企業が本格的に中国に出て行き始めたのは2000年前後のことでしたが、中国の発展を見越して弊社は1985年に上海に合弁会社をつくっています。これが結局、その後に進出してきた日系企業のニーズを待ち構えるような形になりました。韓国、台湾はその前から代理店を設置しています。

 このように歴代の経営者が将来のビジョンを描き、プログレッシブに事業活動を展開してきたのが弊社の歴史で、2011年に社長に就任した私もそれに倣っています。

――トップや経営陣がビジョンを持っていても、一般社員がそれを理解していないと会社を動かすエンジンにはなりにくいと思います。その点はどのようにお考えですか?

長期ビジョンの策定とその浸透が大切と話す石田社長

 それは重要なポイントです。一般社員は自分たちの会社がどういう方向に向いているのかが分かると安心して仕事に取り組めますし、自分の能力を向上させる方向性や、将来像も描きやすくなります。

 弊社では2025年までのビジョンを立てようと、役員が集まり2013年から2年ほどかけてさまざまなアングルから検討しました。そして2015年の夏、「ESPEC Vision 2025」としてまとめ、大阪、東京、福知山の3カ所で全社員に発表しました。

 ただ、これは各会場に300人ほどの社員を集めて発表しただけなので、ビジョンの浸透まではいきません。翌2016年には役員が全員参加して主要事業所5拠点を回り合計31回社員とミーティングを実施しました。ビジョンをどう理解したか、ビジョンで不明な点はどこかといったことをグループディスカッションしながら全社員と確認しました。2017年は創業70周年だったこともあり、創業イベントとして2015年時と同様に大阪、東京、福知山に全社員を集めて発表会を行いました。

 その他にも、私も参加して管理職や若手選抜メンバーを対象にした1泊2日の研修を年に7回ほど行っていますし、新入社員には半日くらい時間を取って企業理念や社の考え方を説明しています。時間はかかりますが、こうした取り組みを通してトップ、経営陣が考えていることを社員とあるレベルで共有できるようになっていると思っています。

――先を読みながらプログレッシブに活動するというお話でしたが、この先の事業環境をどのように見られていますか?

 基本的に環境試験器の需要はますます拡大すると見ています。自動車分野はまだまだイノベーションが続きますし、IoTでもいろんなことが起こるでしょう。通信、医療、環境といった分野でもさまざまな先端技術が開発されていくはずです。そのすべてに弊社は関係します。

 技術のイノベーションが起こっても、その技術を商品化、実用化するためには耐久性、安全性を担保しなければなりません。先端技術を中心としたイノベーションが起これば環境試験器が要るという構図は変わりません。

 このように基本的には追い風が続くと見ていますが、外部環境がどのように変わるかは分かりません。一時的に厳しい状況が訪れる可能性もあります。外部環境がいいからといってそれに甘えていると、会社が緩み、崩れていくようなことになりかねません。

 やはり外部環境に頼ることなく、自分たちの力でプログレッシブに進んでいくことが大切。そうした会社であるために、社員には自分の能力を自分で育て、自らの価値を自らの力で高め、成長していってほしいと思います。

エスペックは環境試験機器分野において世界市場で揺るぎない地位を築いている

執筆=石田 雅昭 (いしだ・まさあき)

1954年、兵庫県生まれ。77年に姫路工業大学電子工学科(現兵庫県立大学)を卒業し、77年4月に株式会社田葉井製作所(現エスペック株式会社)へ入社。2008年に取締役、2009年に常務取締役、2011年に代表取締役社長へ就任、以来現職。中国の独資会社設立による中国事業の再編や米国ベンチャー企業のM&Aなど事業のグローバル化を強力に推進。車載用二次電池の安全認証センターを開設し「試験」+「認証」の新規事業を立ち上げる。現在、中期経営計画(2018年~2021年)を推進中。

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