オフィスあるある4コマ(第63回)
声の大きな社員
ランサムウエアの脅威は高止まりしている。情報セキュリティのリスクを周知するために独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が毎年発表している「情報セキュリティ10大脅威」で、2016年から2026年まで11年連続でランクインし、今年(2026年)も組織編の1位の座を占めている。ランサムウエアが狙っているのは大企業だけではない。むしろ最近では中小企業が狙われる傾向も指摘される。どう対策を講じていけばよいのだろうか。
中小企業がランサムウエア攻撃で狙われる背景には、現在の企業間取引の形態が大きく影響している。製造業ではサプライチェーンが発達し、中小企業もその取引連携に組み込まれている。非製造業であっても大手企業とインターネットでデータをやり取りするケースは多い。攻撃者はそこを狙ってくる。
ランサムウエア攻撃の手口はさまざまだ。重要な情報を盗み出して公開すると脅す「二重脅迫」、サーバーのデータを暗号化してシステムを利用不能にし事業継続を困難にする手口、さらにPCを踏み台にして特定のサイトを繰り返し攻撃してシステムを停止させるDDoS(分散型サービス拒否)攻撃による風評被害などが代表例として挙げられる。
攻撃者の目的は金銭を引き出すためだ。こうした攻撃を止める代わりに身代金を要求してくる。相手が大企業であれば要求できる金額も大きいが、セキュリティレベルが高い。そのためよりセキュリティが脆弱な中小企業が狙われる。中小企業自体だけでなく、データのやり取りのチャネルを通して大企業にランサムウエアを感染させるケースもある。
実際に警察庁の発表によると、令和7年のランサムウエアの被害件数は226件あり、そのうちの約6割に当たる143件が中小企業だったという(※1)。大企業は64件であり、中小企業の被害件数はその約2.2倍に上る。被害を受けた業種は多岐にわたり、被害を受けた企業の5割以上で復旧に要した総額が1000万円以上に上っている(※1)。中小企業にとって経営に与える影響は決して小さくない。
※1 出典:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
ランサムウエア攻撃の主な手口としては、以下の4つが挙げられる。
・インターネットに接続されている機器の脆弱性の悪用
・盗み出したIDやパスワードによる不正なアクセス
・偽サイトやメールなどからのランサムウエアのダウンロード
・闇取引が行われているダークウェブでの認証情報などの取得
中小企業としてどうランサムウエア攻撃に備えるべきなのだろうか。大きく3つのステップが考えられる。1つ目は情報セキュリティの基本を守るステップだ。それがあって次のステップに進める。2つ目は誰も信用しない「ゼロトラスト」の導入。そして3つ目はサイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)の策定である。
まずは情報セキュリティの基本を確実に押さえることが、ランサムウエア対策の土台となる。以下の6カ条を実践したい。
・基本ソフト(OS)やソフトウエアは常に最新の状態にする
・ウイルス対策ソフトを導入する
・パスワードを強化する
・共有設定を見直す
・バックアップを取る
・脅威や攻撃の手口を知る
「ゼロトラスト」とは、社内外を問わずすべてのアクセスを信頼しないことを前提にセキュリティを設計する考え方だ。従来の「社内ネットワークは安全」という前提を捨て、あらゆる通信を検証・制御する。具体的な考えと取り組みとしては以下が挙げられる。
・守るべき情報は社内と外部の両方にあると認識する
・脅威も社内と外部の両方に存在すると認識する
・社内かVPN経由など、限定された場所からのみ利用させる
・ID・場所・デバイスに応じたアクセス制限を設ける
・IDとパスワード以外に、パスキーなどを組み合わせた多要素認証を活用する
サイバー攻撃を想定したBCPを事前に策定しておくことで、被害発覚後の初動対応を迅速に行える。以下の項目を整備しておきたい。
・社内外の緊急時連絡網の整備
・初動対応の相談窓口の設定
・責任範囲・役割の明確化
・調査・復旧作業・広報対応の事前の取り決め
・攻撃を想定した復旧訓練の定期的な実施
こうした準備を整え、万が一の際はBCPに基づいて調査・復旧に取り組む必要がある。感染発覚時にはまず感染端末をネットワークから隔離し、被害拡大を防ぐ。この段階で電源をすぐに落とさない点も重要だ。電源を落とすとメモリー上のログなど侵入の痕跡が失われ、原因の追跡が困難になる恐れがある。
被害が発覚した場合は、早期に警察や関係機関へ連絡することも必要になるが、外部の専門家に対応を相談しながら進めるのが望ましい。そのためにも、いざという時に相談できる窓口をあらかじめ確認しておくことをおすすめする。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです。
執筆=高橋 秀典
【TP】
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